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転生チート令嬢は究極に料理が出来ない。  作者: 亜野朱
第1章 転生チート令嬢は普通じゃない。
13/29

婚約とか有り得ない。

 チェシルに呼ばれて私は応接室へ向かった。

 お客様がいらっしゃっているということはいよいよ私の外交デビューってことかしら?

 誕生日会もある意味外交だったけれど、主賓ってこともあってお客様の方から挨拶されたり、お父様が紹介してくださったりしたから、なんだか仕事っぽさは感じなかったのよね。

 私としてはもうちょっとこう……


『今ご質問のあったレングランド領の経済改革についてお答えします』

とか、

『その件でしたら既に数値が出ており、このような結果が見込めます』

とか、


 バシっと格好良く領の管理とか外交に関わって行きたいと思うわけですよ。

 まあ、誕生日会ではウィードとシオンの高貴な振る舞いを勉強させられただけって感じだったし。


 さて。15歳初の外交はなんでしょうね。

 領内の村への訪問?他領への何かの支援とか依頼とか?なんにせよ、このレングランド領のため、お父様のため、頑張らないと。ああ、外の世界が私を呼んでいる気がする-。

 私は早る気持ちを抑えつつ応接室の扉を軽くノックし、ドアノブを回した。


「お父様、リノです」

 私はスカートの裾を摘みお辞儀した。

 ゆっくり顔をあげると、応接室の左右の革製のソファに座っていたのはウィードとシオンだった。


「リノ、先日はありがとう」

「ご機嫌よう、リノ」

 私の左手側ソファに座っていたウィードが立ち上がり挨拶すると、ほぼ同時に私の右手側ソファに座っていたシオンも立ち上がり挨拶する。何、そんな息ぴったりな程仲良しだったわけ?

「こちらこそ。ウィードもシオンも先日はわざわざありがとうございました」

 いいな。これがお友達ってやつね。15年間(正確に転生してからだから5年か)屋敷で一人過ごしてきた私に、ついにお家に来て貰えるような同年代のお友達が出来ましたよ!

 ああ、でもどうしよう。立場的にどういう遊びをしたらいいか分かんないや。

 この世界の私達年代の子ってどんな風にしてお友達と遊ぶのかしら。ラスとは畏まった感じなく気軽に遊ぶことができる感じだけど、こういう高貴なお友達とはどうしたものか。

 あ、いやいや。待てよ。ウィードとシオンだからやはりここは外交か。

 外交ならば親しき仲にも礼儀あり。ちゃんと対応して何が領のためになるかを考えて受け答えをしないとね。


「リノ、先程マーガル様にもお話しましたが、今日はお願いがあって参りました」

「おい、シオン。先にリノに話しかけたの俺だが?」

 シオンとウィードが言い争う。

 あらあら。喧嘩する程仲が良いっていうけれど、大丈夫、私二人ともお友達だと思っているから、ちゃんと二人の話聞きますよー。

 そんな二人を前に応接室の中央に置かれたソファに座っていたお父様がこほんと咳払いをする。

「ウィード君とシオン君がリノに話があるというんだが……」

 少しそう言いながらバツの悪そうな顔のお父様。

 え?

 私この間の誕生日会で二人に粗相しちゃった?そんなつもりも覚えもないんだけど。

 あーでも、領主の娘としての立ち振る舞いが成っていなかったとか。あれでも頑張ったつもりなんだけどなあ。

 折角お友達になれたと思ったのに、これで絶交とか言われたらどうしよう。ま、まさか、失礼な態度を取ったことによる慰謝料とか要求されちゃう!?外交デビューどころの話じゃないじゃん!一般常識や社交を学べとか言われちゃうのかしら!?


「マーガル様、こういう事は自分で申し上げます」

 脳内パニックの私を余所に、シオンがそう言い改めて体を私へと向ける。ウィードも慌てて私に話しかける。


「私と婚約を交わして頂きたい」

「俺と婚約を交わしてください」


 …

 ……

 うん?


 二人が同時に喋ったから言葉が混ざって変に聞こえたのかしら?混ざって『こんにゃく』とか聞こえるって私やっぱり1週間缶詰で疲れているのかしら?それとも、この世界の慰謝料に変わるものが『こんにゃく』なるものとか?

 二人の言葉が十分理解できないで思考停止している私に変わってお父様が話し始める。


「15歳になり誕生日会も行ったことだし、婚約の話は近かれ遅かれ出てくるとは思ってはいたが、まさかこんなに早く来るとはなあ」

「あら、結構なことじゃないですか」

 部屋の隅に待機していたお母様がゆっくりと歩き、お父様の横に立つ。

「すぐに結婚する話ではないですし、15歳で婚約なんておかしな話ではないですよ?」


 結婚?

 婚約?


 は?何の話?


「俺も父さんも国王都市との接点もありますから、俺とリノの婚約の暁にはこのレングランド領にも十分な恩恵をお約束できます」

 ウィードがお父様お母様にそう言うと、振り返るようにして私に微笑みウインクした。

 あ。誕生日会でみたやつだ。

「ウィードはガジェーゼの次期領主だろう。マーガル様、私にはウォーストの領主の座はありません。リノとの婚約の際はウォーストから離れ、レングランドの領主となられるリノを支えていくことが出来ます。もちろん、ウォーストとの友好もこれまで以上に固いものになることでしょう」

 シオンもお父様お母様にそう説明した後、私に振り返り微笑んだ。


 い、いや?

 いや。待って待って。

 私が欲しかったのはお友達であって婚約者じゃないってば。思いっきり譲歩してもまだ出会ったばかりでよく知りもしないで、なんで一気に関係すっとばして婚約とかそんな話になるわけ!?

 わからん。高貴な人の考えることって分からん。

 お母様はおかしな話ではないって言っていたけれど、どう考えてもおかしな話でしょ。


 もしかしてあの女神、転生する時になんか変なものつけた?


 お母様がにこにこと微笑む横で、お父様は大きな溜め息をつく。

 ここはお父様が何か喋るわよね?それとも私のことだし私の発言を待ってる?


 発言を譲り合って静かになった部屋に、嵐がやってきたのは直ぐのことだった。


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