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いつもと違う駅

作者: 餡ころ餅

 私にはいつも使っている夜見駅がある。都会より離れた少し田舎のほうにある駅で降りてすぐにシャッターが閉じられた寂れた商店街が見える。正直に言うと少し不気味な場所だ。だが駅員はいるし改札も動く、駅としては運営されていて使っている人も見える。不気味な点を除けば普通の駅だ。


 ある日、仕事場から駅につき休憩しようと近くにあった椅子に座る。日頃の疲れから椅子にもたれかけたまま寝てしまった。

 

 椅子から落ちた衝撃で私は目を覚ました。まだ真夜中なのか空は暗く駅の照明がまばらについているだけであった。家に帰宅しようと改札へ向かうと駅員がいなかった、普段はにこにこしたおじいさんがいたのだがなぜかいない。そもそも駅の中に人がいてそのまま駅を閉めるなんてことはまずないであろう。私はその時点で違和感を感じ始めていた、私以外誰もいない、改札や自動販売機などの設備も動かない。ここで私は信じたくはないがいつもの駅ではない場所に飛ばされていると確信した。


 次に私はここがどこなのかカギになるものを探すことにした。周りの景色や駅の中に何かないと探しまわった、周りは暗く何も見えず駅の中にも何もなかった。携帯の存在を思い出した私は携帯を取り出し画面を見たが圏外でどこにもつながらない状態だった。何もわかるものがないと分かった私は意を決して駅の外に出ることにした。改札を飛び越え外に向かって走った。

 

 駅の外に出ることができた私は駅の名前を確認するために駅の入り口へと向かった。駅名には「夜見駅」と書かれていていた。いつも通りで私が使っている駅と同じ名前、同じ名前だが何か違う雰囲気を感じながらも駅の中に戻った。戻ってからしばらくするとアナウンスが途切れながらも電車が来ることを知らせていたその後電車がホームにつきドアが開いた、その中から小さな女の子が降りてきた。恥ずかしいと思いながらもこの場所について知りたかった私はその女の子に声をかけた。私の質問に女の子は「よるのなかにるはないよ」とだけ言って行ってしまった。言葉の意味が分からない私は電車に乗り込もうとしたがその瞬間この電車には何か危険だと感じた私は乗るのをやめた。やがて電車のドアが閉まり電車は走り去っていった。

 

 このまま解決の糸口が見つからない私は一度考えを整理するために椅子に座った。考えているうちにまた私は眠ってしまった。誰かに声をかけられて目を覚ました。声をかけてくれたのはいつも改札にいるおじいさんだった。気づけば日は昇り日付けは変わっていた、会社に遅刻し怒られた私はこれまでの遅刻や失敗で会社をクビになってしまった。現在は夜見駅で清掃員のアルバイトをしながら仕事を探している。時々、あの時の出来事を思い出しながら女の子の言葉の意味を考えていた。

 

 ある日、清掃用具をもって仕事を始めようとしたとき一人の女の子が話しかけてきた。「よるのなかにるはないよ」とあの時女の子が話したことと同じことを言ったのだ。そこで私は気づいてしまった。あの駅は「夜見駅」でるがないということは「よみ駅」つまりは黄泉ということだったのだ。女の子の言葉を理解してしまった私は凍り付きその場で気を失ってしまった。

 

 目を覚ました場所は駅の係員室だった。いつものおじいさんが心配そうに私を見ている。携帯をつけて時間を確認しようとしたとき着信者不明の電話がかかってきた。恐る恐るでてみると、女の子の声で一言「なんであの時電車にのらなかったの?」と。

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― 新着の感想 ―
[一言] お礼を言ったら、照れ隠しに罵るツンデ霊な女の子を幻視した。
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