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お。生きていた。

 ルークに勉強を教える約束だったので、今日はフラウと馬車に乗って外を眺めている。

 教えを請う立場だから自分が出向くと彼は言ったが、ルークの家は学院のすぐ傍なので、外からでも学院を見てみたかった私は、理由を伝えて勉強の場をルークの家にしてもらった。


 王都の石畳の街並みは美しい。

 道の両側に柳の木が枝を揺らしているのが何とも言えないけどね。


 この世界の貴族の社交シーズンは春から秋だ。

 冬は不測の事態が起きやすいから領主には領地に居て欲しいという民衆の願いを聞いた形だ。

 冬に起きる不測の事態とは、森や山で餌が足りなくなった獣や魔物が人里に現れること。

 前世で熊が人里に現れた時の猟友会よろしく、領主の抱える騎士団などが掃討に派遣される。


 学院も春から新年度が始まる。

 16歳になる年の4月に、国内の貴族の子女は全員が、ルークの父が理事長を務める『フォレスタリア貴族学院』に入学して三年間在席する。

 貴族の子女は、学院に入学すると成人と認められて、夜の社交や飲酒が解禁になる。

 婚約は何歳でもできるが、貴族の結婚は学院を卒業しないとできない。


 成人しても三年間結婚できないとか変だよね、と思ったけど。

 学院入学と同時に将来有望なイケメンが皆既婚者になったらヒロインの夢が潰えるもんね。

 ヒーロー達は、見目も身分も同年代でトップクラスだ。何かしら制約が無ければ発売と同時に完売だろう。

 だけど、夜会のスチルは欲しかったんだろうな。

 てことで、成人してるから夜会に出られるけど結婚はできない決まりだよ、というご都合主義な世界になったのかな。


 貴族向けのこのような学院は各国にあるので、外国で暮らしていても、何処かの学院に入学して卒業すれば、成人して結婚できる。

 ちなみに、平民の成人年齢は18歳。誕生日が来れば成人。成人すれば飲酒と結婚が解禁。ヒロインは、この法律を知っているのかな。

 学院に入学して、周りの貴族の子女が飲酒してるからってヒロインも飲酒したら怒られるだろうし、18歳になる前ならヒーローに強請っても夜会には潜り込めない。

 未成年は王族でも夜会に出られない決まりだ。


 前世でテストプレイの時、名前と誕生日はプレイヤー入力だったから、私は名前を『あ』で誕生日を『4月1日』にした。

 テストプレイでは夜会のスチルも全回収したけど。

 奴が転生したヒロインは、誕生日はどうなってるんだろう。


 車窓の景色が大きく拓け、フォレスタリア貴族学院が視界に現れた。

 自分の渾身の作である学院全容が実物として建築されているのは感慨深い。

 壁は白を基調として、あくまで品良く華美にせず、でもポイントは凝った装飾を描いてみた。楽しかった。

 窓もカーブを描くデザインにしたり、屋根の深い青みにもこだわった。

 門から学び舎までの前庭や広い並木道も、全力で好みに描き上げた。


 奴はこの世界の全てを那波が描いたと思っていたが、那波はコレに関しては人物しか描いてない。

 だって時間が無かったし。

 私は模写とスピード勝負が得意だから、那波の画風を真似て好き勝手やった。那波は爆笑しながら、けしかけていた。


 洒落た制服の門兵が立つ正門前に差し掛かると、何かあったのか揉めている。

 何度も門兵に押し返されても、しつこく学院に潜り込もうとする茶色いおかっぱ頭の子供。


 お。生きてたか。


「俺はこの世界の神だぞ! ひれ伏せ愚か者!」


 甲高い子供の声。口調は、まんま奴だな。


「スノウ。見ちゃダメ。目が合ったら危ないよ」


 フラウに馬車のカーテンを閉められた。

 女の子に転生したのに、あの喋り方と内容じゃあ狂人にしか見えないよね。


「二人とも絶対馬車から出るなよ。外も見るな」


 馬で並走していたリックが、フラウの側の窓から緊張した声音で言い、フラウがそちらのカーテンも閉めた。


「この世界は俺が作ったんだ! 神に愛された俺がヒロインなんだ!」


 光を遮られて暗くなった馬車の中までヒロインの声が聞こえる。


「スノウ、僕が守るから大丈夫」


 フラウが私の頭を抱えて耳を塞いだ。

 暗いし、外の声も聞こえなくなって、フラウの体温と私と同じ石鹸の香りだけを感じる。

 奴が転生したヒロインがこの世界に実在することを実感して、怖かったわけじゃないけど、双子の弟とくっついているのは安心するし心地よくて。

 私はそのまま、ルークの家に着くまで、黙ってフラウに身を任せていた。

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