レイと美味しい料理
いつも乙女なレターセットで届くレイの手紙に、庭のアスパラガスが食べ頃なので遊びに来ませんか。という不思議なお誘いが記されていたので、先触れを出してフラウと出かけることにした。
私とフラウが行くところには、リックも必ずついて来る。
魔法戦でなければ負けないけれど、やはり3年早く魔法習得を済ませたリックの方が、今は総合的な戦闘力が高いのだ。
レイの家に着くと、レイと背の高い美人のお母様、それに三人の華やかなお姉様が出迎えてくれた。
お母様は画家。レイの3歳上と4歳上と5歳上のお姉様達は、それぞれ楽器が得意らしい。お姉様達は既に三人とも婚約しているそうだ。
レイ。芸術庁長官の息子。ヒロインと同い年。オネエ。怪力。
これが学院に入った時のレイの設定。
私の目の前にいる生身のレイはと言うと。
本名レイモンド・リリクス。リリクス侯爵家嫡男。
緩やかにウェーブのかかった黄緑色の髪。バサバサの睫毛。瞳の色は右が黄色で左が紫の神秘的な美少年。
特技は料理と服飾。自分でデザインしてドレスも作れる腕前。
趣味は狩猟と家庭菜園。自ら用意した材料で料理を作って振る舞うのが好き。
レイがそういうお店を出したら行ってみたいと言ったら、目を輝かせて力強く頷いた。
とても素敵なドレスを作っていたので、私のドレスを注文したら受けてくれるか訊いたら、快諾後にウキウキしながら採寸された。
「ほ、本物の可愛い女の子!」
「でかした! レイ!」
「お、お姉さん達と遊ばない?」
リボンやお菓子を手ににじり寄って来るお姉様達。ちょっと挙動不審ぽい。
同じ顔なのに何故かフラウの方には向かわない。
「もう! お姉様達ったら! スノウは私のお友達なんだからオモチャにしないで!」
頬を膨らませたレイに手を引かれて救出された。
「ごめんね。お姉様達、物凄く面食いで可愛い女の子を着飾るのが大好きなの。さすがに初対面の公爵家のご令息を女装させないだけの理性はあったみたいだけど。スノウの可愛さにネジが飛んじゃったみたい」
意外と毒舌だった。
なるほど。それで私に集中したのか。
レイに降りかかる不幸は、そんなお姉様達も巻き込まれる。
ある日、寮から実家に帰ると屋敷には人の気配が無く(使用人や警備はどうした)母と姉達は誘拐されていた。
父と共に捜索(専門機関にも頼れ)すると、人身売買組織のアジトを発見。父とアジトに踏み込むと、味見と称して犯される(とにかく犯すシナリオ)母と姉達の姿(全年齢対象と突っ込むのも疲れてきた)が。
レイが手近な男を投げ飛ばすと衝撃で燭台が倒れ辺りは火の海(石造りのアジトが蝋燭三本で火の海になる謎)に。炎の勢いが強く助けられぬまま(魔法の炎でも魔法で瞬時に消火できる)焼け死ぬ母と姉を見ているしか出来ないレイ(怪力だし魔法使えるし何かは出来るはず。そして父は何してるんだ?)は、アジトが焼け落ちる(石造りのアジトが蝋燭三本で焼け落ちる謎)前に父を背負って(父は何しに来たんだ)脱出。
焼け落ちた後も燃え盛る炎(火元は蝋燭三本で燃料は石)を背景に、レイが背中の父(怪力だから背負わず片手で抱えて走れるのにな)を振り返ると、父の頭は無くレイの肩は父の血で真っ赤に染まっていた。
爆発もしていないのに小さな一軒家からの脱出途中に父の頭がもげた理由は出て来ない。
やっぱり色々と突っ込みどころが多いんだけど。
これがシナリオ通りに起こると、現実ならリリクス侯爵家は断絶する。
レイ以外の家族が全員死んで、レイは魔力無しのヒロインと結婚するから。
レイの事件が起こる時期は、シナリオでは3学年の夏休み後。
在学中だけど、リリクス侯爵が亡くなるならレイがリリクス侯爵になってるはず。
卒業後にヒロインと結婚するまでは、だけど。
侯爵が魔力無しと正式に結婚したら、関係各所から暗殺者を差し向けられるのは想像に難くない。妻子もまとめて皆殺しだ。
その場合、差し向けられる暗殺者はおそらく顔見知りのハイド。
絶対、嫌だ!
「スノウとフラウも収穫してみる?」
レイご自慢の家庭菜園では、立派な太さの瑞々しいアスパラガスがニョキニョキ生えていた。
「わあ! 綺麗! 美味しそう!」
レイに教わって私とフラウも収穫を楽しみ、その後はレイ専用のキッチンで作ってくれた様々なアスパラ料理をご馳走になった。
ポタージュスープがめちゃくちゃ美味しかった!
サラダも焼きアスパラもベーコン巻きもクリームソースがけも最高!
「狩りに行ったら肉料理も作れるんだけど」
と、レイが言うので、
「じゃあ一緒に狩りに行こう! ついでに食べられる野草や木の実も採取して来ようよ!」
と、満腹のお腹をさすりながら提案した。
「楽しみにしてるね。いっぱい美味しいの作るからね」
ニコッと色違いの瞳を細めるレイには、お家断絶とか友達と殺し合いとか、悪夢にも見せたくない。
もちろん愉快なお姉様達にだって、そのまま愉快でいて欲しいぞ!




