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転生チート令嬢は究極に料理が出来ない。  作者: 亜野朱
第1章 転生チート令嬢は普通じゃない。
15/29

馬車も人の心も思ったより揺れない。

 私達は早速準備をしてファジャナオ村へ馬車を走らせた。

 アンデッドが出たという話から、この間のガムサキ村みたいに魔物と遭遇するのは避けられなさそうだったので、服も昔お母様が宮廷看護師として働いていた時の戦闘用の服を借りた。

 首回りは詰め襟で胸元を守るためにちょっと厚い生地のチャイナ服みたいな長め丈の赤いシャツ。パンツとか履かないでこれだけ着たらかなりセクシーな感じがする。お母様は回復専門だったし下はロングスカートを履いていたようだけど、私は回復専門って訳じゃないし動き回るのに楽な服がいいので、中にショートパンツが付いた黒のロングスカートを履くことにした。サイドにスリットが入っているし、見た目以上に動きやすい。

 赤い装飾が施された黒のショートブーツは、以前タッセルさんが提案してお父様が用意してくれたもの。タッセルさんに付きまとって屋敷敷地内の山を駆け回るのに、ヒールのパンプスじゃ危ないからと提案してくれたのだ。これがタッセルさんの見立て通り固すぎず丁度いいのよね。

 とはいえ、宮廷看護師の服。警備団の人達が着ていたような実技優先な動きやすい服とは違う。


 ラスは普段どおりの服にタッセルさんから貰った深緑の上着を羽織っていた。そしてやっぱりタッセルさんから借りたという斧。1メートルに満たないこの斧はタッセルさん曰く特別な斧だと言う。ぼろ切れを刃の部分に巻き付けてあるから、どんな斧なのかはよく分からないけれど、そもそもラスってば斧使えるようになったのかしら?


 シオンとウィードはうちに来た時のままの格好。

 紫色の服のシオンと、青の服のウィード。まるで国王様にでも呼ばれているのかと思うほどの立派な格好。寂れたうちのファジャナオ村に行くには不向きな格好だわ。まあ、仕方ないか。本来は婚約の申し出に来たんだもん。

 ああ、なんて憂鬱なのかしら。


 私は事前に、馬車と馬にある魔法をかけておいた。

 馬車には揺れを軽減する魔法を、馬には体力アップや持久力アップ、速度アップを重ね掛けしておいたのだ。

 屋敷を出たのは昼過ぎ。ファジャナオ村までの距離を考えると、夕方前に到着するためにはこの方が効率が良かった。とはいえ、それらの魔法も女神がおまけでくれたスキルなわけで、そこまで有能ではないと私は思っている。

 それにも関わらず、ラスだけでなくウィードやシオンも私の魔法に驚いていた。

 ウィード曰く、魔法の重ね掛けが可能なのは国王都市の騎士団の中でも限られた人数しかいないのだとか。そもそも魔法の発動にかなりの体力や集中力が必要とされるから、複数魔法を発動させて普通に動けるなんて珍しいらしい。

 シオンも私と同じような補助魔法と呼ばれる魔法の心得があるらしいけれど、発動可能会数に限りがあるから普段は使わないのだとか。

 発動可能会数かあ、全然気にしたことなかったや。


「ところで、なんで庭師が同じ馬車に乗ってるの?」

 4人乗りの馬車で私の前に向かい合わせで座っているウィードが機嫌が悪そうにそう言った。

「同じ場所に行くわけだし、いいじゃないですか」

「あんたらは本来村に行く必要ないわけだし、そもそも自分が乗ってきた馬車に乗れば良かったんじゃないっすか?別にリノの馬車に乗る必要なかったでしょ」

 折角角が立たないようにフォローしてあげた私を、隣に座っているラスが即座に台無しにしてくれた。むむむ。

「リノの魔法の出来を是非体感してみたいと思いましたからね。それよりも、庭師の君が主であるリノを呼び捨てとは感心しませんね」

「リノがそう呼べって言ったから従順に俺は従ったまでですが?」

 シオン、すごい笑顔なのに笑ってない。ラスもなんでそんなに喧嘩腰なのー!?


「ほら、だってラスも15歳で同い年なんです。だからなんだか様付けされる方が変な気がして……ウィードもシオンも同じじゃないですか?」

 慌てて言い繕ってみたけれど、ウィードもシオンもなんだか納得がいかない顔してる。

「へえー、ラスも同じ15歳なんだー。あまり俺と同じ感じがしなかったから気付かなかったよ」

「ウィード、仕方ないですよ。ラスは私達とは仕事が違うのですから」

「はっはっは。ウィードやシオンみたいにぬくぬくと育っているわけじゃないんでね。そりゃ違うでしょうよ」


 男3人の会話。


 そっか。


 なんていうか……


 良かった、3人とも気兼ねなくお喋りできているじゃない。ラスもウィードもシオンも名前で呼び合って、やっぱり同性だから仲良くなるの早いのかしら。

 今まで屋敷の中だけの生活だったし、男の子達がどんな会話したりどんな関係なのかもよく解らなかったけれど、よく連んでいるクラスの男子達っぽい感じがしてくる。


 きっとラスはファジャナオ村が心配で気が気でないはずなのに。ウィードとシオンがそれを紛らわしてあげる話し方をしているんだ。いいなあ、私もやっぱり婚約うんぬんよりもこういう親友が欲しいわ。


「なんだ、もう3人仲良いじゃない」

「は?」

「え?」

「どこが?」

 くすりと笑う私に3人が一斉に声を上げる。

 本当、タイミングもあっちゃって、ちょっとリノさんとしては妬けちゃうわ。


「何にやにやしてんだよ、気持ち悪い」

「ごめんごめん。大丈夫、村に着いたらちゃんとするから」

「ああ、また主に対してそんな言い方を……」

「やっぱりラスは他の場所に乗るか、御者すべきだろ!」


 小さな馬車の中で立ち上がって言い合いが始まる。

 うーん、馬車に揺れ軽減の魔法かけておいて本当によかったなあ。

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