1、久々の・・・
転生から22年の月日が流れ、
「いらっしゃいませ。
こちらは遺言屋ラストワードですが、お間違いはないですか?」
「・・・。」
私の隣にいる子は無言でお客さんを見ている。
お客さんは言い辛そうに口を開く。
「・・・はい、祖父の記憶を読んでいただきたいのですが・・・。」
・・・間違いではなかったようですね・・・残念です。
「・・・お悔やみ申し上げます。
どうぞ、こちらにおかけください。」
「どうも・・・。」
カウンターの前の椅子の客人は腰を掛ける。
「で?
祖父の記憶を読んでほしいとは?」
「で、ですから、祖父の遺言をお願いしたいのです!」
彼は少し呆れ気味にそう答える。
「・・・なるほど・・・。
普通の遺言書を用意できなかったということは、
なにかで急死なさったので?」
「・・・ええ、先日、ある魔物が私の村を襲いまして、
休戦中というので油断したのでしょう。
防壁をすり抜けたようで・・・。
その時運悪く・・・。」
彼は目元を隠し、そう言う。
「・・・そうですか・・・ご愁傷様です・・・。」
「・・・ありがとうございます・・・。」
「では、本題に入りましょう。
場合によっては急がなければならないので・・・。」
「っ!?
急がなければならないってどういうことですかっ!?」
・・・なるほど・・・。
「・・・もしかしてお知りにならずに・・・?」
「祖父は先日亡くなったのですが、
大丈夫なんでしょうか!?」
「・・先日とは何日ほど前で?」
「2日前です。」
「よかったです。
まだ問題ありません。
1週間経っていたら、危なかったですが・・・。」
「・・・ふう・・・よかった・・・。
ところでなぜ1週間なので?」
「魂が肉体に止まれる限界が普通の人間の場合はそれくらいなのです。」
「・・・なるほど・・・。」
「では、あと数日ですが、いつお宅に伺えば?」
「できれば明日にでも、
父が親戚一同を集めるそうですので・・・。」
「かしこまりました。
では明日・・・料金の方は1月以内に役所の方でお願いします。」
「えっ、ここではなくですか?」
彼はひどく驚いたようにそう言った。
「ええ、一応軍属ということになっていまして・・・。」
「・・・ああ・・・あなたが・・・。」
「・・・では後日、そこに向かいますので・・・。」
「お願いします。」
彼はそう言って去っていく。
「よく我慢したね。」
「ん。」
私は彼女の頭を撫でる。
そして次の日、
その村に着いていた。
・・・親戚一同と言ったのに・・・
・・・子供がいない・・・。
それどころか村人も・・・
・・・けれど、そこら中に気配を感じる。
・・・やれやれ・・・
「いやあ、これで婆さんも喜びます。」
ひどく嬉しそうにそんな言葉を並べ続ける。
「最後に声を聴けるなんて・・「もういいでしょう?」・・・はっ?」
この男の戯言に付き合っている暇はありません。
「最近なかったので、もう来ないだろうと思っていたんですが・・・
・・・残念ですよ、本当に・・・
リル任せるよ。」
「ん、わかった。」
彼女は虚空から太刀を取り出し、
「きゅ、急に何をっ!?」
先ほどの男に向かって振るう。
「えい。」
シュパンッ!
男は避ける。
そして、驚いた表情から一転、
「ちっ!
ばれちまった。」
不機嫌そうな顔に変わる。
「おい、兄ちゃん?
なんでわかった?」
「・・・・・・。」
「ちっ、だんまりかよ・・・おい、一気にやっちまうぞっ!」
「「「「おうっ。」」」」
30人ほどの男たちに囲まれる。
・・・けれど・・・。
「えーい!」
シュパンッ、シュパンッ!
キーン、バシャーン。
こんな声の下、
武器は弾き飛ばされ、
「ウオ~~~~ッ!」
吹っ飛ばされていく。
そんなリルを先に倒すのが難しいと悟ったのか、
私の方に集まっていく。
「へへっ、もともと狙いは兄ちゃんだ。
こっちさえ攫えば問題ないだろうがよ。
足止め頼んだぜ!」
「「「へいっ!」」」
10人ほどでリルを足止めしようとする。
リルは私の方を心配そうに見つめるが、
ウインクしてそれに応える。
・・・問題ありません・・・。
すると、普段の無表情戻り、
敵と相対していく。
「随分余裕そうじゃねえか?」
ナイフが飛んでくる。
「いえいえ。
そんなことはっ!」
掴み投げ返す。
「うっ!」
投げた男は避けたが、後ろの敵に当たる。
「っ!?
お前・・・戦闘はてんでダメなんじゃあ・・・。」
「?
誰がそんなことを?
一応は軍属だったんですよ、そんなはずないじゃないですか。」
身体に魔力を纏わせ、
相手との間合いを詰める。
「お終いです。」
心臓に向け、雷を打ち出す。
バチンッ!
辺りは静まり返る。
そして、リルの方から爆発音が聞こえ、
リルは太刀を肩に担いでやってくる。
すると、他の連中は逃げていく。
・・・やれやれ・・・また帝国ですかね・・・
休戦中だと言うのに・・・。
さて、急ぎますか・・・。
私は懐から
ある紙を取り出す。