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転生した大魔王、地球に出現したダンジョンを作ったのが前世の自分であることを思い出す。 〜魔王時代の知識と経験で瞬く間に世界最強になって無双します!〜  作者: 八又ナガト
第二章 大魔王、因縁の宿敵たちを相手に無双する

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53 謎の条件

 なんだかよく分からない流れではあるものの、俺と鷹見は決闘することになった。

 すぐにでも戦いたいという鷹見の要望に応じ、俺たちは探索者ギルドに併設された訓練場へと移動する。


 訓練場に足を踏み入れると、懐かしい空気が肌を撫でる。

 過去の決闘やミツキとの魔道具実験を含め、何度も世話になっている場所だ。

 広々とした空間に踏み込むと、周囲には既にギャラリーが集まっていた。


「おい、あれが例の神蔵蓮夜か! 動画で見た通りの雰囲気だな」

「ああ、でも向こうの金髪の奴も侮れないらしいぜ。確か中級ダンジョンを攻略した腕利きだとか」

「へえ、そうなのか。でも俺は神蔵蓮夜に期待だな。あの配信、衝撃的だったからさ」


 話題の中心人物である俺と、仮にも中級ダンジョンをソロで攻略した有望株の鷹見。その両者が戦うとなって、当然注目を集めているようだ。

 そしてギャラリーの中に、心配そうな表情で俺を見つめる雫の姿があった。


「れ、蓮夜さん、大丈夫でしょうか……」


 どうやら心優しい少女は、俺を心配してくれているようだ。

 そう思っていると、雫は小さな声で続けた。


「やりすぎて、相手の人を殺しちゃうんじゃ……」


 違った。相手の心配だった。

 というか失礼な話だ。

 前世ならともかく、さすがに今の俺は自制心がある。そもそも鷹見の言っていた話が本当なら奴の方がレベル上は格上だし、そう簡単に圧倒できるとも限らない。


 俺がそんなことを考えていると、鷹見が挑発するように声をかけてきた。


「逃げ出さず、向かってきたのだけは褒めてやろう」


 生意気な口を利く鷹見だが、物言いとは裏腹に、立ち振る舞いからは歴戦の強者たる雰囲気を醸し出していた。


 さらに両手で握る槍には見覚えがある。

 確か、フランシエル中級ダンジョンの隠しエリアに置いていた報酬だったか。

 名を、【穿空せんくう】。穂先に特殊な術式が埋め込まれており、貫通力を大幅に上昇させる効果を持つ。

 並の武器では受け止めることもできない代物だ。


「――仕方ない、グラム」


 俺はグラムを召喚し、さらに数時間前にかけた凍結を解いた。

 するとグラムは凍結されながらも状況を理解していたのか、


『よくぞお呼びくださいました! このボンクラを圧倒してやりましょう、主様!』


 と、声高々に宣言する(俺にしか聞こえていないが)。

 乱暴な物言いだが、やる気がある分にはいいだろう。


 そんなことを考えていると、新しい声がかかる。


「あ、あの~、準備はよろしいでしょうか?」


 受付嬢の瀬名だ。

 彼女は疲れ切った表情で確認してきていた。

 耳を潜めると、小さな声で「私はただのギルド職員なのに、前回に続いて、なんで審判をする必要が……」と呟いている。

 受付嬢って大変なんだな、と思った。


 っと、そうだ。重要なことを聞き忘れていた。


「その前に一つ聞かせろ。今回は決闘とのことだったが、何を賭けるんだ?」


 訊くと、鷹見は得意げな表情を浮かべる。


「決まっている。僕に負けた暁には、そのことをできる限りの手段を以て世界中に伝えろ。そうすれば、僕の武勇が世に広まることとなるだろう」


 ……ふむ、できる限りときたか。

 もしそんなことになれば、琴美のチャンネルをジャックするとしよう。

 ――もっとも、そんな事態になるなどあり得ないが。


 すると、鷹見が続けて言う。


「それで、君は何を望む?」

「……そうだな」


 考えてみるも、特にいいものが思いつかない。

 魔道具売却のおかげで懐は潤っているし、専門的なお願いをしたいほどコイツのこともよく知らないし……

 強いて言うなら、仮にも実力者である鷹見と戦えるこの状況自体、俺にとっては望ましいことが。


 ゆえに、


「別に何もいらん」

「っ!」


 魔王的寛大な心で答えるも、なぜか鷹見は表情を強張らせていた。


「お前、僕を舐めているのか? ……いや、そうか。心のどこかでは自分が勝てるはずがないと理解しているから、条件が不要というわけか」

「いや、そういうわけじゃ――」

「今から僕に負けた時のことを考えているとは殊勝な心掛けだが、手応えのない相手を痛めつける趣味はない。そうだ、お前が勝った際には僕が何でも言うことを一つ聞いてやろう。これで少しは抵抗する気になるだろう?」


 勝手に語り、勝手に自分にとって不都合な条件を付け始める鷹見。

 こんな変わった奴がいるんだな、と思った。


「まあ、それでも何でもいい。とっとと始めるぞ」

「ああ、かかってくるがいい」


 向かい合う俺と鷹見。

 両者から闘気が漲り、空気が重く沈む。

 ギャラリーの息遣いまでもが止まったかのようだ。


 瀬名はぎこちない表情を浮かべながら、大声を上げる。


「それでは、決闘――始め!」


 その瞬間、俺と鷹見の間に火花が散った。

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