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転生した大魔王、地球に出現したダンジョンを作ったのが前世の自分であることを思い出す。 〜魔王時代の知識と経験で瞬く間に世界最強になって無双します!〜  作者: 八又ナガト
第二章 大魔王、因縁の宿敵たちを相手に無双する

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54 蓮夜VS鷹見

 瀬名の声が響き渡った瞬間、俺と鷹見の間に緊張が走る。

 互いに身構え、一瞬の静寂が訪れた。


「「【身体強化ブーステッド】」」


 俺は低く呟き、全身に魔力を巡らせる。

 同時に、鷹見も同じように身体強化を発動したようだ。

 奴の周りにもかすかに魔力の波動が見える。


 俺たちは互いに向かい合い、次の動きを探る。

 その緊張感に満ちた静寂を破ったのは鷹見だった。


 突如、奴の姿が消える。

 いや、正確には超高速で動き出したのだ。

 鋭い風切り音とともに、鷹見の姿が俺の目の前に現れる。


「もらった!」


 鷹見の声とともに、穿空せんくうが俺めがけて突き出される。

 その速度は目を見張るものがあった。

 だが――


「甘いな」


 俺は僅かに身を捻り、槍先をかわす。

 風を切る音とともに、槍が俺の頬をかすめていく。


「なっ!?」


 鷹見は驚愕の声を上げるも、すぐに意識を切り替えたようだ。

 流れるような動きで、次の攻撃を仕掛けてくる。


「これでどうだ!」


 突き、薙ぎ払い、柄による打突。

 その槍捌きは実に巧みで、俺も思わず感嘆の声を漏らしてしまう。


「なるほど、これが中級ダンジョンを制覇した実力か。だが、まだまだ足りないな」

「くっ!」


 俺の言葉に、鷹見は表情をしかめる。


「いや、まだだ! ――【連波槍れんはそう】!」

「ほう」


 槍術スキルの発動とともに、鷹見の動きが一層加速する。

 瞬間的に加速した突きが、まるで同時に数十本の槍が襲いかかってくるかのように放たれる。

 正確には0.1秒以下の間隔で繰り出されているのだが、その速さと技術が合わさり、同時に放たれているように見える凄まじい連撃だった。

 しかし――


「――――」


 俺は全神経を集中させ、飛んでくる槍の軌道を読み取る。

 一本、また一本と、微妙なタイミングでずらしながら体を動かし、すべての攻撃を躱していく。

 全てを躱し終えた後、鷹見に向かって告げる。


「なかなかやるな」


 俺の言葉に、鷹見の顔が歪んだ。


「――ッ! なぜ、全て躱せる!? 明らかに僕よりも、ステータスが低いはずの動きで……!」

「経験とセンスだ」

「っ、舐めるな!」


 鷹見の怒号とともに、再び猛攻が始まる。

 穿空せんくうが空気を切り裂き、その軌跡が目にも止まらぬ速さで俺を襲う。


「はあっ!」


 鷹見の槍が、まるで生き物のように蛇行しながら接近してくる。

 俺は間一髪でその攻撃を躱すが、髪の毛が数本切れ落ちるのを感じた。


(なるほど、さっきまでより明らかに動きが洗練されている)


 俺は冷静に状況を分析する。

 鷹見の攻撃は、単に力任せではない。

 一撃一撃に計算された軌道があり、俺の動きを予測しているかのようだ。


「どうした? さっきまでの余裕はどこへ行った!」


 鷹見の声に挑発の色が混じる。

 だが、俺の集中は乱れない。

 突き、薙ぎ払い、回転からの横薙ぎ。

 多彩な攻撃が繰り出される中、俺は最小限の動きで全てを凌ぎ続ける。


(とはいえ、なかなかやるな。これまでに見てきた探索者とは格が違う)


 鷹見のスキル使用を観察しながら、俺は内心で感心する。

 彼はスキルをただ発動しているのではなく、一部とはいえ自分のものとして活用している。

 雫や琴美に教えた術式の運用方法を、鷹見は実践しているのだ。


(これを独学で覚えたとすれば大したものだ)


 ふと、俺は周囲のギャラリーに視線をやる。


「すげぇぞ! あの金髪の動き! 目に留まらねぇ速さだ」

「いや、神蔵蓮夜の方もヤバくないか? あんな接近戦で一度も当たってないぞ!」

「これ、マジでどっちが勝つんだ……?」


 彼らの反応から見て分かる通り、やはり鷹見の実力は本物だ。

 ――――しかし。


(……ふむ)


 ここで俺は眉をひそめる。

 鷹見の動きには確かに隙がない。だが、それでもある違和感が拭えない。


(確かに強いことは強いが、これだけの実力でレベル100のボスを倒すほどとは思えないな)


 すると、グラムが俺の心に直接語りかけてきた。


『主様、この男、明らかに本気を出していないようですが……随分と舐められたものですね』


(ああ、気付いていたか)


 グラムの言葉に、俺は内心で頷く。

 となると――


「おい、鷹見」


 俺は攻撃の合間を縫って、鷹見に声をかける。


「なんだ? 降参でもするつもりか?」

「いや、そうじゃない。お前、本気で戦ってないだろ」

「なっ!?」


 鷹見の動きが一瞬止まる。

 その隙を突いて、俺は更に言葉を続ける。


「確かにお前の実力は本物だ。だが、これがお前の全てじゃない。レベル100のボスを倒すような奴が、このレベルの攻撃しかできないはずがない」


 鷹見が険しい顔色に変わる。

 俺の言葉が図星だったようだ。


「ふん……見抜かれたか」


 鷹見は穿空せんくうを下ろし、深くため息をつく。


「認めよう。ここまではお前を格下相手だと見くびり、殺してしまわないように注意していた……しかし、どうやらそれだと足りないようだ」


 彼の表情が一変する。

 先ほどまでの余裕は消え、真剣な眼差しに変わっていた。


「望み通り、ここからが本番だ。覚悟しろ、神蔵蓮夜!」


 鷹見の周りに、これまでとは比べ物にならないほどの魔力が渦巻き始める。

 俺は身構えながら、内心で期待に胸を膨らませる。

 ここからが、本当の勝負の始まりだ。

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