カイルと飛竜
カイル。近衛騎士団長の息子。ヒロインと同い年。
設定はこれだけ。家名も容姿の特徴も設定資料には無かった。そういや国の名前すら無かったっけ。学院の名前も無かったな。
実在のカイルは、本名カイルロッド・レングレア。レングレア公爵家嫡男。
オレンジ色の髪に金色の瞳のスポーツマン系美少年。明るくてよく笑う。
特技は馬に限らず動物に乗ること。生き物大好き。
趣味は剣の稽古と陶芸。意外と渋い趣味だ。
シナリオでカイルに降りかかる不幸だが。
ある日両親のお供をして何処かの森(地名は出て来ない)ヘ視察(理由も目的も出て来ない)に行くと、はぐれた(理由は出て来ない)母親が牛や馬の魔物達に犯されてバラバラに食い千切られた(全年齢対象どこ行った)。
発狂した父親は魔力暴走を起こし森が壊滅。荒野になった森の跡地で母親の肉塊を食べる父親(魔力暴走で森が壊滅したのに遺体は残ってる)を目撃してしまったカイル(至近距離で魔力暴走が起きても無傷)は癒やしきれない心の傷を負うことになる。
母親が襲われながら悲鳴を上げてる、つまりまだ生きてる内に事件現場が視界に入るのに、父親もカイルも何してたんだとか、すぐそばに立ってるんだから父親の魔力暴走や蛮行を止めないのかよとか。
突っ込みたいところは幾つもあるけど、まぁそんな感じ。
カイルのお父様は仕事で留守だったけど、お母様が挨拶してくださった。
小柄だけど明るくて元気な美人さんで、私とフラウの周りを「キャー! 本当に妖精みたい!」とくるくる回ってカイルに「落ち着けよ」と宥められていた。
この人が悲惨な目に遭うのは嫌だ。
竜舎に案内してもらい、金色の飛竜の前でカイルが立ち止まった。
金色の飛竜は人里に出て来ないので大変珍しい。
ディアマンテ公爵領でも多くの飛竜を飼育しているが、金色はいない。生態もよく分かっていない竜種だ。
「スノウ、驚いたか?」
ニヤリと得意げに笑ってカイルが言う。
「うん。金色の子は初めて見た」
私が頷くと、カイルは金色の飛竜の鼻面を優しく叩いた。飛竜が気持ち良さそうに目を細める。
本当に賢そうだ。初対面の子供がいるのに落ち着いてる。
私とフラウは初対面でも飛竜に侮られたことは無いけど、ここにはリックもいる。
金色の子の前に来るまでに、他の飛竜にはリックだけ威嚇されたり髪の毛をハムハムされたりしていた。
「触ってみるか?」
「いいの!?」
触りたくてウズウズしていた私は、すぐにカイルの横に飛び出す。
吹き出すように笑ったカイルが場所を譲ってくれたので、早速声をかけながら手を伸ばした。
「はじめまして。私はスノウ。賢くて綺麗な子ね。よろしく」
撫で撫で。手触り最高! 栄誉状態良好だ!
顔に鼻面を押し付けられたから、大きな顔をギュッと抱きしめる。
「うわ、可愛い女の子相手だとデレデレかよ」
「え? この子、女の子でしょ?」
カイルの言葉に振り返らずに応えると、後ろで慌てたような空気を感じた。
「え、マジ? なんで分かるの? ヤベ。俺そいつに強そうな名前つけちまった」
「フラウ、この子、女の子だよね?」
「そうだね。年頃になったら一度里帰りをさせてあげたら、卵を抱えて帰って来ると思うよ」
「ええー!? マジ? すげぇ!」
どこがどう違うとは説明が難しいけど、故郷の竜舎で飛竜の雌雄の見分けに私達が意見を分けたことは無い。
そして、私達が雌だと思った飛竜は、いつの間にか卵を抱いていた。
故郷では私達の見分けを疑う人はいなかったけど、まだ会って二度目のカイルがまるで疑わないのは意外だった。
「カイル、私達の話、信じてくれるの?」
訊いてみると、キョトンとされた。
「お前ら、そういう人を糠喜びさせるような嘘なんかつかないだろ? それに、そいつ、そういう奴は嫌いだし」
カイルは私達を信じてくれていて、信頼する金色の飛竜の態度が保証になったのか。
「今度、うちの飛竜も連れて来るから、カイルはこの子に乗って皆で出かけよう」
「スノウも飛竜に乗れるのか?」
「スノウなら高笑いしながらアクロバット飛行するよ」
にっこりとフラウにお転婆をバラされたけど。
「すげぇ! スノウ最高だな! 競争しようぜ!」
なんだかカイルが大喜びだから、これで良かったかな。
カイルの事件が起きるのは、シナリオだと、2学年と3学年の間の春休み。
そんなルートは進ませないからね!




