24 VSマスター・メイジ
マスター・メイジとの戦闘開始直後、先に動いたのは相手陣営だった。
「ガルゥゥゥ!」
「クァァアア!」
「ふむ、来たか」
まず初めに、雄叫びを上げながら迫ってきたモンスターは2体。
灰色の毛並みが特徴的な狼――グレイファングと、獰猛な顔つきをした鳥――ハングリーバードだ。
せっかくなので鑑定も使ってみる。
――――――――――――――
【グレイファング】
・討伐推奨レベル:40
【ハングリーバード】
・討伐推奨レベル:35
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討伐推奨レベルはそれぞれ40と35。
念のため背後に隠れている数十体のモンスターにも使用してみると、ほとんどが30~40の範囲内に収まっていた。
「マスター・メイジが使役しているだけあって、通常個体よりはかなり強力だな。もっとも――」
俺にとっては何の障害でもないが。
「術式変換――纏炎」
もはやお馴染みとなった纏炎を発動し、拳に炎を纏う。
そして魔力循環により身体能力を強化することで、より素早く、より力強い行動を可能とする。
さらに今回に限っては、もともとのレベル差も存在する。
初めから相手になるはずもなく、俺は次々とモンスターたちを瞬殺していった。
しかし当然、それだけで勝てる敵ではない。
今回の本命は他にいるのだから。
『■□■□――――』
「ほう」
モンスターたちを処理している隙をついて、マスター・メイジが頭上から魔術を放ってくる。
炎の放射、水の槍、風の刃。
一つ一つがかなりの破壊力を誇るそれらが、俺だけを狙って降り注いできた。
「よっと」
魔力の流れを読むことで魔術を回避しつつ、冷静に情報を分析する。
マスター・メイジの特徴。
それは多種多様な魔術と、何体ものモンスターを使役してくること。
マスター・メイジに気を取られればモンスターに襲われ、
モンスターに意識を割けば頭上から魔術の雨が降ってくる。
これらをどう対処するかが、マスター・メイジ攻略のポイントとなる。
「我ながら厄介なモンスターを配置したものだ」
基本設計からして、相当なレベル差がない限り一人で討伐できる仕様にはなっていない。
レベルがたった48でコイツに勝てる探索者など、ほんの一握りの例外を除いて存在しないだろう。
――まあ当然、俺はその例外側なわけだが。
俺は瞬時に閃いた数十の解決策のうち、今回は一つを選ぶことにした。
『■■□■□□――――』
俺が方針を決めている間にも、マスター・メイジは次の詠唱に入っていた。
展開されていく術式の規模と数は先ほどと比べ物にならない。
アレが発動されれば、さすがの俺でも全てを防ぐのに10通りくらいしか方法は思いつかない。
なので今回は、事前に防がせてもらうことにする。
「術式凍結」
『――■□ッ!?!?』
スキル【魔力凍結】を発動し、凍結の性質を含んだ魔力を敵の術式に注ぎ込む。
術式の操作ができなくなったことにマスター・メイジが困惑しているのが、地上からでも手に取るように分かる。
そしてここからが本命。
魔術を使えなくなった魔術師など、ただの案山子でしかない。
「【紅く染まる豪雨】」
いつぞやの決闘でも使用した火属性の中級魔術、紅く染まる豪雨を発動する。
俺から放射状に放たれた紅い雨は周囲のモンスターたちを簡単に蹴散らすと共に、マスター・メイジ目がけて飛んでいった。
『■□――ッ!』
マスター・メイジは体の前に結界を展開し、かろうじてその豪雨を受け止める。
さすがの反応と魔力操作だが、まだまだ甘い。
俺はマスター・メイジ以外のモンスターを殲滅できたことを確認すると、周囲に拡散していた雨を束ね、一つの塊に変換していく。
そして究極の一に仕上がったそれを、空中で身動きの取れないまま身を守り続ける獲物に向けて放った。
「術式変換――石穿つ豪雨」
数千の雨粒を集約させることにより、『貫く』という概念を付与した上級魔術――石穿つ豪雨。
それは勢いよく空を駆けながらマスター・メイジに迫り、いとも容易く結界ごと敵を貫いた。
『■、■■ォォォ』
断末魔の声と共に、消滅していくマスター・メイジ。
そして、
『レベルアップしました』
『レベルアップしました』
『レベルアップしました』
同時にレベルアップ音も響き、俺が勝利したことを理解する。
「これで討伐完了だな。それで欲しかった報酬は――っと、あれか」
マスター・メイジが消滅したのち、空中でキラリと輝く何かを見つけた俺は、落下してくるそれを捕まえた。
指輪の形をしているそれに対して、鑑定を使用する。
――――――――――――――
【魔蓄の指輪】
・大魔術師の工房のボス:マスター・メイジから入手した指輪。
・この指輪には魔力を保存することが可能。蓄えられた魔力を使用することで、魔術使用時の魔力消費量を抑えることができる。
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「よし、目的通り手に入れられたな」
魔蓄の指輪を右手の中指にはめながら、俺は満足感とともにそう呟いた。
これがあれば魔力消費をかなり減らせるはずだ。
記憶を取り戻して以降、俺は効率よくレベルアップするため格上のモンスターと戦ってきた。
格上を倒すためには大量の魔力を使用する上位の魔術が必要となる。
もともとの技量のおかげで発動こそ問題はなかったものの、これまで使用回数については制限がつきまとっていた。
この魔道具さえあれば、その問題もいくらか解決に近づく。
「やっぱりガレリスダンジョンの転移結晶を購入して正解だったな。ここには他にも優秀なスキルや魔道具がある。まずはそれを全部回収するとするか!」
これからの期待感と共に、俺は今後の目標を口にした。
この調子で成長していけば、すぐに前世の実力を取り戻せるはずだと信じて。
けど、この時の俺は知る由がなかった。
まさかほんの先の未来で、かつての因縁と巡り合うことになるだなんて。
今はまだそんなことを知らない俺は、意気揚々と【大魔術師の工房】を後にするのだった――――
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LvUP↑
神蔵 蓮夜 20歳 レベル:51
職業:なし
攻撃力:172
耐久力:165
速 度:176
魔 力:187
知 力:187
スキル:上級魔術適性(火)Lv4、魔力凍結Lv2、鑑定
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