お菓子
いつまで私はもつのかなあ。
そんなことを考える。
眠ってしまったりっちゃんの頬をつついて、制服の裾をなおす。
かわいく生まれてきて、まあよかったと思ってる。
私がいると場がぱっと華やぐとか、私が入るグループがちょっと羨望の眼差しを受けるとかそういうの。
別になにもしなくても、そこにいるだけで求められる対象になれる。
世の中って花いちもんめみたいなもので、私はかわいいからいつでも高い優先順位でいられる。
かわいさには二種類あることに、高校に入ってから気づいた。
消費されないかわいさと、消費されるかわいさだ。
私のそれはどうやら消費されるみたいで、かわいい私はかわいくあることを求められた。
求められるものはお人形であることだったり、機嫌よく笑ってることだったり、恋人関係だったり、体だったりしたけれど、どれも一様にエスカレートしていった。
私はかわいいから、なにもしなくても求められる。でも同時に、その人の理想までついでに求められる。ついでというにはちょっとしんどい。
私は私を消費して、なんとかりっちゃんと一緒にいられる。
スクールカーストの高い人間との親密な関係とか、女同士の背徳感とか物珍しさとか、容姿のいい人間と二人で行動するとき、周りの目から得られる優越感とか。
そういうのを全部利用して、やっとりっちゃんの中で私と付き合うメリットが生まれてるんだと思う。
だって、りっちゃんは私のことを別に好きじゃない。
理想を演じて、私の提供できる私が尽きて、りっちゃんが飽きてしまったとき、多分この子はいなくなる。
だって馬鹿らしいじゃん。容姿のいい人間と二人でいるときの優越感なんて、本当のところなんの価値もない。りっちゃんはそういうのを味わったことがないから、そりゃ最初は心地よいかもしれない。でも、そんなものにずっと価値を見出せるほどりっちゃんは馬鹿じゃない。
他だって同じだ。私がりっちゃんに提供している私なんて、本当のところ全く価値なんてない。だって私は、私のかわいさしかりっちゃんにあげられないのだから。
それに気づいてしまうまで、一緒にいよう。
あなたが私を食べつくすまで。
あなたが男の人と、真実の愛とかそういうものをみつけてしまうまで。