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転生した大魔王、地球に出現したダンジョンを作ったのが前世の自分であることを思い出す。 〜魔王時代の知識と経験で瞬く間に世界最強になって無双します!〜  作者: 八又ナガト
第一章 大魔王、前世の記憶を取り戻し無双する

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18 再会と謝罪

 休憩を挟みながら、魔道具を製作すること数時間。

 道中で入手した分の魔石も含め、ようやく全ての加工が終わる。


「よし、これで完成だ」


 出来上がった魔術石(まじゅついし)を目の前に並べ、俺は満足感と共に頷いた。


「かなり時間がかかったが、これだけあればそれなりの稼ぎにはなるだろう」


 少なくとも、転移結晶(てんいけっしょう)の購入に必要な100万円には届くはずだ。

 というか、届いてくれないと俺が困る。


「まあ、それは実際に売ってみないことには分からんから置いておくとして……他にやっておくべきことがあるな」


 俺は魔術石の中から一つを掴み上げた。


「理論的には完璧なはずだが、実際に使って試しておきたい。魔王時代とは魔力の質と量も異なっているし、何かしらの弊害が生じてる可能性もあるからな。とはいえ製作者本人である俺が使ってもあまり参考にはならないし……都合のいい奴を見つけて協力してもらうか」


 方針は決まった。

 俺は数十個の魔術石と、あとついでに凍結竜(アイスバーンドレイク)の牙や鱗を持てる限り回収してボス部屋を後にするのだった。



 ◇◆◇



 それから冷たい風の吹く雪原を歩くこと約2時間。

 隠しエリアである【氷風(ひょうふう)雪原(せつげん)】の出口に差し掛かったタイミングで、ふと誰かの話し声が聞こえてきた。



「お、おい、見ろよこの穴。この先にも道が続いてるぞ!」

「本当か? 地図じゃこんなところに道があるなんて書かれてないが」

「マジだって、ほら!」

「……本当だな。ってことは、俺たちが初めて見つけた隠しルートってわけか」

「ああ! 中にはまだ誰も見つけてない財宝が盛りだくさんあるはずだ!」



 ……ふむ。

 聞こえてくる話から察するに、どうやら俺が空けた穴を見つけたシーカーたちがいるらしい。

 内容や声色から分かるように、かなりテンションが上がっている様子だ。


「さて、どうしたものか」


 ここで突然、俺が姿を現して「悪いがここを最初に見つけたのは俺だ」「あとついでにエリアボスも倒してきた」と伝えるのは、あまり気が進まない。

 彼らの喜びに水をさすのも、未知なる冒険への期待感を潰してしまうのも、俺としては望むところではない。


 仕方ない。

 ここはいったん姿を隠し、彼らに気分よく挑戦してもらうとするか。


 そう思い、身を引こうとしたタイミングで、新しい声が耳に飛び込んできた。



「で、でも、隠しエリアには強力なモンスターがいることが多いんだよね? 私たちは中級ダンジョンに上がってきたばかりなんだし、あまり無理しない方がいいんじゃ……」



 ……ん?

 中級ダンジョンに上がってきたばかり?


 つい最近、出会った誰かを彷彿とさせる言葉に、これまたどこかで聞いた覚えのある声。

 もしかして……


 心当たりがあった俺は、隠れるのをやめて姿を現す。

 するとそこには予想通り、2日前に出会ったばかりの3人組が立っていた。


「やっぱり雫たちか」

「……へ? れ、蓮夜さん!?」


 呼びかけると、少女――蒼井(あおい) (しずく)は俺を見てかなり驚いた様子だった。


「うおっ、蓮夜じゃねえか」

「……これは驚いたな」


 雫に続くようにして、雫の兄でありパーティーのリーダーである蒼井(あおい) 優斗(ゆうと)と、彼ら二人の幼馴染みである緋村 真司(ひむら しんじ)がそんなリアクションを取る。


 彼女たちは、初級ダンジョンのボス部屋でエクストラボスである炎の獅子(イグニス・レオ)と戦った際、臨時パーティーを組んだ3人だ。

 あの時、炎の獅子(イグニス・レオ)を討伐するために協力し合ったことを思い出すと、今でも思わず胸が熱くなってしまう。

 そんな思い出のある素敵な関係だ。


 っと、回想はさておき。

 今は目の前の相手に集中しなくては。


 俺は一番近くにいた優斗に話しかける。


「3人は何をしてたんだ?」

「そりゃ見ての通り、中級ダンジョンを探索している途中に、地図にも載ってない隠しルートを見つけて喜んでたところだが……見間違いじゃなけりゃ蓮夜、今そこから出てこなかったか?」

「ん? ああ。そりゃ今の今まで、この奥の隠しエリアにいたからな」


 正直に答えると、優斗は落ち込んだ表情を見せる。



「マジか、まさか蓮夜に先を越されてたとは……いやでも、昨日の今日で探索しきれてはないはずだし、まだ中には財宝が眠ってるはずだ!」

「確かにまだ残ってるとは思うけど、もしエリアボスに挑戦するんなら明日にした方がいいぞ。復活まであと20時間くらいはかかるだろうしな」

「……復活? ははっ、変なこと言うんだな蓮夜は。それじゃまるでお前がもうエリアボスを倒したみたいじゃないか」

「だからそう言ってるんだよ。ほら、証拠になるか分からないけど、エリアボスの討伐素材だ」



 素材袋から凍結竜(アイスバーンドレイク)の牙と鱗を取り出して見せてやると、優斗や緋村は大きく目を見開いた。


「こ、この魔力の圧……マジじゃねえか」

「相変わらず意味が分からない奴だな……」


 二人が素材を手に取り驚いてる中、なぜか突然、雫がこちらに駆け寄ってくる。


「れ、蓮夜さん!」

「どうしたんだ、そんな慌てた様子で」


 尋ねると、彼女は息を切らしながら答える。


「その、蓮夜さんに会ったら謝りたいと思ってたことがあって」

「謝りたいこと……?」


 心当たりがないため、思わず首を傾げてしまう。

 雫から謝られるようなことなどされた覚えはないんだが。


 そう疑問を抱いていると、雫は続ける。


「レベルについてです!」

「レベル?」

「はい! 炎の獅子(イグニス・レオ)を倒すとき、蓮夜さんが私の魔術を利用するために……そ、その、私に触れてあれやこれやしたじゃないですか!」


 いかがわしいことみたいに言うな。

 実際にはちょっと雫の手を握り、彼女の魔力を俺が操っただけである。

 まあ、異世界(向こう)では婚約の儀にお互いの魔力を操るみたいなことをする部族もいたりしたけど、それはひとまず置いておこう。


「それでその時、私の魔術で炎の獅子(イグニス・レオ)を倒したって判定になったみたいで……実はあの後、3レベルもアップしてるのに気づいたんです!」


 なるほど。

 まあ経緯が経緯だけにそういうこともあるだろうが……


「それがどうかしたのか?」

「そ、それがって……3レベルですよ!? 私が何かをしたわけじゃないのに、それだけの経験値を蓮夜さんから奪ってしまって……どうしてもそれを謝りたかったんです!」

「ふむ」


 雫が普段とは違いかしこまった様子だったのはそういうことか。

 しかし雫には悪いんだが……そこまでを聞いて、率直に抱いた感想があった。


「たった3レベルごときで大げさだな」

「……へ?」

「そんなもの、半日もあれば取り戻せる数字だろう?」

「私たちは半年かけてようやく30レベルだったんですけど!?」


 ああ、そういえばそうだったか。

 ここまで順調にレベルを上げてきたせいで、うっかりシーカーの常識を忘れてしまっていた。

 うん、これは反省しなくては。2秒くらい。


 っと、そんなどうでもいいことはさておき、


「何はともあれ、そういうことだから特に気にする必要はないぞ」

「そういうわけには、せめて何かお礼をさせてもらえれば……」


 ふーむ、なかなか強情な奴だ。


「……ん? 待てよ」


 お礼というワードから、俺の天才的頭脳は一つのアイディアを閃く。

 いたじゃないか。こんなところに、都合のいい相手が。


 俺は素材袋から製作したばかりの魔術石を取り出すと、雫に向けて告げた。



「分かった。そこまで言うんなら、今から一つ協力してくれないか?」


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