3 転生の理由
あれから、
すぐに馬車に乗り、
ここに戻ってきた。
わが家へ・・・。
そして、今夜はやることがある。
そう・・・
・・・彼女に会うんです・・・。
「リル、悪いんですが、今日は一緒に眠れないんです。
ごめんなさい。」
「・・・残念・・・じゃあ、宿舎に帰る。」
「ごめんね。」
私は彼女の頭をそっと撫で、
寝室に入っていく。
そして、パジャマに着替え、
しおりを取り出す。
それを心臓のところに置き、眠る。
意識は徐々に沈み・・・
僕がよく知っている場所にいた。
彼女の書斎だ。
「あら、もう来たの?
あと少しで読み終わるから待ってて。」
彼女は机の前で本を読んでいた。
先ほど私が彼女に送った写本だ。
あの元冒険者の人生が記されたもの。
彼女は集中してそれを読んでいる。
私はこんな彼女を見るのが好きです。
彼女が本を読んでいるときは、
特にコロコロ表情が変わる。
そんな様子を見ていると、
私は彼女が本当に本を好きなのだとわかって嬉しくなる。
私と同じなのだなと再確認できて・・・。
そんなことを考えながら、
私は紅茶を入れる。
・・・さて、ちょうどいいですね・・・。
「どうぞ。」
彼女に紅茶を差し出す。
彼女は静かに本を読んでいる。
そして時折、
紅茶を口に含む。
そうしてこんな穏やかな時間を私は彼女を見て過ごす。
それも数時間のうちに終わり、
「・・・ふう・・・読み終わったわ。」
彼女はどこか語りたくてうずうずしているようですね。
私から話を振る。
「いかがでした?」
「う~ん、そうね。
先日の鉱夫の話よりはるかにわたし好みね。
・・・あれは・・・ね・・・。」
「・・・確かに・・・あの方の最後に思った言葉も強烈でしたからね・・・。」
「ああ・・・あはは・・・。
○○って娼婦と犯りたかった・・・だっけ・・・。」
「・・・ええ、流石に奥さんや子供にそれを伝えるのは憚れましたので・・・。」
「まあ、当然ね・・・そんなの受け止めてどんな生き方をしていけってのよ・・・。」
「・・・それにこの話合いも・・・。」
「・・・猥談みたいだったわね・・・。」
正直、もう2度とそんなことは遠慮願いたい。
それに比べてこれは・・・っとそうでしたね。
「話を戻しましょう。
私は元冒険者の純粋な愛・・・これが何とも言えませんでした。
英雄なんかではそうそうないこの素朴なそれが・・・。」
「そうそう、そうなのよっ!
こんな風に愛されたら、もう何もいらないわっ!」
「ええ、私もそんな愛に憧れを覚えます。
最後に妻を庇ってなくなるところなんてもう・・・。」
「まあ、亡くなっちゃったっていうのは残念だったけれども・・・。
あとは・・・。」
なんていう風に人の人生という本の批評を行うこと・・・いや、感想ですか・・・。
実はこれが次の転生に大きくかかわることなのです。
これが私がここに転生した本当の役目。
・・・人の人生という本を読むこと・・・。
これは私と本の物語・・・。