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01 よみがえる前世=大魔王の記憶

連載版です。

よろしくお願いいたします!

「……退屈だ」


 魔王城、深奥の間にて。

 豪奢な椅子に腰かけたまま、我は思わずそう呟いた。


「どうされましたか、魔王様?」

「いや、何でもない」


 呟きに反応した側近にそう返した後、我は改めて思考の海に沈む。



 ――――突然だが、我は魔王だ。

 それも歴代最強の大魔王と称されるほどの実力を持ち、欲したものは全て手中に収めてきた。


 しかしそんな我にも手に入れられないものが一つだけあった。

 ずばり、強者との闘いである。

 この世界において我の実力は突き抜け過ぎているため、これまで苦戦というものを経験したことがなかった。


 一応、魔王を倒すために攻めてくる勇者という存在はいる。

 しかしこの勇者がどうにも頼りなく、我に敵わないどころか、道中のモンスター相手に敗走を繰り返すような軟弱者ばかりだった。

 これでは我の渇望は満たされない。それどころか、期待した分だけさらに不満が溜まるというものだ。


 これではあと何百年待とうが、我のもとにたどり着く者は出てこないだろう。

 もういっそのこと、我自身の手で強者を育て上げてみせ――――


「――――!」


 突如として脳裏に浮かび上がった革新的アイデアに、我は思わず立ち上がった。


「魔王様?」

「そうだ、いける、これしかない。我の欲望を満たす方法は……!」


 瞬時に考えをまとめた我は、右手を強く握りしめ、その場で力強く叫んだ。



「そうだ、ダンジョンを作ろう!」

「……は?」



 側近が間抜けな声を漏らしているが、そんなことに意識を割く余裕はない。

 それほどまでに我は、自分のアイデアに興奮していた。


 そうだ、ダンジョンを作ればいいのだ。

 勇者を追い返すためではなく、迎え入れるためのダンジョンを。

 最初は難易度の低いダンジョンを攻略させ、魔王城に近づくごとに難易度を上げていく。

 そうすることによって順序良く勇者を育てることができる。


 いや、それだけではない。我がこれまで集めてきた武器や魔導書もダンジョンに置いておこう。

 それを入手した勇者は、さらに一段飛ばしで強くなることができる。

 これならばそう遠くないうちに、我のもとまでたどり着ける強力な勇者が誕生するはずだ!


「ふはははは! そうと決まればさっそく動き出さねば! 待っていろ、いつか訪れる勇者よ! お前を育てるのはこの我だ!」

「……魔王様が、またご乱心なさった……」


 側近の不遜な言葉も気にすることなく、我は高らかに笑い続けるのだった――――



 ◇◆◇



 ――――という、夢を見た。


「なんだったんだ今の夢。やけにリアルだったけど……」


 大学生三年になってから迎えた夏休みの初日。

 俺――神蔵(かみくら) 蓮夜(れんや)は、やけに重たい体を起こしながらそう呟いた。


「まあいいか。それより、ダンジョン配信っと」


 スマホを見ると、そこにはいつも通りダンジョンに関する動画で溢れていた。

 強力なモンスターを倒しただとか、貴重な素材が手に入っただとか、そんなのばっかだ。


 ――ダンジョン。それは約10年前、地球に出現した異次元の空間。

 中にはモンスターや魔石といった資源が存在し、ダンジョン攻略で生計を立てる者を探索者(シーカー)と呼び、今ではありふれた職業の一つとなった。


 俺はシーカーにこそなっていないが、こうしてダンジョン内の攻略風景を見るのが好きだった。

 今もお気に入りの配信者の攻略を見ようと思ったのだが、ふと違和感を覚えた。


「あれ? このダンジョンの風景、どこかで見たことあるぞ」


 デジャヴとはどこか違う。

 となると、以前に別の配信で見た場所と被っているのだろうか?


「いや、でも配信タイトルでは新ルートの開拓を行うって書かれてあるし、そんな配信を見た覚えもない。気のせいか何かか? ……ッ!?」


 そう結論を出そうとした次の瞬間、激しい痛みが頭を襲う。

 脳内では俺が知らないはずの記憶が急激に呼び起こされていく。


 それは異世界に君臨した、とある大魔王の記憶。

 自分に匹敵する強者を求め、しかしそんな存在が現れることはなく。

 とうとう自分自身の手で最強の勇者を生み出すべく、幾つものダンジョンを生み出した。


 この記憶が指し示す事実はただ一つ。



「そうだ、思い出した。俺の前世は魔王だったんだ」



 ありえないような結論なのに、不思議と混乱はなく、自然とその事実を受け入れていた。

 そのまま俺はスマホの配信画面に視線を落とす。


 俺の前世の記憶と、目の前に広がる配信の光景が合致する。

 もっというと、これまで神蔵 蓮夜(今の俺)が見てきた全てのダンジョンの光景を、俺は前世で見たことがあった。


 それもそのはず。

 なぜなら、この地球に出現したダンジョンを生み出したのは他でもない――


「――前世の俺自身だったんだから」


 身震いが起きる。

 地球で生まれ育った俺の本能が、それほど衝撃的な内容だと感じているのだ。

 だが、これは間違いなく事実。

 俺の中にある魔王としての記憶がそれを証明している。


 しかしここで、俺は幾つか疑問を抱いた。


「けど、なんで異世界で作ったはずのダンジョンが地球に出現したんだ? そもそも向こうで死んだ時の記憶もないし、どんな経緯で転生したのかも分からない……何がどうなってるんだか」


 分からないことだらけ。

 それでもはっきりしていることが一つだけある。


「いずれにせよダンジョンがそこにある以上、それを管理している存在(・・・・・・・・)はいるはずだ。俺以外の何者かがダンジョンの管理権を奪い取り、地球に出現させたと考えるのがもっとも辻褄が合う」


 そこまで考えをまとめた後、俺は「はっ」と笑った。


「おもしろい」


 世界が変わっても、ダンジョンの意義が変わることはない。

 ダンジョンとは挑戦者を成長させ、最深部に待ち構える絶対強者と戦わせるために存在する。


 ならばその流儀にのっとり、俺も一から挑戦するとしよう。

 魔王としての力は失ってしまったが、ダンジョンと魔術の知識に関してこの世界で俺の右に出る者はいない。

 瞬く間にシーカーたちの最前線にたどり着き、そのまま最深部まで攻略し、誰だかは知らないが魔王の玉座に座る不届き物を成敗してみせよう。


「決まりだな」


 かくして、前世では魔王だった俺によるダンジョン攻略が幕を開くのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 文章が、読者がダンジョン系の知識(魔石やダンジョンそのものなど)を持ってることが前提になっているものになってる気がします。 [一言] 世界最速のレベルアップからきました。 面白いです。…
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