16,予選-ガンスリンガー-
あれこれと悩んでいるうちに大会当日がやってきた。出来る限りの事はした。あとは出来る限りのことをするだけ。
「にしても……すごい人の数だ……」
会場へ向かうために電車を何本か乗り換えているが、乗り換えるたびに人が増えていっている気がする。やはりみんなR-ageに向かうのだろう。
「なぁ、ル……」
おっと、そうだった。今日ルカは一緒じゃない。
会場では付いてきてセコンドみたいなマネをすることもできないだろうし、ということで別行動だ。
普段の登校で自分が体験している程ではないが、混み合った電車に揺られ、会場に着いた。やはり人が多い。
「えっと受付は……入り口でやるのか」
スマホで案内を確認し、顔を上げる。目に入ったのは入り口から果てしなく伸びる行列だった。
あれに並ぶのか……時間通りに入れるのか?
心の中で悪態をつきつつも並ぶほかない。
最後尾へとひたすら歩く。長い。いつまで続くんだ、と思いかけたところで終わりが見えた。
「R-age予選参加者の列、最後尾はこちらになりま〜す!」
大きな看板を持ったスタッフさんが声を張っていた。こういうのはバイトなのだろうか。だとしたらシャリバに興味はないのだろうか。
どうせ暇になるであろうこれからを、考え事に費やすことにした。
…………
長い。ようやく入り口だ。もうかなり待った。
おかげでバイトのことやらあまりの人たちのことやら考え続けて飽きてきてしまったところだ。
一気に進んで、止まって、また進むとすぐ止まる。
渋滞や行列の基本だが、かなり疲れる。なぜスッと行けないのだろう。
前方に迫る入り口付近を眺めると、少し特徴的な連中が目に付いた。
「すみません!!!!!ゲームのカードを落としてしまったのですが!!!!」
「あ、それ後でほんじゃあ探しますから、あっと……車庫まで来てください。ね? ちょっとも、大人しくしててくれる?」
「シャリバ手裏剣!!!シュシュシュシュ!!!!!!!」
「カード散らかさないでください!」
「風呂?入ってませんけど?w」
「他のプレイヤーに迷惑がかかるので清潔な状態での参加をお願いします……」
あれか……渋滞の原因。
騒動を横目に会場に入ると中はかなり広くて、人の多さが気にならないくらいだった。
「……」
規則正しくテーブルが並べられている。そのテーブルの全てにプレイシートが敷かれており、あぁ、ここで大会が始まるんだよなぁと実感させられる。
「まず開会のセレモニーがあるのか……」
ドーム内奥に見えるステージに目をやる。シャドウリバース公式大会 R-age 予選大会と掲げられたプレートが上の方に配置されている。
その下には大きなスクリーンがあり、現在の会場の様子が映し出されている。万引き防止のカメラ映像か何かかよ。
ステージ手前には徐々に人だかりができつつあり、なんとなく自分も行った方がいい気がしてくる。
「とりあえずあれに混じるか」
集団は騒がしくが、決して一つの団体ではなかった。ほとんどの人が2、3人で参加しているようでいくつもの群れがそれぞれ会話を白熱させているだけのようだ。
確かなのは、みなシャリバを会話の中心としていること。みんなほんとにシャリバが好きなんだな。
なんとなく嬉しい気持ちに見舞われていると、突然辺りが暗くなった。
「シャドウリバースの頂点を決める大会……R-age」
スピーカーから男の声が聞こえる。
それを合図に、皆が雑談をやめ、一点に意識を集中させる。その先には、暗闇にまみれながらもぼんやりと人影が写っていた。
「今日! ここで! R-ageへと進む権利をかけた闘いが始まる!」
言い終わる直前、天井のライトが一気に照らされる。露わになった人影の正体は、シャリバプレイヤーなら誰もが知る人物だった。
「俺はいくす! みんなの熱いバトルを見届けさせてもらうぜ!」
いくすが頭上に思い切り拳を掲げて高らかに叫ぶ。
それに当てられ、参加者たちのテンションも急上昇だ。
カリスマプレイヤー、いくす。
動画投稿サイトやイベントで見ない日はないシャリバプレイヤーだ。その正体は、シャリバの運営元である、ライノゲームズ社員……ではないかと言われている。
実際のところ、彼の素性は不明だ。
しかし、彼の的確な環境分析、デッキ構築、プレイング、そして何より熱血系というキャラクターは高い人気を博している。
「ここ最近の俺は今日を楽しみに生きていたぜ!みんなもそうだよな!」
ノリのいい奴らがウェ〜イと叫んで応じる。
ドームの外では抑圧された外向性が、この空間で爆発しているんだ。
「唯一残念なのは、俺が参加できないこと! 俺も闘いてえ……が、今日は見るに徹するぜ! みんな、熱いバトルを頼む!」
言い終わると、体中が震えているように感じるほどの歓声が響いた。
「よし、そんな君たちに渡すものがある! まずはコチラを見てくれ!」
いくすは左肩を後ろに下げ、左人差し指でスクリーンを指差した。それまでいくすが映し出されていたそこには、大きくこう書かれていた。
「“シャリバ公式サポートアプリ配信開始!”……?」
「君たちには、このアプリをインストールしてもらう! ……インストールしてくれたかな? 早速説明に移るぞ!」
え? ちょ、速い速い。焦ってインストールするが、周りも同じようにオタオタしていたのをみて少し安心した。
インストールし終えたアプリを起動すると、カード検索、デッキなど、いくつのかのメニューが表示された。さらに画面をスクロールさせると、なるほど、SNS的要素もあるのか。
「これはシャリバに必要なものがオールインワンの優れもの! その機能をいくつか紹介しよう!」




