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14 解放

「ひびき様。監禁から解放します!」


 午後になり、そう言いながら勢いよく部屋にやってきたエデナに、離宮を案内してもらった。


 この離宮は、ばーさまの私邸で、皇帝が住んでいる宮殿は少し離れたところにあるらしい。


 敷地内にはばーさまの執務室や応接室、居住する『本棟』、貴賓、要人などを宿泊させる『迎賓館』、側近、召使いが住む『別棟』、『離れ』が数棟。『神殿』、『植物園』、『研究棟』や『衛兵の『詰所』など、多くの建物があり、それを囲むように壁があり、それを『内壁』と言った。


 その壁の外には、兵士の待機場所や訓練所、農園や放牧地、植物栽培地が広がっており、それを『外壁』で囲んだ所までが、ばーさまの離宮となる。


 外壁の外は貴族街で、それを取り囲むようにまた『壁』があり、その向こうが平民街。それを囲うように高い城壁があり、その外側に農地があって、森が広がっている()()()


 ()()()というのは、俺が今回案内されたのは、離宮の内壁の内側だけだったからだ。

 

 今回ばーさまから外出の許可が出たのは内壁の内側だけである。

 それだけでもかなりの広さがある。全部合わせると東京ドーム何個分だよ。金持ちめ。


 ちなみに、俺が今いる部屋は迎賓館の客間で、貴族のお客様が滞在する部屋であり、超VIP待遇だ。

 エデナが連れているそんな超VIPな少年を、会う家人たちは丁寧に、そして珍しそうに_少し驚いたように_挨拶してくれた。


「瞳の色が、やはり珍しいんですかね。」

「あ、エルシャにでも聞きました?」

 す、鋭い。てか、うかつだった。


「…。エルシャさんを責めないでくださいね。そういう話を聞いていなかったら、俺、ここの人たち感じ悪っ!て思っていましたよ。」


「大丈夫ですよ。人の口に戸は立てられませんもの。ひびき様は滞在される『技術者』ということで、家人にも伝えてあります。

 ヴァーヴェリナ様は客間にずっと隠しておくつもりだったようですが、そういうわけにはいきませんもの。」


「ばーさま。本当に監禁する気だった んだ…。」


「大切なおもちゃですもん。」

「ひで。」


「それだけひびき様は大切な方なんですよ。きっと。でも、私は、ひびき様はいろんな方と触れ合ったほうが良いと思うのです。

 だってせっかく来たこの世界の事、もっと知りたいでしょ?外にでて、民の生活をみてみたり、素材集めや魔物を退治したいんですよね。」


エデナはくすくすと笑いながら言った。。


「そうなんです! せっかくの異世界だから、みんながどんな生活をしているか見てみたいし、妖精にも会ってみたい。素材集めもやってみたい。

 ですが、武器は全く使えませんから退治はいいですが、遠くからなら魔物も見てみたいです。」


「剣や弓も使ったことがないのですか?」


「ええ。弓は友達が部活・・えと、学校でのグループ活動でやっていたので、一度やらせてもらいましたが、全く当たらなかったし、剣は体育って学校の学科で少しやった程度です。習ったのも本物の剣ではなくて、竹という植物でできた、()()()()()()剣です。」


「『娑婆』って、平和な世界ですね。」


「いや、俺のいた国が、結構平和な方だっただけで。」


「『弾矢(だんや)』も使ったことございませんか?」


「『弾矢(だんや)』?なんですかそれ?」


「えーと。金属の筒から、弾が飛び出して獲物をしとめるものです。」


「ああ、鉄砲の事ですか。俺がいた国では使用禁止なんですよ。だから子供のころプラモ、えと、おもちゃで遊んだぐらいです。

 あと、海外…、 えと、 外国に観光に行ったときに本物を撃ったことがあります。

 物語(アニメ)に出てくる有名なのを撃ってみたら、結構な反動があって、驚きましたよ。」


「ああ、ご存じなんですね。」

 エデナは微笑んだ。

「『鉄砲』って言うのですね。どんな種類があるんですか?。」


「んー。種類ですか。詳しくはありませんが、色々ありますよ。

 ピストルっていう片手で打てるものだったり、マシンガンと言って、弾がだだだだだっと連射できるものとか。

 大砲も一種の鉄砲なのかな? 船に乗せて相手の船を沈めたり、要塞、城壁を壊したりするのとか。まあ、映像で見たことあるだけですけど。」


 テレビや映画とかのね。


「へえ。すごいですね。イメージがつかないなぁ。また、詳しく教えていただけますか?」

「いいですよ。エデナさんは、鉄砲に興味があるんですか?」


 女性でミリオタなのか?で 迷彩服を着ても可愛いだろうな。


「鉄砲だけではありませんよ。『娑婆』のお話し。色々伺いたいのです。」

 エデナはそう言うと、次に行きましょう!と言って。踵を返した。




 その後もエデナの案内で邸内をみてまわり、東屋に準備されたテーブルでお茶をした。

 少し寒くはあったが、東屋から見る邸宅、庭の景色はファンタジー感あふれるものだった。


 お茶を口にしながら他愛のない話をし、ドライフルーツをつまんでいると、エデナが切り出した。


「ところでお部屋の件ですが、ベッドは今交換しておりますが、部屋替えはヴァーヴェリナ様がお戻りになるまでお待ちいただけませんか?」


「え、朝話して、もう今、ベッドを取り替えてるんですか!?」


「ベッド寝心地がお好み違いだったなんて、気が付かなくてすみません。」


「ああ…すみません。ホントすみません。」

 どうかお気になさらずに。と言われてしまった。お貴族様はこんなのわがままにも入らないのかもしれない。


「部屋替えは無理にしなくても大丈夫ですから。」


「いえ、準備が無理というわけではないのです。『私どもと同じような部屋にする』ということは、ひびき様のあつかいが下がったように感じられます。

ヴァーヴェリナ様がいらっしゃらない今、それをするのは、少し(はばか)られるのです。」


「そっか。主人がいない時に、お客さんの扱いを下げると、まるでエデナさんがそうしたように思われてしまうって事ですね。」


「ふふふ。ごめんなさいね。変な見栄のために。」

 

「大丈夫です。こちらこそ俺のわがままに迅速に対応していただいき、ありがとうございます。」

 そうか。エデナが悪者になってしまうんだ。俺は心から恐縮し、感謝した。




「そういえば、エデナさん。知っていたら教えていただきたいのですが。」

「はい。なんでしょう。」


「俺って『娑婆』ではどうなってるんでしょうか?突然消えちゃたことになるんでしょうか?」


「ええ。おっしゃるとおり『娑婆』でのひびき様は、とつぜん消えちゃっています。

 私も詳しくは聞いていないのですが、ヴァーヴェリナ様が『ちゃんとしてきたから大丈夫だ。』とおっしゃっていましたから、ご心配なさらずとも大丈夫ですよ。きっと。」


 俺はエデナの言葉に安心した。




 部屋に戻ってみると、エデナの言ったとおりベッドが変わっていた。お貴族様はすごい。


 今日は昼からずっと歩いていたからか、夕食後はすぐに眠気がさしてきた。


 そう言えばお風呂って、いつ入るんだろう。湯船がそろそろ恋しい。

 ミーナにお願いして、洗面器にお湯を張ってた。


 タオルを絞って顔に当てる。 ああ、おしぼりみたい。気持ちいい。

 タオルを何度か絞り直して俺は全身を拭き、パジャマに着替え、チンキの入った蜂蜜湯をのんでベッドに入った。


 ベッドも枕もお願いしたとおり、少し硬くなっていて弾力が良く心地よかった。


 _外に出れてよかった。

 でも、みんなの俺を見る目は、エルシャが言った通りだった。髪が黒かったらもっとだっただろう。 


 『闇の神』の眷属か最強の魔法使いとでも思われたんだろうか。 

 ー『闇の神の眷属』って…。中二病っぽいww



 -ひょっとしたら、ばーさまが部屋から出したがらなかったのはこのせいだろうか。




 _しかし、エデナ可愛いな。明るくてよく笑うし、優しいし、話も分かる。好奇心一杯で、聞き上手 で、頭もよい。胸も…  と。いやいやいやいや。


_あんな可愛い子が先生で教えてくれるなんて、運がいいな。『娑婆』は、ばーさまが何とかしてくれているみたいだから、少しこちらの世界を楽しも…う。



俺は、ミーナが消灯に来る前に眠りに落ちた。


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