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 ニールはクアトロス公爵家で生活している。

 ずっと耐えてニールを守って来た使用人達も、公爵は雇い入れた。

 切れ長で水色のニールの瞳に、底冷えのする光が浮かぶことも無くなった。

 ニールがいつも湛えているのは、穏やかな微笑。本心の見えない腹黒い笑顔でも、含みのある恐ろしげな笑みでもない。


「スノウがずっと僕を気にかけてくれていたから、二人とも僕の力になってくれたそうだよ」


 公爵が会いに来ても頑なな態度を崩せなかったニールに、フェルとフラウが助言したり相談に乗ったりしていたそうだ。


「私は、本当に気にかけていただけだよ。相談に乗っていたのはフェルとフラウだし、お祖父様との関係改善に向けて実際に頑張ったのはニールだよ」

「それでも、スノウが傍にいてくれたから、僕は頑張ることができた」

「ニールが、人の話に耳を傾けられる柔軟な心を持っていたから。だから放っておけなかった」

「それ、初めて言われた」


 放心したようにニールが言葉を続けた。


「僕はプライドが高くて人の話を聞く価値も無いと思ってるんだろうってよく言われてたから」


 本当に、前世の私と似ている。

 私も、彼らと出会う前はよく言われていた。


「ニールは、もう大丈夫だよ。フェルやフラウだけじゃなくて、私や、他の友人達の言葉もちゃんと聞くじゃない。広く見聞を求められる資質は、外交の仕事を担う人材として頼りになるよね」


 私が言うと、ニールは涼しげな水色の瞳を細めて優しく笑った。


 今日はフェルに会うために王宮に来ていたけど、フラウがフェルに話があるとかで、一人で待つ間にニールが傍にいてくれた。


「スノウ、お待たせ」


 迎えに来たフェルに連れられて、今日は図書館の王子専用室ヘ行く。


「フラウの話って何?」

「まだ口止めされてるから内緒」


 フラウから聞き出す自信も小玉から聞き出す自信も無い。諦めよう。


「逆ハールートについて聞きたいんだけど」


 人払いをして二人きりになり、向かい合って座ると私は切り出した。


「いいよ。何?」

「フェリクスに起こる悲劇は削除したんだよね? それでも逆ハールートは確立するの?」


 このシナリオのエンディングは、ヒーロー一人との結婚式か逆ハーエンドしか無い。

 複数攻略しても、スチルは回収できるけど、一人でも取り漏らせば逆ハーにはならないし、攻略したヒーローとだけの複数エンドにもならない。

 まぁ、逆ハーの確立がムチャクチャ簡単なんだけどね。万遍なく話しかけ続ければ逆ハールートに入る。

 むしろ、誰も攻略しないエンディングが一番難しいかも。


 あれ? そうでもないか。


 ずっと「無視する」「無言で立ち去る」「恥ずかしくて逃げる」を選択し続ければ、一人で正門を出て学院の全景を見上げ、「夢を見ていたのかもしれない。私は一人でここを去るのね」という独白のスチルが回収できる。


「削除したのは台詞が2行だけだから、逆ハーの条件はそのままだよ。ヒロインが条件を満たせば時期が来ればフェリクスは理由は分からないけど花壇の横で涙を流すだろうね。それで逆ハーに向けたフェリクスの条件回収になる」


 なるほど。悲劇は起こらずとも、ヒロインは逆ハーエンドへの条件を稼げるのか。


「逆ハーエンドのヒーロー達って、黒のタキシード着てるよね?」

「そうだね」

「黒のタキシードって、王命を受けた死刑執行人の正装なんだね」

「そうみたいだね」

「そう考えると、あのエンディング、ムチャクチャ怖いんだけど」

「自業自得じゃない?」


 やっぱり小玉を怒らせちゃいけない。

 私だって、奴には腹を立ててるよ。私を殺した犯人だし。

 でも、私は今、恵まれた環境でとても幸せに暮らしている。

 そして、魔力無しの平民に転生した奴は、この世界の常識で考えたら、きっと辛くて苦しい人生を送っている。

 前世の法律を当てはめて考えれば、初犯で被害者が一人なら、殺人の量刑なんてせいぜい懲役十年かそこらだろう。


 奴は既に十年以上、懲役刑より厳しい状況でこの世界に生かされている。

 死ぬほど辛くて苦しくても、『シナリオの都合上』ゲームのエンディングまではヒロインだから『この世界に存在しなければならない』。

 それこそ、不幸に塗れて絶望したって、奴がヒロインである限りは死ぬこともできない。


 ヒロインの面倒を見る気なんか無いし、奴を救いたいとも思わない。

 でも、前世で私を殺した罪は、もう償ったんじゃないかな。

 積極的に手を差し伸べる気なんて、さらさら無いけど、黒いタキシードの意味を知った以上、あの恐ろしい逆ハーエンディングは見たくない。


「逆ハーエンディングは怖いから見たくないよ」

「スノウの前ではやらないから大丈夫」


 何をやるの?

 小玉は許す気は無いんだなぁ。

 ゲームスタート後にヒロインが取るであろう行動を考えたら、他のヒーロー達だって黒いタキシード着そう。

 初対面から愛称呼びして三年間付きまとうんだから。

 一回でも斬り捨て御免な案件だし。


 でも、ヒロインの公開絞首刑は嫌だ。

 ヒロインは疫病神ではあるけど、この世界では誰も殺したり傷つけたりしない。

 ただ、ヒロインにまとわりつかれると理不尽な悲劇に見舞われるだけで。

 うん。十分それも嫌だけど。


 私はエンディング後に寝覚めが悪くならないために、どんな手を打てばいいのかな。

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