5,暗雲‐ターニング‐
実験的にしばらく文字数を調整します
「やったな、ムート! やっぱすげーよお前!」
「まぁな」
やっぱりこいつはすごいやつだ。1位の実力は伊達じゃない。
「あんな局面でよく逆転できたよな! 狙ってたのか?」
「その通り……と言いたいところだが違う。アレは本当に運が良かっただけだ」
ムートの最後のドローが勝敗をひっくり返すだけのカードだった。それが勝因として大きい。
だけど、きっとそうじゃない。あきらめないムートの心が、カードを、何より勝利を引き寄せたんだ。
「それは謙遜しすぎだよ」
俺たちの会話に入ってきたのはプリコ。どうやら感想戦がしたいらしい。
「いや、そんなことはないさ。もう少しで負けるところだった。運が良かったんだ」
「運、ね。……本当はあのドローも狙ったものだったりして」
「……何が言いたい」
「深い意味は無いよ。ただ思ったことを言ってるだけ」
プリコはにこやかに言うが、なんとなく言葉の節々にとげを感じる。落ち着いている風に振る舞っているムートも、なんだか様子がおかしい。ムキになっているというか。
「ま、いいや。楽しかったよ。対戦してくれてありがとね~」
「こちらこそ」
プリコはステージから飛び降りると、右手をひらひらさせて別れを告げた。ムートはそれに対し、形式的な返事で応じる。俺はというと、ここで何か口に出すのが場違いに思えたので、とりあえず、歩き去るプリコの背中を黙って見送った。