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転生チート令嬢は究極に料理が出来ない。  作者: 亜野朱
第1章 転生チート令嬢は普通じゃない。
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大変!村の子ども達がいない。

 ファジャナオ村に付いたのは夕日が沈む前だった。

 ガムサキ村よりももっと素朴で、ぽつんぽつんと建ったログハウスのような家はあちらこちらに修復の後が見えた。

 村を囲む薄い木の板には、等間隔で聖印の紙が貼ってあり、一部破れているところも見受けられた。

 特に広間や通路といったはっきりとした境目はなく、荒野に現れた家々といった感じだ。


 ラスの話では村の奥に野菜や作物を作る畑があるらしい。また、更に奥には湯気の立ち上る泉まであるという。

 ん?


「それって温泉じゃない?」

「おん、せん?なんだそれ」

「あー、えっと。体洗ったり、温めたりする場所?」

「まあ、そうだな。大抵みんなそこで水浴びしてるし」


 なんとゆーことでしょう。

 ファジャナオ村には温泉があったのです。

 いやー、これ上手くやれば観光地に出来るんじゃない?

 今は女子ども老人しかいないけれど、集客できればかなり村の経済周りと良く出来ると思うの。

 まあ、そのためにもまずは居なくなっちゃった子ども達を助ける必要があるんだけどさ。


「まずは村長のところに挨拶にいこう、こっちだ」

 先を歩くラスの後ろで、私とウィードとシオンはキョロキョロと周りを見ながら付いていく。どの家もこれと言って特徴はないため、迷子になりそうだ。

 まだ日も沈んでいないというのに、外には人気はしない。

 廃墟と言われてもおかしくはないくらいだった。


「村で一番大きなこの家が村長の家だ」

 ラスがそう言って一件の家のドアの前に立つ。

 う、うん?大きいのかな?さほど大きさ変わらないように見えるけれど。

 ラスは私達のことには構わず、村長の家をノックする。

「ラスです。戻りました」

 特になんの返答も待たずにラスが家の扉を開けると、すぐにそこは土間のようになっていて、奥にロッキングチェアに座る老婆の姿が見えた。その人物が誰かは知っている。この間私の誕生日会にも来てくれたファジャナオ村の村長さんだ。


「早かったね」

「おばさん達がマーガル様のお屋敷にきてすぐに戻ってきました」

 そう言うと、ラスは私達を村長に紹介してくれた。

「ファジャナオの村長ウルバ様。先日は屋敷までおいでいただき有難うございました」

「リノ様。こちらこそ、こんなことに呼んでしまって申し訳ありません」

 ウルバ村長は、そう言うとロッキングチェアから立ち上がり、曲がった腰を更に小さくしてお辞儀した。ゆっくりとした口調の中にちょっとだけ焦りが見える。それもそうだろう。村の婦人達に領主の元に嘆願に行かせて領主の娘が来るなんて、普通じゃつじつまが合わない。

 せめて役に立たない小娘だと思われないようにしないと。


「いいえ、領内の問題は私達レングランド家の問題です。父からもずっとそう教えられてきましたし、今日はその責務を私が果たしたいと思って参りました」

 ウルバ村長はそんな私を両手で拝みお礼を言う。

 まだ何もしてないんだからお礼言われるのって変な感じがする。


「リノ、まずは状況の把握と整理を行いましょう」

 シオンが冷静にそう助言をくれる。

 そのとおりね。私達はウルバ村長の話を聞き、また破れた聖印の様子を見て回った。


 ウルバ村長の話はこうだった。


 ここ数日、日が沈んだ後に村の外の森の中で複数のアンデッドの目撃情報が相次いだらしい。

 たまに魔物が現れるのは日常茶飯事の話だが、複数のアンデッドというのは今まで経験もなかったため少し気味が悪いと思っていたという。

 念のため、村にいつもよりも多く聖印を張り、村人にも日が沈んでからは家からなるべく出ないように指示をしたという。

 日中はそれぞれ畑の仕事や家の仕事を行い、夜は聖印の張られた村の自分の家から外出しないようにする。聖印に守られてきたこの村は、常日頃そうやって魔物を対処し生活してきた。

 しかし、今回は違った。

 夜が明けると、村の各家から悲鳴が上がった。

 寝ているはずの子どもがいないと言うとのだ。

 子どもの年齢は5歳から8歳までで男女5人。まだ小さいため村の外に出ることはほとんどなく、出ても村を囲う木の塀の側までだ。

 夜中にそんな小さな子どもが自ら家を、村を出るとは考えにくい。しかも、村を守る聖印のうち、畑側の一箇所は無造作に破かれてもいる。

 何者かに攫われ、何らかの事件に巻き込まれている気がして仕方ないと、屋敷に来た婦人達は村長に訴え、お父様に直談判に言ったというのだ。


「自ら家出、という線も決して消せはしないが、複数のアンデッドがいるならば連れ戻す必要があるな」

 腕を組み話を聞いていたウィードがそう考え込む。

「この村のガキはそんなヤツいねーよ。みんな一人で家族の生活支えている母親と暮らしてんのに、そんな母親困らせようなんて馬鹿なガキはいねー」

 ラスがさも当たり前のようにウィードに言い返す。


 ラスもチェシルもこの村の出身。

 2人とも、お母さんや家族と一緒に支えながら生活してきたのかな。


「闇雲に探すのは得策ではありませんが、アンデッドがいるというならば日が落ちる前に事を急いだ方がいいですね。村の外を探しますか?」

 シオンの言うことは最もだ。

 何をどう探したらいいのか、この村で私が何を本当にすべきなのかは全然分からないけれど、今はとにかく子ども達が心配。逆かな、子ども達が心配で頭が働かない。

 屋敷にきた婦人達、子ども達のお母さんも気が気でないはず。


「村の外周りの調査をします。ラス、案内お願いね」


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