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午後のお茶会

 フェリクスの側近候補を選ぶ午後のお茶会。

 この国の将来を担う有望な10歳から15歳の貴族令息が招待されている。

 フェリクスの婚約者候補として王子の隣で微笑みながら挨拶を交わし、会場を見渡せば。

 まぁ、いるよね。攻略対象キャラ。ほとんど王子の側近だったもん。


 このシナリオの攻略対象キャラは、やたらめったら多い。

 自分が設定したキャラをたくさん那波に描いて欲しかったんだろうけど。

 テストプレイは苦行だったな。どのキャラルートでも攻略対象キャラが不幸に見舞われて自暴自棄になりヒロインに手を出し責任を取って婚約からの溺愛。

 何度既視感に見舞われたか。

 ただでさえ攻略対象キャラが多いのに、仮逆ハールートと真逆ハールートまである。仮と真の違いは隠しキャラが逆ハーメンバーに入るかどうか。


 そういえば、ヒロインに優しいシステムが一つあるな。

 バッドエンドは存在しない。

 意図的に全選択肢を外して好感度を下げまくっても、『学院卒業までに誰とも婚約できませんでした』で終わり。

 追放とか投獄とか処刑とかヤンデレ監禁とかは無い。

 でも、この世界の現実を考えると、魔力無しに等しいから生活能力皆無のヒロインは、お金持ちと知り合える学院入学のチャンスを、『一生の金づるゲット』として結果を出せなければ人生が詰む。

 ヒロインにとっては、在学中に生活の面倒を見てくれる婚約者を獲得出来ないことはバッドエンドだろう。それに本人が気付いているかは知らないけど。

 那波が描いたイケメンにチヤホヤされたいとか、浮かれてゲーム気分でいると、卒業後には地獄が待ってるんだけどね。

 やめよう。なんで自分を殺した奴の心配をしなきゃならないんだ。


 会場内の攻略対象キャラを、そっと観察する。


 脳筋属性、近衛騎士団長の息子カイル。10歳。

 脳筋属性に設定されているけど、この世界の普通の人間だから魔法をバリバリ使える魔力持ち。スチルでも、剣と魔法を自在に操りヒロインを守るシーンがあった。

 とても賢い飛竜を飼っていると自慢されたので、近い内に見せてもらう約束をした。


 知的眼鏡属性、学院理事長の息子ルーク。10歳。

 お約束でツンデレキャラ。

 の設定だったけど、私とフラウには最初からデレデレだった。「天才と会えて嬉しい」と頬まで染められた。

 スチルでは氷魔法ばかり使っていたが、この世界に見た目や性格で使用出来る魔法の属性が制限されるという現実は無い。

 魔法は魔力に応じて威力が変わり、集中力に応じて精度と発動時間が変わる。学習で習得するので、頑張り次第で好きな魔法をいくらでも使えるようになる。

 きっと彼も様々な種類の魔法を使いこなすようになるだろう。

 王都に居る間、暇な時には彼に勉強を教える約束をさせられた。


 チャラ男属性、魔導師団長の息子ユアン。10歳。

 学院では常に複数の女の子を取っ替え引っ替え侍らすスチルがあった。

 本当にチャラい下ユル野郎なら、いくら有能な魔導師でも次期国王の側近になれるわけが無い。

 側近に選ばれるなら、学院でチャラ男ぷりを発揮するのには何か理由があると思う。

 とりあえず、今現在、彼はチャラ男の片鱗すら見せていない。

 魔法の習得を始めたいから良い教師に心当たりが無いか訊いたら、自分と一緒に父親から習えばいいと誘われたので、厚意に甘えることにした。


 弟属性、諜報部門長の息子ハイド。10歳。

 学院に入る頃には暗殺者として活躍中。

 見た目は可愛いけど、スチルではヒロインを守るために魔法で敵の頭吹っ飛ばしたり片手で首を切り落としたりする。全年齢向けで書けと木之内から言われていたはずだが、那波の描く残虐シーンは熱狂的なファンがいるので描いて欲しかったんだろう。

 私とフラウが足音も気配も立てないからと、弟子入りを志願されたので受け入れた。


 腹黒属性、外交官の息子ニール。10歳。

 常に笑顔で誰にも本心を見せない。とか奴は口頭で言ってたけど、設定ではないからシステムに反映させなかった。

 王子にまで本心を見せずに薄ら笑いを浮かべてる男を側近にしたりしないと思う。

 スチルでは含みのある笑顔でヒロインをナンパする男を牽制していた。

 外交官の息子だけあって外国の情報に詳しいので、熱心に話を聞いていたら、貴重な資料を見せてもらえることになった。


 オネエ属性、芸術庁長官の息子レイ。10歳。

 学院ではオネエ言葉でクネクネしているけど中身は男らしくて怪力、とされていた。

 スチルの台詞もオネエ言葉だったし、化粧もしていた。

 素手戦闘のスチルでは石の壁を破壊していた。

 現在、まだ化粧はしていないけど、フリルたっぷりの服を着て髪はレースのリボンで結んでいる。

 話してみると、女言葉を使うけどオネエという感じは無い。父親が留守がちで女系家族の末っ子だから、家では女の子扱いされてこうなってるらしい。

 泣きそうな顔で「私、変かな?」と訊かれたので、「別にそのままでいいんじゃない?」と返したら友達になった。


 木之内や那波とは学院に入るまで会えないらしいから、この場には居ないだろう。

 それにしても、三年間丸々ヒロインと過ごさせるために、不自然に側近候補全員10歳だな。


 ちなみに、乙女ゲームの攻略対象キャラ定番の『宰相の息子』はフラウなので、攻略対象にはならない。

 学院に入学したら、この学年だけ随分と綺羅びやかだろう。


 フェリクスは、この場に居る攻略対象キャラ全員とフラウを側近候補に選び、お茶会を閉幕した。

 側近候補全員を同い年から選んだことに、多少の不満は有りそうだったが、一応選ばれなかった令息達も大人しく帰って行った。


 友達もできたし、魔法習得の先生の目途も立ったし、外国の資料も楽しみだし、飛竜とか勉強とか修行とか、王都に居る間は退屈しなそうだ。

 満足して帰りの馬車に乗る私は、フェリクスとフラウが呆れたようにこちらを見ていることに気付かなかった。

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