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10 おあずけ

 部屋に戻ると、エルシャとテーブルに食事を準備しており、給仕してくれた。


 初めに根菜類と肉を出汁に使った暖かいスープ。

 よく煮込まれ、塩味がきいて美味しい。


 次の皿は鳥肉の塩焼きにマッシュポテトを添えたもの。

 別皿にはザークラウトやピクルスのような酸っぱい漬物が多種。


 その横にはカゴに入った丸いパンに、数種類のジャム。

 最後にはよくわからないフルーツを煮た物。ジャムほどは煮詰めていない。コンポートというやつか。


 - うん。どれもおいしい。俺は勧められるまま、しっかりと食べた。



 食器類は立派なものだったが、食事は思ったより素朴なものだったな。

 食べているものはばあちゃん皇女の言う『娑婆(しゃば)』とほとんど変わらない。

 そりゃ、貴族だっていつもフルコースを食べているわけではないだろう。


 俺は食後のお茶、- たぶんハーブティー ― を飲みながら、横に控えていたミーナに聞いた。


「ミーナさん。今日、皇女…さまとお話しをしたいと、エデナさんにお願いしたあるのですが、なにか聞いていませんか?。」

「エデナ様から、ひびき様がお食事を済まされたら、ご連絡するように言われています。」


 ミーナはエデナ様に報告してきますので、何かありましたらそのベルを鳴らしてください。ドアの外にエルシャが控えておりますので。と言って部屋を出て行き、部屋の中は俺一人になった。


 ー エデナさんが来る前に歯をみがいとこ。


 俺は洗面台に向かった。洗面台の横には歯ブラシ― 動物の毛で作られているのだろうか ―が置いてあった。歯磨き粉は。。。と、この小瓶の中か。小瓶のふたを開けるとペパーミントの香りがする。それをつけて、シャカシャカと磨き始める。泡立ち悪いな。


― トントン 

「エデナですっ。入りますね。」

「あ、ちょっと…。」

 ドアをノックするとともにエデナが部屋にが入ってきた。


 俺は慌てて歯ブラシをとって言った。

「あ、すみません。ちょっとお待ちください。」

 洗面台に向かい、急いで口をすすぐ。意外とせっかちな人だな。


エデナがぼそっとつぶやいた。

「ああ、ひびき様は本当に『チの神界』から、いらしているんですね。」

「?」

「いえ、なんでもございません。」

 エデナは小首をかしげて微笑んだ。



「ひびき様。昨夜はよくお休みになれましたか。」


 エデナは自分の後をついてきた侍女に持参させたものをテーフルに置かせると人払いをし、テーブルの角をはさんでだ隣に座った。


 彼女のドレスは昨日のドレスとは感じの違う、かわいらしい普通のものだった。それでもミーナ達のものより幾分豪華だが。襟は詰まっておらず、胸繰りは結構開いていた。


 そして、、俺の手を取って脈をみたり、『お顔を見ますねー』と俺の頬に両手を当てて顔や目をじっと見たり、『お口を開けてください あーん』 とか言って口の中を観察した。


 可愛い…。こんなに可愛いお医者さんは初めてだ。

 ー そして、 近い。。。 でかい。。。 ー

 俺は目のやり場に困って視線が宙を泳いだ。


「ええ。逆に寝過ごしてしまって。恥ずかしいです。」

 - 目のやり場も…。ー


「いえ、沢山お休みいただけたなら、よかったです。世界を渡りお身体にご負担をかけている上に、『魔力』に()てられていますから。

『魔力』に()てられた『魔力酔い』には、しっかり寝て体力を回復しすることが、一番の対処法になりますから。」


「そうですか。魔力のある世界って、そんな症状が出るんですね。ご心配いただきありがとうございます。

それで、昨日言ったとおり、色々と聞きたいことがあるんですが皇女様にはいつ会えますか?」



 エデナは申し訳なさそうに言った。


「それが…。大変申し訳ないのですが、ヴァーヴェリナ様は朝方に急用が入り、急ぎお出かけになってしまいました。6~7日ぐらいは帰れないと思います。」


「一週間も?!」


「ええ。そうなんです。本当に申し訳ございません。ですが、皇女様から言づけ、というか、…。実際に見ていただいたほうが早いですね。」


 エデナはそう言うと、侍女に持参させた、A4サイズぐらいの大きさの装飾がついた鏡を俺の前に置き、鏡に向かって何かを唱えた。俺の顔が映っていた鏡は次第にボケて行き、そのうち皇女の顔がぼんやりと映った。


『ひびき~。聞こえるか~。』

「皇女さま?」

皇女の姿は少し鮮明になってきた。


『お、通じた。これは『遠見の鏡』と言って、遠く離れた物と話すことが出来る。いわゆるスマホじゃ。すごいだろう。』


「すごい! リアル マジック アイテムだ!」


『だろ。これはわしがスマホのアイディアをもとに作ったのだ。すごいだろ。もっと褒めてよいぞ。』


 皇女は相変わらず高飛車だったが、作ったものがすごい。俺は素直に褒めた。


『素直でよろしい。だがのお、これは魔力を沢山食うので 長くは使えん。手短に話すぞ。

エデナから聞いたと思うが、私は急用が出来たため一週間ぐらいお前に会えない。

残念だ。せっかく呼びつけたのに。

だが、まあ、ひびきも『魔力酔い』がでるだろうから、一週間ぐらい部屋でゴロゴロしていてくれ。』


「ええっ!」


『『魔力酔い』を甘く見るな。詳しくはエデナに聞け。そして、エデナの出すチンキは必ず飲め。

お前は薬が嫌いだったと思うから、せいぜい薬酒、いや、サプリメントにしといてやったんだ。』


「ちょっと待って、ばあちゃん皇女様」

『なんだそれは。ヴァーヴェリナ様だ。』


「ヴぁーべりな様!」

『ちーがーう。』


「ヴァーヴぇりナ様。」

『発音下手くそだな。『ヴァー』しかまともに言えていないではないか。』


「もう、このくだりはいいじゃん。なら、ヴァー様。せめて召喚した理由(わけ)だけでも教えてよ。」


『ヴァ―様・・・。まあ、それでよい。だが、召喚理由はここでは答えられぬ。言っただろ、これは『スマホ』と同じだ。盗聴されているやもしれぬ。』


「あ…。」


『理由は、わしが帰ってから話す。だから、ひびきはくれぐれもチンキをちゃんと飲んでできるだけ身体を休めろ。わしが帰ったらすぐ働け。わかったな。』


「わかったよ。」


『連絡が取れそうなときは、またこちらから連絡する。ではな。』

そう言うと、鏡の中のヴァ―様の姿は次第にボケていき、普通の鏡に戻った。



「と、言うわけでございますので、ひびき様。この一週間はゴロゴロしていてください。」

鏡での通信が終わると、エデナは俺に話しかけた。


ゴロゴロって。。えーと。

異世界召喚して(呼びつけといて)仕事を与えないなんて、パワハラ上司か。


「でも、そんなにゴロゴロするのはちょっと…。俺にできることがあれば、何かさせていただきたいのですが。」


「いえ、そんなに慌てずに。『魔力酔い』を直すのが先でございますわ。」


「『魔力酔い』って確か、気分が落ち込んだり、やる気が出なかったり、体がだるく感じるんですよね。俺、全然そんなことないですよ。早くこの世界に馴染みたいし。」


「ひびき様はまだ、気持ちが(たかぶ)っていらっしゃるからだと思います。『パに食ってる』というのでしょうか?

『魔力』は意識しないうちに少しずつ体にしみこんできます。昂っているときは感じないかもしれませんが、気持ちが落ち着くと、どっと疲れが出てきますよ。」


「…。そんなもんですかね。しかし、何もしないでゴロゴロするのって、慣れてないな。。。」

 - スマホもないし、テレビもないし


「ん、、わかりました。では、ふつつかではございますが私がこの国、この世界のことを少しづつお教えしますね。」

「ありがとうございます。」



エデナがベルを鳴らすと、外にいた侍女がいくつかの小瓶をもってきた。



「何が入っているかわからないと不安かと思いまして、目の前で調合しようと瓶ごとを持ってまいりました。」


エデナは俺の前に、茶色や黒、赤、黄色っぽい液体が入っている小瓶を並べた。ラベルに何か書かれてる。あ、読める。

ローマン、リーデン…。と、下は日付かな? そうか、昨日言っていたハーブから作ったチンキというやつか。


「ひびき様、今のご気分はいかがですか?」

「えっと。特に悪くはないです。」


「身体が疲れとか、悪いことを考えたりしない?逆に昂ってしまうことなどは?」

「特にないと思います。」

 俺はすべて即答した。

 

「ふふっ。そうですよね。いきなりこんなこと聞かれても困りますよね。」

 エデナは笑みを浮かべて言った。


「…もう少し、お話しても大丈夫ですか?」



ひびき君 即答の理由。


*********************


エデナ:「悪いこと考えたり、昂ることありませんか?」


ひびき:「悪いこと、昂ることですか?」

    

    ひびき、心の声

    _ エデナさんの怪しからん胸の事を考えること? 

               いやいやいやいや 邪念よ去れ、されっ!。_



   「いえ、ありません!!」


******************************

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