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12  監禁?!

建国神話がほんの少し出てきます。

 エデナはこの世界での『設定(プロフィール)』をさらっと教えてくれた

 そうだな。『どーも。皇女の前世の孫です』なんて言えるわけもない。


「そういうわけで、ひびき様は、当分この部屋にいていただきたいのです。」

「? どういうことですか?」


 何が『そういうわけ』で『部屋から出てはいけない』のか?


「ひびき様は大切な『技術者』です。色々な情報が外に漏れるといけないので、こちらが決めた者以外接触しないよう、部屋の中にいていただきたいのです。」


「えっと、この部屋から? いつまで?」


「そうですね。『魔力酔い』の症状と『この世界の常識』の理解状況次第です。


 まず、『魔力酔い』ですが、十分休んでいない状態で動き出すと、あとあと、反動が来てしまいます。ある程度体を動かすことは『魔力酔い』の防止になりますが、動きすぎることは『魔力』を過剰に取り込み、酔いをひどくします。


 次にこの世界の常識ですが、やはり知らずに出てしまうと、ひびき様がお困りになると思います。」


 部屋から出るなって、監禁?!

 こんな召喚あり?


 普通、召喚って、いきなり異世界に放り込まれ、手探りでその世界を覚えて行ったり、神様みたいなのが音声でナビゲーターくれたり、タッチパネルでスキルを確認していくもんじゃね?


 それでこその冒険、それでこその勇者、冒険者。


『『この世界の常識』覚えるまで心配だから部屋から出るな。』だとは なんちゅう過保護。


「それって、ヴァ―様の指示?」


「そうなんです。『いきなり異世界に連れてこられて、ひびきが負担を感じてはいけない。少し部屋でゆっくりさせとけ。』とおっしゃいまして。」

 エデナはため息を交えながら、困惑気味に話した。


おいおい。ば―さま。それって過保護だよ。もう子供(ガキ)じゃないんだしさ。

『ヴァ―様』でなく『ばーさま』で十分だ。


「エデナさん。俺、『魔力酔い』は全くわかりませんので、エデナさんの診断に従いますが、今のお話しですと、多少は体を動かしたほうがいいんじゃないですか?

 また、『この世界の常識を覚えるまで部屋から出ない』というのは、逆じゃないですか?常識って、経験したほうが早く覚えられるんじゃないかと思うんです。『遠方から来たためこの国の常識を知らない』って設定で十分じゃないですか?、、、と。あ、」


 俺は話しているうち、ふと気が付いた。さっきの設定、『技術者』だったな。


「そか。ひょっとして、『娑婆(しゃば)』の情報が漏れることを心配しているんですか?」

「あ、実は…。」

 エデナはすまなそうに言った。


「その辺は俺も大人です。って、昨日初めてこの姿で会って、大人には見えないかもしれませんが。余分なことは言わないよう気を付けますので、信用してくださいよ。」

 前の会社も情報漏洩には厳しかったし。


「ん。。。そうですね。実は私も、ヴァーヴェリナ様は心配しすぎではないかと思っているんです。

『魔力酔い』についても、必ずしもかかるとは限りませんからね。わかりました。後ほど進言してみます。」


 ヴァーヴェリナ様はきっと、大事なものを宝箱に入れてしまっておきたいというお気持ちなのかもしれませんよ。とエデナはいたずらっぽく軽口をたいた。


 俺もばあちゃんは昔から過保護だったよと、エピソードを交えながら歓談した。





「あ、結構おしゃべりしてしまいましたね。すみません。チンキを調合して、戻らなければ。」

 しばらく歓談した後、エデナはもう一度俺の体調を尋ねた。


 俺は細かいことかと思ったけど、気分の落ち込みはないが『魔力酔い』のせいか少し体がだるいかな、とか、お昼ご飯は『娑婆』のメニューとあまり変わりませんね。沢山食べましたよ、とか、昨夜は久しぶりにぐっすり眠れましたなど本当に、ととりとめのない話をした。


 エデナはうんうんと頷きながらチンキを調合し

「昨日も申しましたが、お薬ではなく『サプリメント』です。ちゃんと飲んでくださいね。また、そのまま飲むと、恐ろしくアルコール度が高いですから、お茶などに入れて、薄めてくださいね。」

 と言ってガラスの小さな小瓶にいれた。




 エデナが退室してから、俺はベッドでゴロゴロしていた。


 ヴァ―様とエデナの指示によるものだ。

 決してだらけているわけではないぞ。 うん うん。


 実際、体が重く、少し頭も痛かった。まあそうだよな。『娑婆』でも色々忙しかったし。



 _そう言えば、『娑婆』では俺、どうなってるんだろう。



 突然消えたことになっているんだろうか?


 急に消えたとしたら、おふくろや親父が心配してるだろう。

 しかも葬式を済ませた後で消えたなんて最悪のタイミングだ。

 異世界に来ましたとは言えなくても、心配しないようになにかしておかないと。

 


 体を横にして、窓の外に目をやる。


 外では日が傾きはじめ、オレンジ色の西日が差し始めていた。

 時折 ヒュー っと言った強い風が吹くと、葉をつけていない樹の枝が、風で揺れてザワザワとこすれあう音がする。


 俺は、しばらくの間、何も考えずにその様を眺めていた。



 _…。今、考えても仕方ない。後でエデナかばーさまに相談しよう。



 そのまま軽く目をつむり、できるだけ考えないようにした。





 少しするとドアをノックする音がして、ニーナとエルシャが部屋に入ってきた。


 ニーナはエデナから預かったと言って、表紙が革で装丁された本を一冊渡してくれた。

 エルシャは部屋の高い所にあるろうそくに、先に火が付いた長い棒で一つ一つ明かりを灯していき、ニーナが暖炉の薪を足した。


「ひびき様、少し冷えてきましたから、火のそばにどうぞ。」

 もう少ししたらお食事を用意しますと言った。


 俺は礼を言い、暖炉のそばにあるソファにすわって、炎を見つめた。


 薪が足されたことにより炎が勢いを増し、パチパチと音を立てながら燃がるにつれ部屋の中が暖かくなってきた。


 木が燃える微かな香りと顔に感じる熱気に、俺は不思議とほっとした。



 夕食は、シチューのようなものにパンとチーズだった。

 シチューはよく煮込まれており、肉と野菜がほろほろと口の中でほどけた。

 ワインとかは出ないのかな?

そもそも高校生ぐらいではお酒はまだ飲めないだろうか。

 そんなことを考えながら、おいしく一皿平らげた。


 食後は暖炉の傍に行き、暖かな炎を見ながら、ハーブティにチンキをいれたものをのみつつ、ニーナが持ってきた本を読んだ。



 _世界は、初めは闇の神が支配し、混沌だった。



 このくだりから始まる本はこの国の建国神話だった。


 混沌に秩序をもたらそうと闇の世界に光の神が攻め入り、闇と地上とを別つため光の神の最高神が太陽となった。


 太陽が昇っている間は青い空で闇の世界と分断されるが、闇の神が勢力はを取り戻すと日が暮れて夜になる。そして光の神が力を取り戻すと結界が現れて朝になる。


 世界は今でも、昼夜問わず魔(悪魔のことか)は人々の魂を削り、御使い(天使かな)がそれを防ぐ攻防を行っている。


 人は正しい行いをし、魂を輝かせておかないと、魔に魂を削り取られて病を得て死に至る。


 というような話だった。



 神話って大体どこも同じだな。



 神話はその国の成り立ちを説明している物語が多く、神話に記載されていることはその国のルールのもとになっているものも多い。

 さすがエデナ。俺の興味を引くような本で、常識教育も兼ねている。


 ページを進めていたら、ニーナが消灯の時間だと言った。

 早い気もするが、昔は日が暮れると寝て、日が昇るとともに働いていたと習ったことがある。


 俺はカップに残ったお茶を飲み干すと、パジャマに着替えてベッドに入った。


暖かい部屋はほっとしますね。

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