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「そのために……君から言ってくれないかな?」
「俺から言う?」
「友人である君が正面から向き合ってくれれば、彼の心にも響くと思うんだよ」
正面から向き合う……つまり、バトルフィールドで対峙する、と言うことだろうか。
「けど、どうやって……あ」
そうか、ムートが大会に参加するのは会長の推薦があったからだ。
「気づいたね。そう言うことだ」
「はい。俺が大会に参加し、そしてムートと戦う。そのために生徒会が俺を推薦して、参加させる……ですね?」
「いや、違うが」
「え?」
違うの?
「そう何人も推薦をポンポンと出せるわけがなかろうに。君には普通に予選から始めてもらう」
「予選……? 招待制の大会じゃないんですか?」
「それは決勝ラウンドの招待枠だけだな。普通に一般枠もある、というかそちらの方が多い」
生徒会長としてのバックアップには一切期待できないようだ。
それなら正直、わざわざ大会にでなくとも直接ムートとバトルすれば良いようにも思うのだが。
「あの、それなら直接バトルしにいっちゃダメなんですか?」
「もちろんそれでも良い。それが現実的な手段なら、な」
現実的も何も、その方が手っ取り早いし、普通に良いと思うのだが、違うのだろうか。
「出席日数とかもあるし……そのうち学校に来ると思うんですけど」
「いや、来ないね」
「何故そう言い切れるんですか?」
「彼は特別だからだよ。学校長が裏で目をかけている。その辺の細工は万全だろう」
俺が知らないところでもアイツは期待されてるってことなのか。
「わかりました。なら、頑張ってみます」
「それは良かった。我々も出来る限りサポートさせてもらう」
ストン会長が立ち上がり、こちらにゆっくりと歩み寄ってくる。俺はそれにつられて立ち上がる。
「協力体制といこう。よろしくな」
右手を差し出してきた。俺も同じように右手を差し出し、応じる。
「こちらこそ……よろしくお願いします!」
…………
「というわけで、R-age参加を目指すことにした」
「良いわね」
生徒会室ので話を終え、校舎から出てくると校門のあたりでルカが待っていた。今は、会話の中で聞いたことをあらかた説明し、これからの方針を明確にしているところだ。
「それで? 予選はいつからスタートなの?」
「ホームページに載ってる日程だと、来週からみたいだ」
参加費無料、事前申込もメールアドレスを登録するだけ。しかも会場は都心の大型ドームを使うとのこと。
交通の便が整っている点からも、当日は多くの人が参加するんだろうな。
「デッキ、練り直した方がいいかな……」
試合形式は、勝ち抜き戦。
勝った者はテーブルに残り、負けた者はテーブルの対戦待ち列に並ぶ。これを制限時間いっぱいに繰り返し、戦績で順位をつけるという方式だ。
ガンスリンガーで重視されるのは二つ。
第一に、バトル時間を短くすること。
第二に、負けないこと。
俺のデッキは、それなりに安定性があるので、どんな相手でも五分五分の戦いはできる。
しかし、欠点もある。まず、デッキの動かし方がシステム化されていないのでプレイミスが起きやすい。
さらに、速攻をかけることができないので試合時間が長い。
そのあたりを考慮すると、俺のデッキはとてもガンスリンガー向きではない。
「どうすっかな……」
「何を悩んでいるの?」
うんうん唸る俺を見かねてか、ルカが声をかけてきた。少し相談に乗ってもらうか。
「いや、実は」
今回の予選はガンスリンガー形式であること。そして、自分のデッキはそれに向かないことを伝えた。
「というわけなんだ」
「なるほど。それで? 変えるの?」
「う〜ん、変えようかなと思うんだが……来週だからな。新しいデッキにしても手に馴染むかどうか……」
「なら変えなくていいんじゃない?」
「そうかな?」
「ええ。下手に使いづらいものを使うくらいなら、今のを調整しましょう」
たしかに、そう言われるとその方がいい気がする。
「それに、みんな同じように考えるとしたら当日は速攻系のデッキが多くなるはず。それに対する対策を張っておけば勝率も自然と上がるわ」
メタ、とは『高次元の』という意味の言葉だ。
主に、今流行っている〇〇デッキには××デッキが強いのでこれを持っていこう、という風にデッキ同士の相性を駆使して戦うことをゲーム外ゲームと呼んだりして用いる。
野球で例えると、あの投手はストレートを多用するから、こちらもストレートが得意な打者を当てよう、というのがゲーム内戦術。
あの監督は短期で挑発に乗りやすいから、試合前に煽って冷静な采配をできなくしておこう、というのがゲーム外戦術だ。
ゲーム内外問わず、メタという単語は使われているので、実際かなり紛らわしい。
「そうだな……とりあえず今のデッキをひな形にして、最近のデッキの分布を見つつ少しずつ手を加えていくことにする」




