表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/29

07 やっと自己紹介

「そんなに大事なら、はめてくれればよかったのに。

 言葉がわからなくて、どうしてよいかわからなかったんです。」


 俺はエデナに言った。


「いえ、私がお付けしてはダメだったんです。ひびき様が触る前に私が触ってしまっては、指輪は持ち主を私だと認識してしまいます。

 そうすると、ひびき様がはめても正常に働かなかったのです。」


「そうですか…。はめる指を右手の中差し指と指示したのは、なぜですか。?」


「指輪は、はめる位置によって、様々な意味をもつのです。」



 そうなんだ。色々と細かいな。



「そうだ、まだ、ちゃんと挨拶していませんでしたね。私、鳥居ひびきと申します。」

 俺は二人に頭をさげた。


 ここは握手を行うのだろうか?

 女性にこちらから握手を求めるのはちょっと照れる。


「ご丁寧にありがとうございます。

 わたくしは、エデルナート=ムナ=ビナヒヌ=ビンケサン=オイカモネと申します。

 ヴァーヴェリナ皇女の補佐官兼教育係兼色々行っています。

 まあ、雑用係のようなものです。『エデナ』とお呼びいただけると幸いです。」



「アナスタシア=ムナ=オラムット=ギナ=アルシェロフと申します。ヴァーヴェリナ様の随身(ずいじん)です。

 『アナ』とお呼びください。」



 エデナは、ドレスの両端を少し持ち上げ左足を後ろに引き、右ひざを軽く曲げ、体をかがめて頭を下げた。

 アナは、右手を広げて胸にあて、頭を下げた。


 ドラマに出てくる宮廷の女性と騎士様の様だ。

 あ、握手はしないんだな。よかった。 …少し残念。



「エデナさん、アナさん。申し訳ありませんが、色々とお伺いしたいことがあります。夜も遅いようですが、少しだけお時間をいただけないでしょうか。」

 俺は二人に声をかけた。


「ひびき様。お言葉を返すようで恐縮ですが、おっしゃるとおり夜も更けております。また、皇女様を寝所にお運びしたいと存じます。」

 とアナが言った。



「そうでございますともひびき様。急にこのような状況になり、お聞きになりたいことが山ほどあるとは存じますが、今からお話ししても、きっと朝になっても終わらないと存じます。


 また、ヴァーヴェリナ様より『世界を渡った後は反動が来ると思う。また、この世界にある『魔力』に体が順応していないはずだから、もし私が寝てしまったら、ひびきにチンキを飲ませて早めに休ませるように。』と申しつけられています。」


 とエデナが付け加えた。


「反動、ですか。どうなるのでしょうか。」

「疲労感、倦怠感(けんたいかん)、眠気が来ると聞いていおります。」


「全然感じないのですが。」

「お気持ちが(たかぶ)っていらっしゃるのだとご推察(すいさつ)します。明日という日もございますわ。本日はどうかお休みになってくださいませ。」


 それもそうだ。


 こんな夜更けに女性を引き留めるのも不謹慎だ。

 しかも二人も。


 ついでに、椅子で寝ている、めんどくさい幼女を寝かしつけなければ、風邪をひく。




 だが、どうしてもこれだけは、聞いておきたい。


「わかりした。おっしゃるとおりですね。詳しい話は、明日、お時間をいただきたいと思いますが、一つだけ教えていただけませんでしょうか。」


「何でございますか?」


「召喚された理由です。祖母が転生したからと言って、大した理由もなく、孫を召喚するとは思えないのです。」


「理由…ですか…。」



 エデナは少し考えているような顔つきになった。

 アナは黙ってうつむいている。



「大変申し上げないのですが、私どもも、はっきりとしたことは伺っておりません。」


「何となくはは聞いているのですか?」


「…。それは…。」

 エデナとアナの表情が少し曇った。


「…。やはり私どもの口から伝えると、齟齬(そご)が出るのではないかと案じます。ですので、どうかヴァーヴェリナ様に直接お尋ねいただけませんでしょうか。」


 二人は気まずそうな顔を浮かべた。



 そうか。

 家臣として、言わないほうがいいって事なのか。


 俺は、彼女たちの気持ちを汲んで言った。


「わかりました。そうさせていただきます。先ほどもお願いしましたが、明日色々お伺いしたいと思いますので、お時間をいただけますでしょうか?」


「もちろんでございます。」


「それと、一つお願いがあるのですが。」

「何でございますか?」


「その…。お互いに、敬語はやめませんか。俺あまり敬語うまくなくて。」


「承知いたしました。その様でございましたね。」


 エデナはクスリと笑った。

 皇女とのやり取りを思い出したのだろうか。


「ひびき様がそうおっしゃってくださるのでしたら、私どもも公の場以外でしたら、普通に話をさせていただきます。」


「ありがとうございます。それに、その、ひびき『様』もやめていただけると…。」


「ヴァーヴェリナ様のお客様に向かって、敬称なしでお呼びするのは難しいです。」



 『難しい』か。ダメってことだな。

 『お客様』かなぁ…。違う気がするけど。まあいいか。



「ではお部屋へご案内します。アナはヴァーヴェリナ様を寝室までお連れしてください。」

「わかりました。」


「あ、女性では大変でしょうから、俺が運びます。」


「いえ、大丈夫です。」


「いえいえ。こう見えても力はあるほうですから。」


「しかし…。」


 俺はそんな会話をしながら椅子で眠りこけている皇女の横に行き、膝の裏に左腕を通しし、右手を脇から背中に回してを抱えようとした。


 ヴァーヴェリナ皇女はそれに気が付いたのか、


 「ん・・ひび…き 」

 とつぶやき、俺の首に手をまわしてきた。



 こういうところは可愛いな。



 俺はそのまま皇女を抱きかかえ、アナの案内で寝室へとつれていった。


 エデナは脇にあったベルを鳴らし、侍女を呼んた。


ひびき:長い名前だな。一度では覚えられない・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ