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第8種『ハカセの解説:ワールドガイドファイナル:質疑応答編』

まだまだ続くよ! ワールドガイド。前2話分で言い切れなかった内容を少し補完します。

あれからハカセの解説もとい講義は続いていた。


「おっと、うっかり忘れていたよ。講義の最後には質疑応答がつきものだ」

 ハカセはしまったという素振りの後、舌を出してウインク。なにっ、その仕草は。ドキッとするから止めろ!


「と、いうことで、何か質問はあるかね?」

 俺の動揺などツユ知らず。ハカセのペースで淡々と進行していく講義。かろうじて俺は平静を装い気になっていたことを尋ねてみる。


「なあ、種族間のパワーバランスはどうなってんだ?」

「いい質問だね」


 講義に熱心な生徒を見つけたからか、暖かな眼差しと微笑みを向けるハカセ。

「魔力物理双方加えた力比べ的な形だと、ドラゴン>鬼>エルフ>獣人>セイレーン及びハーピー>ドワーフ=人間、となる。だが、ドワーフは力と技術力で勝り、人間は魔法など合わせたバランス力で勝るとか、大量に組織すれば不利を覆せたりもできる。加えてセイレーンやハーピーの持つ『歌』など、特殊能力をうまく使って戦場を操作出来ることもあるから、ことさら軍事バランス的なことになると以外や以外、各国拮抗しているんだよ。ただしドラゴン国と鬼国は別な。ヤツらは別格」


「やけに念押しするよな」

「弱いドラゴンでさえ手練れが100人群がってやっと1体倒せるかどうかになる。強い種はそれこそ比率が千人万人まで跳ね上がるものだよ」


「ドラゴンは最強種だから分かったけど鬼国が極端に少ないな。これで国の体裁たもてんのかね?」

「彼らがかつて人類が神から与えられた権能、すなわち『スキル』をほぼほぼ極めているからかな。彼らは出生数を制限してまで血を徹底的に管理し世代を繋いだ。結婚には血統と保有スキル的な確固たる『理由』がないと認められないほどに。そして長い長い時間をかけて、その自らに潜むスキルを熟成させていったのだよ。ゆえに周囲の人々は彼らを怖れ、『鬼』と呼んだ。そして各国は彼らを国としての体裁を与えてまで、囲わざるをえなかったんだ」


「競争馬の交配や、犬のブリード的な?」

「そのとおりだ。いまや『スキル』は彼らのためにあるとでもいうほどまでに昇華されている。目下、ドラゴン国に次ぐやっかいな国だぞ。うかつに手出しはしないことだな」


「わぁーかってるよ。つーか、そんなこっちから仕掛けるようなことはしねーよ」

「まぁ、そのための『外交』であり『外務大臣』だからな。せいぜいもてなして先方のご機嫌をとってきてくれ」


「言われなくてもっ、善処するさ」

 そう念押ししなくても、基本、真面目にヤるよ、俺は。

 と、ついでに気になったことを聞いてみる。


「寿命とかの差は?」


「人間が大体60~70年くらい。かつての寿命は50年ほどだったけど、魔族が薬を処方することでわずかに伸びたかな。まぁ、彼らが出す薬は効果いいからね」


「他の種族は?」


「ドワーフが人間の倍、魔族はそのさらに倍生きるかな。セイレーンやハーピー含めた獣人は人間と寿命どっこいどっこい。鬼はスキルを極めてはいるが、もともと人間なせいもあってやはり人間と同じ寿命。というとこかな」


「そんなに寿命差は桁違いに離れてるわけではないのな」

 納得する俺。だが、ハカセは「例外もあるからね」と一言。


「あとは、この世界にはこんなことわざあある。『エルフは千年、ドラゴンは万年』というね」

「まさに言葉通りって訳だ」


「ただ、エルフは多種族に対し排他的かつ攻撃的なこともあり、他国との戦争で命を落とす者が多い。また、ドラゴンに関しては『万年』と言われてはいるが実際、彼らの寿命を見届けた者もおらず正確なところは不明な点も多いがね」

 やはり特定以上前の年代(まあほとんど古代レベルか……)の情報は把握できないんどよなぁ。俺が邪神のポンコツ具合に、内心ため息をついていると、ハカセが「忠告だよ」と意味深な笑顔と共に近付いてきた。


「ああ、最後にひとつ」

「なんだよ」


「この世界の人類はなぜか血気盛んで争いごとが大好きだ。加えてその反動か生殖欲も旺盛。で、子供を産み育てることが出来る女性は尊重される傾向にある。各国の代表が女性なのもそれを体現している」


「つまり、どーゆうことだよ」

「彼女たちは総じて超がつくほどプライドが高い。言動にはせいぜい気をつけることだね」


「脅すんじゃねえよっ」

「それだけこの外交に期待しているということだよ。大丈夫だいじょうぶ。みんな優しいから」


「絶対っ、嘘だっ! まあ、男は度胸。出たとこ勝負だ」


 またしても、脅すかっ。この女は。こっちは虚勢張るのでいっぱいいっぱいだというのに。ひくついた俺の顔をまじまじと見たハカセはふうっと息を吐いて一言。


「そんな顔しないでくれ。知識が無いよりはいいだろう?」

「それはそれは感謝しておりますよ。ハカセ殿。では、玉砕して参ります」

 緊張が強くて、おちょけた言動になったが、ハカセは真面目な顔で話す。


「理論上死ぬことはない。後はキミのM男ぶりをどこまで魅せられるかだ」

 さらにハカセは俺に密着し、ふいに抱きしめてきた。

「頑張って行って来なさい。私は待ってるから、気にせず、楽にな」


 どこまでも柔らかく、やわらかく、なんか母親に送り出される兵士の気分だった。これで今まで張ってきた気が落ち着いたんだから不思議なものだ。だが、さすがに照れくさくなり、


「ああ、ヤッてくらあ」

 少しハカセをふりほどくように勢いよく立ち上がり、片手を振って別れる。振り返りはしない。これから俺は俺の戦場へ行く『種付け外交』という主戦場に。


「行ってこいっ」

 最後は快活な、いつものハカセの声が俺の背中を押してくれた。




 時は戻って、種付け外交初日。回想を終えた俺は性交部屋のベッドに腰掛けたまま、何の気も無しに辺りを見回す。いよいよとなってくると、なんか落ち着かない。「まったく」何かに文句でも言いたげな心理が働いたのか言葉が漏れる。何の雰囲気作りかは知らないが、真っ暗な部屋に魔方陣の光だけが妖しく揺らめいていた。


「はぁ」


 俺が思わずため息をついた時、部屋の雰囲気が変わった。なんて言うか、そぅ、空気が。


 部屋の奥に長身の人影が立っていた。目の位置は紅。レーザーポインターよろしく俺を射殺すような強い光をたたえて。


「いよいよ、お迎えがぁ、きたかぁ」


 俺の呟きに返す者は無く、ただただむなしく響いた。

これにて長々と語ったワールドガイドは終了。……結局3話費やしてしまった(汗)

この次から本編に戻ります。

この調子だと子ども達が出てくるのはだいぶ先になりそうです。

ほんとゆるゆると待ってて下さい。

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