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作ってみよう

 私がフェルの婚約者として悋気を起こしてアイリスに喧嘩を売れば外交問題になった。

 でも、私が個人的に、『友人を侮辱するという喧嘩を売られたから買った』ことを、ティアード王国側が外交問題として持ち出して来ることは出来ない。

 そんなことをすれば、アイリスは国際的に、『王女の身でありながら婚約者のいる外国の王子に言い寄ったのにセフレ以上になれない腹いせに母国の力を使う』惨めな女として有名になり、王族としては表舞台から姿を消さなくてはならない。

 ついでに憎たらしいスノウ・ディアマンテの国際的な評価も上がってしまう。

 外国の王女が権力ずくで婚約者を略奪しようとしたのに冷静な対応を貫き、友人を侮辱されたことのみに怒りを示した気高き公爵令嬢。

 というところだ。

 お耳の早い王妃様から、大層なお褒めの手紙をいただいた。


 アイリスをヨアヒムに任せて三週間ばかり経った。

 ヨアヒムの仕事は順調らしく、そろそろ仕上げると連絡が来た。


 その間、私が何をしていたかと言うと、いわゆる『魔道具』作りだ。

 この世界は生活必需品が魔力を感知しないと使えないんだから、もうソレ魔道具じゃないの? と思わないでもないんだけど、この世界に『魔道具』という物は無い。


 魔法薬はあるけれど、普通は『眠いと感じない』とか『疲れたと感じない』という、激務中の成人が服用する前世のドリンク剤みたいなもの。効果はドリンク剤の比じゃないし、用法用量は守るように国から指導されている。

 いかにもな『惚れ薬』とか『幻覚を見る薬』などは、非合法組織が密かに製造して闇市場に流すもので、所持販売は取締り対象だ。

 戦争時は『興奮する』ものや『痛みを感じない』ものや『凶暴性を増す』薬で人工的に狂戦士を作ったらしいが、戦争が終わると戦争に参加しなかった国々から非難轟々で吊るし上げられるので、使おうとする国は減った。


 で、錬金術師の作品には、道具の形をしているけど、この世界の違法魔法薬みたいな効果のものもあるから。

 その解毒薬を作るような感じで、効果を道具に付与すれば、解除用の魔道具が出来るんじゃないかなと。

 取っ掛かりは、王冠と首輪かな。


 ただ、その前に、他のものを作る必要に迫られた。

 精神干渉魔法の防御は、事情を知る全員が出来ないと困る。

 精神に直接干渉して来る魔法を使われる。という事実があることを知っても、常識の刷り込みが強いのか、この世界の人生しか知らない面々には防御魔法の組み立てが難しいようだ。

 それなら私が防御魔法を組み込んで魔道具を作る方が早いかと試しにやってみたら、前世で鉄瓶を作るよりは簡単だった。


 フェルの側近達にはエメラルドの入ったお揃いの貴公子らしい腕輪で。

 ハイドは私の影武者なので、私とお揃いのエメラルドのピアスに効果を付与した。

 リナには生活必需品を使える程度の魔力すら無いので、普通に作った魔道具では身につけても効果を発動しない。

 考えることもあり、おおっぴらに研究するために、魔法攻撃防御と解毒と治癒中程度プラス精神干渉魔法防御の効果を付与したゴージャスなペアの腕輪を国王様と王妃様に献上した。


 この世界の魔力無しの問題は、想像だけではなくリナを実際に間近で見ていると、相当に根深いものだと知ることができた。

 迫害はされないはず。と法律の勉強だけで思っていた自分は、現実を見ていないお嬢様だった。

 リナだけではなく、この世界の魔力無しの子供は、それを隠し切れなくなる10歳頃に、大抵が親から捨てられるか殺される。

 生活能力の無い10歳児が保護者を失った後に何が待っているか。


 今も僅かとは言え、魔力無しは生まれて来る。

 せめて魔力が無くても最低限の生活は送れる介助道具のようなものが作れないだろうか。

 魔法効果を付与した道具が作れるなら、『ありったけの善意と祝福を込めて』守るべき民を笑顔に導けるものが作りたい。


 腕輪を献上して、国王夫妻にそう願い出ると、学院内に私専用の研究施設を賜ることになった。

 研究費用は、王妃様が発起人となった福祉財団から出る。

 私の人生も役割も、学院卒業でエンディングではない。

 ヒロインのヒーロー達との会話回数は、既に条件を満たすだけカウントしている。

 錬金術師絡みの問題を解決しなければ、平和な卒業後なんて来ないけど。

 リナのヒロインエンディング後に悲惨な人生を用意させない手は打っておきたい。

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