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病気持ちはいなかったようで


「あんた、調子乗るのも大概にしなさいよね」

「こんにちは、テレマン…男爵令嬢?」

「ちゃんと男爵令嬢よ!!」

「失礼いたしました。不幸なうわさを耳にしたもので…」


 公爵家からの損害賠償で男爵家は火の車とか、将来が絶たれた殿下の無理心中の供に選ばれているとか、まあそんなうわさだ。


「わたくしの幸せな王太子妃計画を潰したくせに、自分2神のいとし子とか、不公平にも程がありますわ!!!」


 声、めっちゃ響くなぁ…。


 誰もいないところを選んでも声がこんだけ響くなら、ここは後ろ暗い事をするには向かないよなぁ。

 けれどローザリンデ様は舞台のように声が響く事に心なし悦に入っているようにみえる。

 この人、そもそも貴族に向いてない。彼女は、殿下のような男に如何にも好かれそうな可愛い馬鹿なのだ。


「この国にユースリール神の神子はいませんからね。血縁にユースリール神の神子がいた私が一番都合よかったのでしょう」

「は?なにそれ、自分の血が尊いのよって言ってるわけ?私は他の平民とは生まれが違うのよって?はーっ、アタシアンタの事大っ嫌い!」

「地が出てますよ、男爵令嬢」

「アンタ相手になんでアタシの努力の成果を見せなきゃいけないのよ。もったいない!」


 そう言ってローザリンデは魔法でガラクタの中の瓶の中に入っていた水を操った。


「美の女神様から見捨てられるといいわ!!」

「っ」


 流石に不意打ちに対して反射的に結界を張れるほど魔法の腕がいいわけじゃないので、その水をもろにかぶってしまった。その言葉からよっぽど汚い水をかけられたと思ったが、予想に反して異臭はしなかった。それどころか。


「ん、甘い?砂糖水ですか?」


 そして彼女は自身の持つバスケットから取り出した瓶の蓋を開いた。まあ、この流れでバスケットの中身がお昼ご飯とは思ってなかったけれど、流石に平民出身。発想がえぐい。


「雌の蚊よ!病気持ちがいない事を祈るのね!!!」

「あ、結界張らせてもらいますね」

「ちょっと!!!」


 不意打ちじゃなければちゃんと張れるからね。


「また!そうやってキラキラ、キラキラ!……もう、うっとうしい!!」


 私を食せないと分かるとすぐに蚊は引き返してローザリンデを獲物と定めたようだ。まあそうなるだろうけど、ローザリンデはパチンパチンと蚊を必死に潰して行く。


「ちょっと!私にも結界をはりなさいよ!」

「何故?」

「あたりまえでしょう?!アンタ聖女でしょう?!民の願いを叶えることが仕事じゃない!!」

「蚊を使うことを決めたのはあなたではないのですか?虫よけ対策はしてこなかったのですか?殺虫剤は?」

「してないし、ないわよ!!」

「いや、何でですか。毒を使うなら解毒剤もセット。常識でしょう…」

「アンタ本当に聖女?!どこの常識よ?!」


 大きな声を張り上げながらパチンパチンしているローザリンデには悪いが、こちらにも立場がある。

 特待生の欠席はペナルティーがつく。遅刻もまずい。けど、ずぶぬれで椅子に座るわけにもいかないので急いで着替えをしなければいけない。


「あ、病気もちがいたら神殿へどうぞ。悲劇のいきさつを添えて紹介状を書きますよ」


 ローザリンデは次の授業にボコボコな状態で出席したが、それが暴力の痕でないと分かると教師も授業を再開した。が、生のニンジンを食べる様な音をたてて体中掻き毟るローザリンデ。授業の邪魔にしかならない彼女は医療室へ体よく追い出されたらしい。


 勉強嫌いの彼女にはむしろラッキーだったんじゃないかしら。うん。めでたしめでたし。


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