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錬金術師の作品

 実際に『魔王の記憶』を見たキースと那波が落ち着くのを待って、私達は詳しく話を聞いた。


 この世界における『魔王』とは、『歪みと戦う者』。

 この世界の『歪み』とは、『世界を渡る錬金術師』という存在で、この錬金術師は、『ありったけの悪意と皮肉を込めて』造り上げた『作品』を、渡った時代、渡った世界にばら撒く。


 『世界を渡る錬金術師』とは、男であり女。

 名を変え、時を超え、世界を渡る力を持つ。

 世界を滅ぼすことは無く、『作品』により世界を歪める。


 ルークの悲劇イベントスチルには、『世界を渡る錬金術師』本人が登場する。


 ニールの悲劇イベントスチルに登場する『強力な惚れ薬』は、飲むと少しでも好意を持つ視界内の対象を無差別に殺して食べる、『食べちゃいたいくらい欲しくなっちゃう』ものだ。

 わざわざ好意を持つ相手に限定して効果が発動するのは、『全然好きでもない相手に惚れちゃう薬なんか飲まされたらカワイソウ』という理由らしい。


 レイの悲劇イベントスチルに登場する『燃え盛る燭台』は、『何でも燃やせる炎を灯せるステキな燭台』だ。

 この燭台の炎なら、石でも何でも燃やして火の海にすることも可能だろう。

 けれど、『消火できないと世界中を燃やしちゃうから生贄の数に満足すれば消える』らしい。


 カイルの悲劇イベントスチルに登場する『狂気の首輪』は、牛の魔物と馬の魔物が装着している。

 効果は、装着すると『誰の言葉も聞こえなくなって暴れ狂う』が、『死んだら正気に戻る』そうだ。


 ハイドの悲劇イベントスチルに登場する『スライムもどき』は、一見この世界のスライムに見えるが魔物でも生き物でもない。

 錬金術で造られた、『入れたものを何でも消化できるスグレモノ』で、一度中に入れたものは『消化するまで出せない』作りになっている。


 ヨアヒムの悲劇イベントスチルに登場する『覇者の王冠』は、頭に載せると『王者の黒のような見事な黒髪になれる』が、『覇者になるために死ぬまで殺戮を繰り返す副作用』がある。


 ユアンの悲劇イベントスチルには『作品』は登場しないが、おそらく未だ正体不明の邪教集団が信仰する対象が、『世界を渡る錬金術師』だろう。

 ユアンの悲劇イベントに、全年齢対象についての突っ込みくらいしか出なかったのは、『作品』や『錬金術師本人』により『普通なら有り得ない現実』が起こらないからだ。


 そして、前世の私の心臓を抉った『不思議な短剣』。

 この短剣で心臓を抉ると、『ステキな異世界ライフヘご招待』だそうだ。

 心臓を抉った体は死ぬし、心臓を抉れば当然痛いけど、『前の人生の時より優れた人物になれる特典付き!』で、『長生きするとは限らないけどね』らしい。


 奴が自分に使った『不思議な薬瓶』も、異世界に招待される『作品』だ。

 ただしこちらは、『悲惨な異世界ライフヘご招待』だ。

 使用した本人は眠り薬だと思い込むが致死の毒薬で、『眠るように苦しみ無く死ねる』けど、代わりに『良いことが一つも無い運命をプレゼント』される。


 どの『作品』も、使う人間には本当の効果は分からない。

 ただ便利なアイテムだと思って使い、『作品』に込められた錬金術師の悪意と皮肉には気がつかない。

 錬金術師の『作品』に関わると、周りの人々を巻き込んで、使用者の人生が歪む。


「私達は、錬金術師に『描かされていた』のかな」

「さぁな。そもそも奴がシナリオを『書かされていた』のかもしれない」


 何処がスタートで誰が最初に錬金術師の餌食になったのかは分からない。

 けれど私達はもう、錬金術師の悪意に満ちた『この世界』に現実として存在してしまっている。

 てことは、結局は全力で足掻く他は無い。


「まぁ、全部の悲劇イベントの本当の原因が分かって良かったんじゃない?」

「お前、いつもながらお気楽だよなぁ」

「やることは変わらないからさ」

「まぁ、そうだね」


 ヘラリと笑う私に、キースとヨアヒムもニヤリと笑った。


「小玉が君達の友人であることを、何より誇らしく思っていた理由が分かった」


 フェルが微笑んで言う。

 小玉、そんな可愛いことを思っていたのか!


「バラすな、って怒ってるけどね」


 バラしちゃうフェルも、いい性格してるよね。


 戦う相手は分かった。

 見えない敵より、やりやすい。

 錬金術師が何を考えているかは分からないけど、前世より優れた人物になる特典付きらしいから、やれるだけやってやるぜ!

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