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転生チート令嬢は究極に料理が出来ない。  作者: 亜野朱
第1章 転生チート令嬢は普通じゃない。
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パーティーの場って堅苦しくない?

 ショーム公爵が去ると、また直ぐに私達は声をかけられた。

 まあ、そうよね。主役だもん。


「マーガル久しいな。リノちゃん、おめでとう」

 そう声をかけてきたのは体格のよい中背のおじ様だった。ジオことジィオラーダス・ガジェーゼ。お父様と同じく三大騎士と言われた男である。黒い正装の腕は、筋肉でパンパンになっているのが見て分かる。白い無精髭も更におじ様をワイルドに見せている。


「ジオ様。お久しぶりです。今日はありがとうございます」

 私の記憶ではジオ様と会ったのは3年近く前が最後だったと思う。ジオ様の領土、ガジェーゼ領はレングランド領から離れている上、お父様と違い現役バリバリの騎士として国でも働く要人なのだ。


「しっかし、リノちゃんはメニーダに似て美人だな。マーガルが側にいたくて引退するわけだ」

「足の怪我さえなければ私だって現役だったさ」

 ジオ様とお父様はそう言うと豪快に笑った。嫌みなのか冗談なのかは私にはさっぱり判らないけれど、お父様は昔『三大騎士として共に長い間一緒の戦地にいたからジオは親友だ』と言っていた。いいな、友達。

 ジオ様は忙しいからなかなか会えないけれど、この気さくさと彼の話す英雄談が溜まらなく好きだったりする。


「そうだ、今日はリノちゃんに俺の息子を紹介したくて連れて来てるんだ。どこいったかな」

 ジオ様はそう言うとひょいっとつま先立ちして辺りを見回す。

「おお、いたいた。おい、ウィード。こっちに来い」

 ジオ様の視線の先には色とりどりのドレスを着た女の子達の塊があった。そこから黄色い声が重なるように聞こえ、女の子達の塊の中から一人の少年が姿を現わした。


「息子のウィードだ。リノちゃんと同じ15歳だな」

「ウィード・ガジェーゼです。よろしく」

 柔らかそうな金髪の高身長な彼はそう言って私の左手を取って甲に口づけた。再び女の子達から黄色い悲鳴があがる。

 青い瞳は吸い込まれそうな程美しく、同じ15歳とは思えない大人っぽさがある。

「よ、よろしくお願いします。リノ・レングランドです、ウィード様」

「同年代ですし、ウィードで結構ですよ。リノ?」

 そう言ってウインクするウィード。

 まさにイケメンというやつだわ。先ほど塊になっていた女の子達がうっとりとした表情でウィードを見ている。


「最近レングランド領のお嬢様のお噂を耳にしたので父のお付きとして本日お邪魔したのですが……」

 ウィードが私の耳元にそっと顔を近づける。

「……お噂以上にお綺麗な方ですね」


 はいはい。綺麗綺麗。

 ですから女神のおまけですよ、その綺麗とか美貌ってやつは。

 なんだかウィードが私の事を品定めするように見ている気がする。ワイルドなジオ様と違って物腰の柔らかな感じで、ウィードは母親似なのかしら。


「ウィード君の誕生日会みたいな高級なパーティーではないが、楽しんでいってくれ」

 お父様がウィードの肩を叩き話しかける。

 そういえば、半年位前にお父様がジオ様のご子息の15歳の誕生日のお祝いに行ったけれど、あれってウィードの誕生日パーティーのことだったのね。公爵だけでなく王族や騎士団までも参列して田舎の領主の自分が場違いな感じだったと言ってたのを思い出した。

「有難うございます、マーガル様。とても素敵な誕生会ですよ」

 ウィードがそう私に目配せする。

 ああ、うん。

 田舎領のパーティーでも楽しんで貰えているなら光栄だわ。

 ただちょっと私このタイプ苦手なのよね。私にこういう耐性がないっていうのが一番の原因なんだろうけれど、女ったらしっぽさが鼻につく。

 どっちかといえば、ラスみたいに私を同等に扱ってくれたり、訳隔たり無く楽しい話を聞かせてくれる人の方が一緒にいて楽しいのだけれど。


 お、楽しい話と言えば、丁度ここにいるじゃない!


「ああ、そうだ。ジオ様、また昔みたいに騎士団のお話をしてくださらないですか?私ジオ様がお出かけになった場所のお話を聞くの楽しみにしていたんです」

 私の言葉にジオ様だけでなく、ウィードが目を丸くしていた。

 あれ?何か変なこと言った?


 3年くらい前にジオ様がいらした際、お父様お母様の横で聞いたジオ様の英雄談はまるでファンタジー小説を読み聞かせてもらっているかのようだった。どこの街道でどんな魔物が出てとか、それをどんな戦法でやっつけたとか。お父様とお母様は長い話に聞き飽きているようだったけれど、屋敷から出たことのない私にはジオ様の話は本当にキラキラとしていた。

 折角ジオ様がいらしているのだもの、あんな話をまた聞きたい。


 私がジオ様に詰め寄ると、ジオ様は空になったグラスを落としそうになった。


「あ、ドリンクがないのですね。何かお飲みになりますか?私、持ってきますね?」

「あ、そ、そうだな。では赤ワインを頂こうかな」

「じゃあ、ご用意しますね」

 私はドレスを翻しドリンクが用意されているテーブルへと向かう。

 ふふふ。今日はどんなお話を聞かせてもらえるのかしら。


「ドリングなんてメイドに用意させればいいものを……」

「それに俺の話を聞きたいって……今日の主役はリノちゃんだっていうのに」

「お恥ずかしい。……でも、自慢の娘ですよ」

 ウィードとジオ様、お父様のそんな会話が微かに聞こえてきた。


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