ハイドと可愛いドレス
朝からフラウと世界地図を広げ、「金色の飛竜の生息地は何処だろうね」という話をしていたら、先触れ通りに弟子入りしたハイドが訪ねて来た。
ハイド。諜報部門長の息子。ヒロインと同い年。
本名は、ジークハイド・キリング。キリング侯爵家の嫡男。
濃い紫色の髪に紺色の瞳。くりくりお目々が可愛い細身のおチビちゃん。
特技はダーツと女装。全く男の子に見えなくなるレベル。可愛いドレスが大好き。
趣味は作曲と旅行。なかなか文化的だ。
ハイドに降りかかる不幸はと言うと。
ある日小さな弟と街に出かけたが、駆け出した弟に追いつけず見失う(プロの暗殺者のハイドを振り切る弟すごい)。誘拐された弟(そんな弟を捕まえる誘拐犯すごい)はハイドの目の前で(いつ再会したんだろう)数々の拷問をされ(ハイド拘束されてないなら助けろよ)泣き叫ぶ。やがてボロボロになった弟がスライムの中でゆっくり消化されて行く(この世界のスライムは核さえ壊せば幼児でも殺れる)のを見つめるハイド(だから拘束されてないし助けろ)。
弟の泣き叫ぶ声と融けゆく姿(全年齢対象どこ行った)が忘れられず、心に消えない傷を負うことになる。
ハイドに兄弟がいるか尋ねたら、姉が一人いるそうだ。
ハイドの事件が起こるのは、シナリオ通りなら2学年の冬休み。
てことは、弟がこれから生まれるなら、事件の頃は7歳未満。
可愛い系は奴の好みではないのか、ストーリーは随分雑だ。
2学年で事件が起こるから溺愛パートは長いはずなのに、デートとかは一切無くて、ひたすらヒロインを狙う敵を惨殺しているスチルが卒業まで続く。
幼児が攫われて拷問されて溶かされる未来は必要無いよね。
スチルみたいに虚ろな目で惨殺しまくるハイドも辛い。
仕事で殺す時のプロは、あんな目はしない。
公爵邸の庭で、フラウがハイドと遊んでいるが、ハイドはまだ一度もフラウにタッチできてないな。
このまま遊んでいれば、敏捷性は上がるだろう。
「ハイド、今日中にフラウにタッチできたら、私のドレスお下がりにあげるよ」
可愛いドレスが好きだと言うから、小さくなったのをあげよう。
「スノウ!? そんな餌をぶら下げたらハイドがっ」
キラーンと目を細めたハイドが急に倍速くらいで動き出す。
フラウが焦るのは珍しいな。
ハイドはそんなに可愛いドレスが好きなのか。今度お揃いを着るのも楽しそう。
夕方、悔しそうなフラウと一緒に、
「また来るから」
と、ホクホク顔でドレスを持ち帰るハイドを見送った。




