グルニチェ灰の森教会
この日、グルニチェ灰の森教会には、多くの人が集まっていた。波塁、結火、レナータ、ジョヴァンカ、ヤクブ、ハンナ、イレナ、アレシュ。カミンスキ家からも、モイミール含め使用人5名、そして、クレメント率いるスラムの住人20名ほど。スラムの住人は労働許可証を取ってこの町に入った。スラムの子供たちは、拠点ができたら呼ぶ予定となっている。
役人が、差押えの紙をはがして回る。すぐに終わってさっさと帰って行った。
「みなさんおはようございます。教主のクレメント・ハラディルです。この度は・・・以下略」
クレメントが挨拶をして、教会の復旧作業が始まった。壊れているところはほとんどないので、掃除、草刈りなどが中心となる。作業の主力はスラムから来た者たちが行った。ハンナ、イレナは、水や、食事の準備。ジョヴァンカ、結火はやはり礼拝堂の地下に転送用の魔方陣を作っていた。ここができれば、グルニチェに借りているジョヴァンカの部屋は必要なくなる。
教会は、200人ほどが座れる礼拝堂、その隣に食堂、厨房、いくつかの部屋がある平屋の建物と。三階建ての建物がある。平屋の建物は、教主の執務室など教会の業務で使用する。三階建ての建物は、1フロア500㎡程度あり三階には、波塁が入り活動の拠点とする。1階と2階は住居として利用する。
一日目は掃除で終わった。
二日目は、タルシェフ村の教会の者とのミーティングを行っている。グルニチェ教会の運用に人手が足りてないので、当面イレナが手伝いをする。入れ替えに、ユリアが今日、明日にでも、タルシェフ村の教会に到着することになっている。特に重要なのは、奇跡を見て教会に来た者に対して、どのように導いていくかである、矛盾が出ないように、ヤクブとクレメントで協議し、ポイントを紙に書き留めていく。
波塁、結火は引っ越しだ。とはいっても荷物がないのですぐに終わった。
レナータは、波塁のもとで働くにあたり、1年ぶりにグルニチェに帰ってきた。
まずは自宅に戻る。1年ぶりの自宅は変わっていなかった。夫はこの戦争に従軍していると思われる。部屋の中も時間の経過を感じさせないくらい以前のまま。1枚だけある風景画、花瓶も、乗馬用の靴も同じ場所にある。
一休みした後自宅を出て、歩いて5分ほどのところにある義父の家、カミンスキ家へ向かった。入口をはいるとすぐに、顔見知りの使用人が気付いて、ヤチェックのところへ案内してくれた。
ヤチェックは外見上変わったところもなく、いつもの笑顔で迎えてくれた。そして、病気が治ったことを喜んでくれ、今晩食事会をしてくれることになった。
今晩はカミンスキ家で、レナータの回復祝いの食事会を行っている。出席者は、義父、義母、義兄夫婦と甥と姪、義妹。義妹は今年28才になるがまだ未婚だ。あと、レナータの夫が揃えば全員となる。
豪華な料理が用意されワインも美味しい。カミンスキ家の人たちはみんないい人だ。レナータの体を心配してくれ、和やかな雰囲気で食事している。しかし、1年間の間、手紙を1回義母からもらったものの、誰も見舞いに来なかったのが引っ掛かっていた。特に夫だが。
レナータは、食事会が終わって自宅に帰ってきた。夫がいなかったせいか、少し打ち解ける事が出来なかったと反省しながら、食卓の椅子の腰をおろしてお茶を飲んでいる。そして、この1週間は楽しかったなと、タルシェフ村教会での出来事を思い出していた。
子供たちはみんな素直でいい子だ、ハンナはちょっと厳しいが、子供たちが一番懐いている。ハンナと、イレナも本当に忙しく働いているが生き生きとしている。レナータも子供たちに勉強を教えたり、家事を手伝ったりしたが、子供たちの笑顔は元気をくれる、
(私も子供が欲しかったなあ・・・あ、まだ可能性あるんだった)
(明日からまた頑張ろう、こんなに期待されているんだから、)
レナータは、1年ぶりに自分のベッドに入ったのであった。
それから、2週間ほどが過ぎた。
その間波塁は、口コミで広まった治療依頼に応じて、50人ぐらいの治療を行った。その成果もあって、教会を訪ねてくる人が増えてきて、教会をどうにか運営できるぐらいの寄付金も集まってきた。
また、クレメントはなかなか話がうまい。ジョークも交え楽しい話で人々を惹きつけている。そして、スラムの子供たち、15人も無事こちらに移ることができた。まだ、子供の面倒を見る人手は足りていないが、スラムの子供たちは自分たちだけで何でもやってきたので、それほど手がかからない。
そんな時、ゲオルグが訪ねてきた。さすがに大聖教会連合所属の聖騎士になるのは無理だったが、戦争で人手が足りていないので、グルニチェ領主直属の警備隊に所属することが出来た。但し、下っ端の兵士で、主に城外周辺の見回りをしているらしい。本人は、「すぐに成り上がる」と言っていたが。そのゲオルグの情報では、やっと、サンラジャールとの戦争も終わるらしい。といっても、東方の国がサンラジャールへ侵攻したため、こちらとは休戦になるようだ。




