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雲の上を目指した男の手記

作者: 八丈 くるる


 今となっては後悔している。だからこそ私はその後悔を書き記し、そして遠い未来、この後悔が後悔とならない時になるまで誰の目にも止まらない場所へと隠しておくことにする。

 私は空を目指したのだ。それが私の後悔。

 はたして遠い未来、これを読んでいるあなたはどう思うだろうか。願うならば嘲笑ってくれないかと、そう思う。

 私はただの一般的で、模倣的で、優秀な、しかしながら愚かな人間だった。

 そんな愚者が生まれ育ったのは小さな村だった。それも辺境にある小さな村。しかし私は恵まれていた。父や母がどこから金を手にしていたのかは全くもって私の知識には入ってはいないのだが、とにかく小さな村であるはずなのに生活に困ったことはなかった。

 だから私は幼い頃から様々な知識を頭に入れることができた。

 これを読んでいるあなたはどの宗教を信仰しているだろうか。まさか宗教そのものがなくなっているだろうか。しかし過去というものは残る。この手記のように。だからこそ宗教がなくなることはないと思う。

 私はシヴィル教を信仰していた。あなたも同じだろうか。いや、シヴィル教は世界という規模で見てしまえばそう大きくないものだろうからウトラス教だろうか。

 私は私の目指すもののため色んな宗教について調べ上げた。その結果、私の目指したものはどの宗教でも類似した存在であると理解した。

 そして私は一つの結論を出した。

 『やはり私の目指すものは雲の上、そこに存在しているのだ』と。

 その為に私はさらに様々な知識をつけ、五十四年を賭けてとうとう辿り着いたのだ。

 人間が空を飛ぶ、という奇跡に。

 当時の私はそれはもう大喜びだった。あまりの喜びっぷりに事情を知らない家族に引かれてしまうほどには。

 そして私は空を飛んだのだ。人しれない場所にて。雲の上を目指したのだ。

 結果から言えば私の目的は達成させられたと言えばそうであるが、達成させられなかったとも言える微妙なものだった。しかしそんな微妙な結果は私に重症な後悔を与えてくれた。


 『雲の上に神は存在しない。神は我らを見守ってなんかいない』


 それが結果だった。雲の上に行くことはできた。しかし私がこの目に見たかった景色は何もなかったのだ。

 雲はどうやらただ雨を降らせ、影を作り、太陽を隠すだけの、ただの自然現象でしかないのだ。そこに神の力なぞ存在していない。

 それから私はどうやって地上に戻ってきたのかは覚えていない。ただ、気が付いた時には私は空を飛ぶための術の全てを壊していた。設計図までも全てを。

 これが私の後悔だ。私達がいるものと信じてやまなかった、神はいなかったのだ。



 古びた手記には続きも書かれていたようだが、自ら破いてしまったようだった。

 手記を読んでいた青年は手記を元にあった場所にそっと戻し踵を返し、一人考える。


 確かに雲の上に神がいないことはもはや周知の事実となった。しかしどうだろうか。果たして神が自らの上にものを作るだろうか。雲の上にもまだ月や星がある。本当の上とはどこにあるのだろうか。そして、神がいないというのならば、この規則正しく緻密、そして不安定な人間という存在はどうして生まれたのだろうか。


 青年は空を流れていく雲を眺めながら一人乾いた笑いを見せた。



深夜テンションでパパッと書いたからおかしなとこ多い。

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