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転生チート令嬢は究極に料理が出来ない。  作者: 亜野朱
第1章 転生チート令嬢は普通じゃない。
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魔法って勉強して取得するものだったとか知らない。

「子ども達の足だからそう遠くは行けないと思ったが、流石に1日以上経っているしな。失敗したな、もうかなり暗くなってきた」

 ラスの言うとおり、日が沈んだのか薄暗かった森はほぼ真っ暗な状態になっていた。

 そりゃ一昨日村出ているんだから大人の足とはいえ、2時間程度じゃ追いつかないか。迷子になってどこかに座って休んでいてくれないかなー、おなかすいてどこかでじっとしててくれないかなーって期待していたけれどそうはいかないか。

「どうします?村に一度戻るならそろそろ決めないと」

「は?子ども達どうすんだよ」

 私に対して提案するシオンにラスが言い掛かる。

 身内の事で熱くなっているラスには、冷静なシオンの意見は冷酷に聞こえるんだろうなあ。


「ごめんね、シオン。私はもう少し進んでみるわ。子ども達の足跡の光も最初より光が強くなっているみたいだし、近づいてはいると思うの」

 あ、でも、シオンもウィードも部外者なわけで、これ以上付き合ってもらうのは悪いか。早めに戻って貰った方がいいか。

 私がそう思ってじゃあ、と口を開いたが、シオンの溜め息によって話を遮られた。

「やれやれ。リノがそう仰るならば進むしかないですね」

 シオンはそう言うと右手を差し出すように広げた。シオンの右手からは掌大の光の玉が浮かび上がり、周囲を照らす。

 真っ昼間の広い明るさとはいかないが、街灯でも立っているかのような暖かな明るさがある。その明るさの下で足跡もくっきり光って見える。

「へえー、シオンも補助魔法使えたとはねえ」

「街の巡回や外交上必要な下位の魔法を少々っと言ったところですよ。リノほどの魔法は使えませんし、申し訳ないですがそんなに長時間は持ちませんよ」

 いやいや、ご謙遜を!

 十分今この時に必要な魔法じゃないですか!寧ろ!

「え、私その魔法知らない」

「は?」

「え?」

 シオンとウィードが急に足を止める。おいおい、急いでいるんだから来るんだったら止まるんじゃない。

「下位の補助魔法ですよ!?どう考えたって、リノが使っていた追跡や振動防止、体力増強、持久力増強、加速度の方がレベル高いでしょう?」

 先を歩く私にシオンが追いついて説明してくれました。いやー、知らなかった知らなかった。

「魔法って順番に覚えていくもんなの?剣技みたいに練習していたら自然に身につくものじゃないわけ?」

 一番魔法に縁がなさそうなラスが興味を持ったみたい。

 正直、魔法も剣技も自然と身につくものだと私も思っていたわ。火炎球だって適当にお父様の本読んで覚えたくらいだし。

「剣技は体で覚える側面が強いですが、魔法は理を知ってイメージをし体感するというものでしょうか。理やイメージが基本となっているので、下位の魔法はその基礎ということになります」

「基礎の下位が出来なければ中位も上位も形にならないわけだから、魔法使う者は基礎をしっかり覚えるってわけ」

 シオンとウィードがラスに説明する。

 そういう知識があるってやっぱりちゃんとした要人っぽいなあ。

「……お前も使えるってことかよ」

 ラスが面白くなさそうにウィードを横目で見る。

「ご名答。俺は補助じゃなくて攻撃系専門ですがね。小さい頃から父親に攻撃魔法の専門の家庭教師つけられたし」

「攻撃とはジオ様らしい。私も補助魔法の家庭教師に教わりました」

 あー、そうなんだ。みんなそうやって覚えたんだー。

 3人の視線が私に集中しているような気がする。あれだよね、お前はどうなんだって話だよね。女神が適当に与えましたなんて言えるわけないし。

「な、なんとなく、使えた?みたいな?お父様の書斎の本で読んだ、とか?」

 驚いた顔のウィードと呆れた顔のシオンの横でラスがゲラゲラ笑っている。

 仕方ないじゃない。必要とした時にその魔法が使えたってだけで私だって自分が今何を使えるのかとか全然分かってないわよ。お父様もお母様がなまじ私が魔法を使えるから家庭教師なんてつけてくれなかったし……まあ、つけてもらっても勉強したかどうかは別だけど。


「本当、規格外ですね。確かにリノでしたら下位魔法は教科書を読めば使える気がします」

 本当、女神のせいで規格外ですみません。

「教科書かー。あ、シオン。その明かりって炎?」

「いえ、光なので炎とは違いますね」

「そっか。なら安心して使えるかな」

 シオンが不思議そうに私を見ている。

 聞かれたシオンには分からないことだよね。炎系だと『料理が出来ない』スキルが影響して調整できないから大変なことになりそうかなって思っただけですから。

 一般の人にはそんな心配ないよねえ。


「ラスも勉強したら使えるんじゃない?」

 なんの気なしに言った私の言葉は不躾だったと思う。

「勉強するだけの生活費の余裕があればな」

 そうだよね、じゃなきゃうちに庭師として働きに来ないもんね。もう、私ったらなんで余計な事言っちゃうんだろう。

「あ、でも、私みたいに勉強しなくてもなんとなく使える場合もある、し?」

 すっごい言い訳。

 苦しすぎる言い訳だわ。

「ばーか、お前と一緒にすんな」

 ラスは私の頭を軽くこつんと殴った。


 ねえ、ラスは本当は勉強したかったかな。

 屋敷に来なければ、来なくて済むなら、あの村で楽しく過ごせていたのかな。

 ラスの顔からは全然そんな事を読み取る事が出来なかった。


 言葉に詰まってからたぶん2,3分だったと思う。

 それは突然やってきた。

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