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皆に話しました

 フェルが王宮に泊まる予定だったので、自分も今夜は王宮に泊まると国王様にも外務大臣にも告げていたアイリスは、朝まで寮には戻って来れない。

 国のトップに話を通して王女が泊まるに相応しいもてなしを手配させておいて、ドタキャンは出来ないだろう。


 夜会に錬金術師が現れた話をすると、フェルは「あんな女など投げ飛ばして駆けつければよかった!」と憤慨したが、デビュタント真っ最中の外国の王女をうちの王子様が投げ飛ばしたら戦争が始まる。

 フェルの位置からでは錬金術師の後ろ姿しか見えず、誰かが私に話しかけているけど側近が騒いでないから大丈夫だと思っていたそうだ。


 寮に戻り、フェルにはキースとヨアヒムを呼んで来てもらい、私はリナを呼んで、王族専用寮の私達の部屋に集まった。

 私が守るようにリナの手を引いているのを見て、キースとヨアヒムは険しく目を細めたけど、とにかく全員適当に座ってもらった。


 皆が穏やかではない視線をリナに向けるので、私はリナを隣に座らせてしっかり手を繋ぎ、後で質疑応答は受けるから、最後まで全員大人しく聞いて欲しいと頼んだ。

 全員の了承を受けて、私は話し始める。


 まずは今夜の夜会で錬金術師からの接触があったこと。

 一言一句違わず会話を再現した。


 それから、この世界の魔王の存在と役割。

 キースが魔王であること。

 『歪み』である『世界を渡る錬金術師』という存在について。

 錬金術師の『作品』の名前と効果。


 そして、錬金術師の『作品』が彼らに齎そうとする運命。


 そして、私とリナが錬金術師の『作品』によってこの世界に転生したことと、前世で私の友人だった三人が、フェルとキースとヨアヒムの中に組み込まれていること。


 最後に、この世界は私が前世で友人達と作った『ゲーム』でもあり、その強制力が作用していること。


 この世界に来たのが自分一人だったら彼らに打ち明けられたか分からない。

 どう説明しても理解して受け入れてもらえる気がしない。

 でも、私と同じ世界の同じ時間を生きた友人達が、私を助けるためにこの世界まで追いかけて来てくれた。

 一人じゃないということは勇気をくれる。

 それに、この世界に生まれてから共に過ごした大切な仲間達と愛する双子の弟は、私が彼らに嘘をつかないことを分かってくれている。


「やはり僕はスノウに人生を救われていたんだね」


 ニールがいつもの穏やかな笑みを湛えて言う。


「魔王も錬金術師も僕の知識には無い話だが、僕に実際起きたことも、先程の人間には有り得ない力を行使する男も現実だ。スノウが僕達に嘘をつくとは考えていない。世の中にはまだまだ僕の知らない真実が溢れているということか」


 ニールが納得したように頷くと、次はユアンが苦笑する。


「僕達が仕える王子様の中に、理解不能の性癖を持つ変態さんが同居しているのは複雑だけどね」


 ユアンの言葉に吹き出して、カイルがムムッと眉を顰める。


「俺はそれよりも、中身が男のリナの手をスノウが握ってる方が気になる」


 カイルの肩に手を乗せて、ルークがポンポンと宥める。


「それにヤキモキするのは変態さんと同居中のフェルの仕事だぞ?」


 ルークの言葉に大きく頷いたレイが、フェルに人差し指を突きつける。


「そうよ〜。たかが王女一人あしらえないようじゃ、正式に婚約してたって、誰にスノウを奪われるか分からないわよ?」


 レイの指の先でフェルが青褪めると、ハイドがニヤニヤと追い打ちをかける。


「僕は生涯をスノウに捧げて受け入れてもらったし? 誰かの結婚の『生涯の誓い』より早くスノウを手に入れちゃった」


 ハイドに打ちのめされたフェルに、フラウがトドメを刺した。


「いっそフェルを王女に差し出して、錬金術師の『作品』を回収する手もあるよね」


 何故か皆でフェルをいじめる集まりになっている。

 フェルが上手くあしらえずにアイリスとベタベタしていたことに、側近達は静かに怒っていたらしい。

 でも、10歳からしばらく小玉に体を乗っ取られていたフェルは、自分の意思で体を動かして女性と交流した経験が無いんだよ。

 私と会う前から私が好きで、会ってからも私が好きで、他の女性と交流したことも無くて。


 そして、小玉の知識にも記憶にも、『女性をあしらうのに役立つ情報』は皆無なんだよ!

 生身の女性に興味ゼロだからね!


 トドメを刺されて撃沈したフェルをしばらくじっくり眺めてから、ヨアヒムはおもむろに口を開いた。


「小玉が組み込まれている彼に女性を転がすのは無理だ。いずれやり方は覚えてもらうが、今回は緊急時だから俺がやる」


 ヨアヒムの中で苛烈な人生を共にしたせいか、日本で暮していた時には常時フル装備だった紳士仮面を、木之内は被ることが無い。

 怖い本性垂れ流しだ。


「どうするの? ヨアヒム」

「堕として吐かせて支配する」


 うわあ。もう取り繕う気が一切無い。


「簡単に言うが、できるのか?」


 疑わしげに問うニールに、ヨアヒムは無表情で答える。


「アイリスは『そう訓練されているだけ』の小娘に過ぎない。マニュアルから外れた事態に対応する能力は無い」

「この国でティアード王国の王女を強姦されると困るけど?」

「強姦などするか。勝手に惚れさせる」


 ユアンに警告されて、ヨアヒムの中の木之内が、誑し込みオーラを全力全開してみせた。


 うん。相変わらず容赦無くえげつない色気だ。

 コレに、16歳の小娘が抵抗できると思えない。

 商談用と下僕作成用と性的誘惑用で誑し能力を使い分ける木之内は、本気になれば無敵の支配者になれる。

 あまり本気にならないけど。


「王女に関しては、ヨアヒムに任せておこう」


 両手を上げて嘆息するフラウ。

 私も、これ以上の適任者はいないと思うよ。

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