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転生チート令嬢は究極に料理が出来ない。  作者: 亜野朱
第1章 転生チート令嬢は普通じゃない。
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私達お友達じゃない♪

 ガムラキ村への慰問から2日後、私は庭作業中のラスに愚痴をこぼしていた。ラスは作業中の手を止め、爆笑していた。

「もう!笑い事じゃないんだってば」


 ジャイアントオークキングを倒してから3日程はガムサキ村に滞在したのだが、3日間ほぼ私の行くところ行くところ人だかりが出来た。

 討伐の翌日は念のためダンジョン入口付近の調査を行い、その翌日は怪我をした人達への慰問。まあ、慰問っていうか折角の機会だからと思って会う人会う人回復して回ったんだけど、骨折程度の怪我の人を軽く全快させたら聖女扱い。

 そして最終日は今回の件を称えた祝賀会と私の誕生日前祝いを兼ねたお祭りが開かれたり。今まで屋敷の外に出なかった箱入り娘としては、魔法使うよりもイベント続きで疲労困憊でした。


「いや、笑えるだろ。本当お前って規格外のお嬢様だな」

 ラスが目に涙を浮かべながら笑っている。

 そんな面白いことかね?

 火炎球については、お父様の書斎で読んで独学で勉強したことになっている。いつかお父様と同じように、領内の人々の暮らしを守りたいと勉強に励んだ、という設定になっているから、なんか妙にガムサキ村の人々に感動された。

 ちなみに、同じ話を簡単にチェシルにしたら、顔を真っ青にして「リノ様がそんな危険な目に……」って泡を吹いて倒れたので詳しく説明することは辞めた。まさかそんなに心配されるとは思ってなかったわ。


 結局ガムサキ村のダンジョンはあれ以来魔物がダンジョンから出てくることはなくなった。

 どうやら、比較的強い所謂親玉クラスが倒されたことで、配下についていたオーク達がダンジョン奥へ戻っていったらしい。ダンジョンから出てくるどころか、1時間程ダンジョンを探索してもオークどころかもっと低レベルなモンスターにも出会わなかったことから、ダンジョン内の魔物はかなり奥深くに逃げ帰ったのだろうと推測された。凶暴化したジャイアントオークキングだったし、ダンジョン内に複数のジャイアントオークキングが沸いて縄張り争いからダンジョンから出てきたのならまだまだ余談は許さない状況だったらしいけど、恐らくそういう訳ではなさそうと言うことで、しばらくはガムラキ村も落ち着きそうだ。

 寧ろ、下手したらあのジャイアントオークキングがあのダンジョンの主だった可能性が高くて、ゆっくりダンジョン探索が出来るかもしれないという話もでていた。


 あー……

 でも、違うか。

 落ち着いてはいないか。


 完全にガムサキ村や警備団は私のファンクラブみたいな感じになっちゃったし、カンデ村長が私の銅像を広場に建てるとか言い出した時は焦った焦った。お父様の銅像作るよりも先にその娘の銅像作るとか有りないでしょ。

 もうリノ様フィーバーでガムサキ村は大変なことになってる。

 私の滞在中の3日の間に、私を見るための見物客が別の領からも来ていたと言うし。


「まあ、良かったじゃん。これでお前がこの領を継ぐって言っても誰も文句言わないぜ」

 ラスは目尻の涙を人差し指で拭って言った。

 そんなに泣くほど面白い話じゃないと思うんだけど。

 それに、継ぐ、かー。一人っ子だし、行く行くは私がレングランド領を管理しなきゃいけないんだろうなとは思っているけれど、今は正直お友達沢山作ってワイワイ楽しく遊びたい。

「きっと今度の誕生日会はお前大変だぞ?他の領からも客人来るんだし、更にフィーバーになったりしてな」

「うわぁ、もっと厳かに誕生日を祝って欲しいわ」

「流石に15歳の誕生日で厳かってことは有り得ないだろ。お前……あー……一応、その……令嬢だし」

 大事な15歳の誕生日なんだから、ある程度のパーティーになることは予測している。でも、ガムサキ村のようなあんなフィーバーっぽい誕生日はごめんだわ。


 それにしても、なんだろう。

 時々ちょっとラスが余所余所しい感じがするのよね。

 親しい男友達って感じなのに、なんか距離を感じる。


「まあ、これでお前も一人前って認められるわけだし……」

 おお、わかった。たぶん、ラスの二人称のせいだ。

 私はラスの言葉を不満そうに遮った。


「なんか、その『お前』っていうの気になる-」

 頬杖をついてラスを見る。ラスはバツが悪そうに私から視線をそらし、慌てたように庭作業の手を早めた。

「いや、だってよー。なんかお前と話してるとお嬢様って感じしねーし、リノ様とは言いづらいっつーか……」

「いいよ、様付けなくて。同年代じゃない」

 折角同年代なんだし、私も腹を割って話せる友達が欲しい!

 本当はチェシルとそういう関係になりたかったけれど、年下ということもあり、なんだかチェシルは私の事を時々憧れの眼差しで見てくることがあって全然様付けを辞めてくれる感じはない。呼び捨てWELCOME!って感じなのに、強くお願いしたら何故か泣かれそうになったのよね。あれ以上はもう言えないわ。


 でもラスは違う。私は諦めない!


「マーガル様達に言いつけるんじゃねーだろうな」

「してどうするのよ。そもそも呼び名気に入らなくて言いつけるなら『お前』呼びの時点で言いつけてるわよ」

「……それもそうか」

 雇い主へのマナーがなっていないと首になるとでも思っているのかしら。たかが呼び方でお父様もそこまでしないでしょ。


「わかった。んじゃ今度からは名前で呼ぶわ」

 私とのやり取りが面倒くさくなったのか、ラスは黙々と作業しながら言った。視線合わせる気ナッシング。なんかもうどうでもいいという態度ですね。さっきまでの和気藹々な態度と違うじゃない?

「えー、今度って何よ。今呼んでみなさいよ」

「はあ?お前何言って……」

「あ、またお前って言ったー」

 私は鼻先がラスにつくかと思うくらい、顔を近づけてラスの目を見た。

 ラスは言葉につまって顔を赤くする。


 ん?

 んん?

 顔が赤くなって、というか、耳まで真っ赤になっちゃって可愛いとこあるんじゃない。

 なんだなんだ、ラス君は実は純情君か?クラスの女の子の名前呼べないタイプか?そっかー、てっきり粗野で物怖じしないタイプかと思っていたけれど、実は恥ずかしがり屋さんだったのね。


「ほらほら、どうしたどうした?呼んでみなさいよ」

「お前、本当タチ悪い……」

 とうとうラスは顔を私から完全に背けてしまった。

 ちょっとイジメすぎちゃったかな?

 ちょっとだけ見えるラスの真っ赤な耳を見てちょっと反省する。

 これ以上調子に乗って友達無くすのは嫌だし、丁度チェシルがお茶を用意したと私を探している声も聞こえてきたし、この辺りにしておこうか。


「じゃあ、私部屋に戻るから。次はちゃんと名前で呼びなさいよね?」

 今日は私が詰め寄っちゃったから余計に呼びにくくなっちゃったかもしれないし、日を改めてこれから親友になっていこうじゃないか!

 私はラスにそれだけ言い残して庭からチェシルの方へと駆けだした。

 ふふふ。今日のおやつはなにかなー。




「ったく、あいつ。自分の顔見たことあんのかよ」


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