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13,


引いたカードは……この状況をどうにかするようなものではなかった。


「ちくしょう……ホントどうすりゃいいんだよ……」


唇を噛み締めながらも、状況を確認するため、目の前を見渡す。


相手の戦場にいるクリーチャーは3体。

3/3の《エルフ》が2体に、2/2の《エルフ・ロード》が1体。


「……ひとまず、ロードを倒すか……」


《エルフ・ロード》を倒せば、2/2クリーチャーが1体減るので、受けるダメージが−2。


さらに、《エルフ》2体にかけられている+1/+1修正がなくなり、さらにダメージは−2。

つまり、計4点のダメージを軽減することができる。


しかし、こんな序盤でそれほど多くの除去カードを切りたくない。ここまでストンは3枚のカードしか使っていないのだから、確実に攻め手はまだあるだろう。


「……考えていても仕方がないか。俺のターン! ドロー!」


引いたのは……。


「! 良いカードだ。アクティブ! 《ドッペルゲンガーの爪痕(そうこん)》発動!」

「! ほう……」

「《ドッペルゲンガーの爪痕》は、場に同名クリーチャーが複数存在する場合、それら全てを破壊する!」


2体存在した《エルフ》が、同時に消滅する。

これで残ったのは《エルフ・ロード》1体のみ。

こいつは次のターンでなんとかすればいいだろう。


「ターンエンドだ」

「わかった。ターンをもらう」


2体のクリーチャーを削ったわけだから、相手の戦力も大きくこそぎ落とせた。

という認識が誤りだったと、すぐに気付かされた。


「《エルフ・ロード》2体目を出す」

「何!?」


またしても《エルフ・ロード》が召喚されてしまった。自身はそのパワーアップ効果を受けられないが、2体になればそれぞれの恩恵を受けられるようになる。


「さらに、《エルフ・ディフェンダー》を召喚」


現れたのはまたしてもエルフ。両手で、全身よりも大きな盾を持っている。


「《エルフ・ディフェンダー》は、自分のエルフクリーチャーが破壊される時、代わりに破壊することができる。ちなみに、この効果は1度に複数体が破壊される場合でも代わりに破壊できる」


つまり、たとえ全体除去を撃ったとしても《エルフ・ディフェンダー》が死ぬだけで終わる、というわけか。


「そして、2体の《エルフ・ロード》の能力でステータスが3/3まで上昇」


これで3/3が3体。一気に盛り返してきた。


「さて、そろそろ仕掛けようか。《エルフ・ロード》で攻撃」


攻撃宣言に反応し、剣士(エルフ・ロード)が剣を構えこちらに向かってくる。

対する俺は、為すすべもない。


「くっ!」


ロードが剣を振りかぶる直前に、左腕でかばう。

映像だと頭ではわかっちゃいるが、反射的に手が出るのだから仕方がない。


「まったく……ようやくダメージが入ったよ」


と吐いて、ストンはため息をついた。

普段ならもっと早くダメージが入っているのだろう。デッキの内容からしてわかる。


ストンのデッキはいわゆる攻撃型(アグロ)デッキだ。それも、速効型の。低コストのカードで序盤から攻め立て、そのまま殴り抜く。


そういうデッキは本来、序盤に強い代わりに、中盤から失速し、終盤では完全に止まる。


なぜなら、低コストカードは往々にして低ステータスだからだ。相手が大型のクリーチャーを立てると、その時点で動きが止まる。本来なら。


それを覆しているのが、フィールドカード。

クリーチャーのサイズを上げることで、戦闘に強くなるだけでなく、除去に対する耐性も上がる。


場に出せるクリーチャーは5体までだ。

それが全てエルフクリーチャーなら、アレひとつで+5/+5分の働きをすることになる。


1マナで+1/+1という相場なので、単純に5マナ分のレシオだ。


「ターンを終了する。さぁ、君のターンだ」


…………


苦しい戦いが続いた。

俺のLPは11まで削られ、対するストンは無傷の20。

戦場はなんとかリセットをかけ、更地に戻したが、再び展開されるのも時間の問題だろう。


「私のターン。《エルフ》召喚。さらに《エルフ・ディフェンダー》、《エルフ・サモナー》を召喚」


予想通り、大量のエルフで場が賑やかになった。

さらに。


「《エルフ・サモナー》は召喚時、使い魔たる《トレント》1体を引き連れて場に出る。出でよ、《トレント》」


これで場にあるクリーチャーは、2/2が4体。うち1体を先に倒さなければ、殲滅(せんめつ)できない。


「またディフェンダーかよ……」


アレを突破するのは本当に骨が折れる。

手札には1枚だけ、火力(ダメージ)を飛ばせるカードがある。これをディフェンダーに当てて、もう1枚、全体除去が欲しいところだが……。


「俺のターン……」


たのむ、何か良いカード……!


「! なるほど、それが君のカードの……」

「ドロー!」


カードを引く瞬間、思わず目を(つむ)る。果たして引き当てたのは、およそ望み通りのカードだった。


「手札から《プリースト・スイング》発動!《エルフ・ディフェンダー》を破壊!」


一番厄介なディフェンダーを処理した。これで少し安心できる。


「よし、ターンエンド」

「? エンドでいいのかい?」

「あぁ。好きにかかってこいよ」

「……なるほど。そういうことなら」


カードを引く。そして、さらに展開して……


「迂闊に手を広げるのはやめておこう。何も出さず、全員で攻撃だ」

「……」


まぁ、そうだよな。わざわざ危ない橋渡ることもないか。仕方ない。これをやるのは決まってたんだ。


「攻撃時、手札から《浄化の火》発動! 全ての相手クリーチャーに1ダメージ!」

「だが、私のクリーチャーは全て2/2だ。その程度のダメージでは死なんぞ」

「わかってる! だからこうするんだ! 《浄化の火》の【リブート】! リブートコストを支払うことで、墓地から再び効果を発動する!」

「ほぅ、なるほど」


つまり、「全体に1点のダメージを与える」という効果を2回発動する。合計2点のダメージとなり、エルフクリーチャーは全滅だ。


「よし!」

「なかなかやるな」


うまく出し抜けただろうか? 流石にこう何度も全体火力を撃つわけにはいかないし、そろそろ引き下がって欲しいのだが。


「では、次はこんなのはどうかな?」


まだあるのか……。


「今度はなんだ……?」

「今度のは、君も退屈しないと思うよ。せいぜい楽しんでくれ。出でよ、《エルフ・キング》」

「!」


ストンの宣言と同時に、森のあらゆる方向から風が吹き始める。それはストンの前で渦となり、その中央で何かが形を成した。


そして、黒い影となっていた渦の中に潜む存在が、渦をかき消しながらおどり出る。

王冠をかぶり、鎧をまとった、見るからに強靭そうなエルフだった。


「これは……」


見たことがないクリーチャーだ。新弾のカードか?


「このクリーチャーは《エルフ・キング》。コイツは、墓地にあるエルフクリーチャーの数だけステータスが上昇する。トークンは墓地に行かないのが残念だが……それでも、墓地には8体のエルフがいる」

「ということは……10/10!?」


冗談じゃない。どんな相手も2回殴られればゲームセットな数値だ。しかも、パワーだけじゃなく耐久まで高い。除去しようにもどうしろっていうんだ。


「君のLPは残り11。つまり、なんらかの強化をし、この《エルフ・キング》で攻撃を通せば終わりだ」


わざわざ言わなくてもいいことを言うストン。

あいつは手札に強化を持っているだろうか。たとえ持っていなくとも、プレイヤーにも飛ばせる火力でも握られていればおしまいだ。


「このドローで……たのむ! ドロー!」


俺のターン、渾身のドロー。

……なんとなく、()()()()()()気がした。

「! 一度のバトルで二度も使えるのか!?」


そして、引いたカードを見て、自分でも驚いた。


「……こんなカード、デッキに入ってなかったよな?」


引いたのは、デッキに入れた覚えのないカードだった。あまりにも限定的な状況でしか使えないような、汎用性のないカードだったが故に、採用されなかったはずだ。


だが、たとえ入れた覚えがなくとも、引いたものは引いたのだ。つまり、使ってもいい。


「逆転のカードを引いたぜ。召喚! 《ひねくれ者の強化術師(エンチャンター)》!」

「! エンチャンターだと!」

「《ひねくれ者の強化術師》が場にある限り、()()()()+()()()()()()()()()()()()()!」


杖を持った魔術師、エンチャンターが詠唱を開始する。すると、《エルフ・キング》は片膝を地面につき、やがて地面に倒れ、地面と同化して姿を消した。


「《エルフ・キング》のステータス上昇の効果が全て下降に反転した結果、体力が0以下となり、存在を保てなくなった……というわけか」

「それだけじゃない。この置換効果は《ひねくれ者の強化術師》が場に存在する限り有効だ!」


つまり、エンチャンターが場にある限り、フィールドカードによる+効果も反転する。

あらゆるエルフクリーチャーが+1/+1されるのではなく、−1/−1されるというわけだ。


この意味がわからないストンではないだろう。

こちらの思惑に思い至ってか、ストンは声を上げて笑い始めた。


そしてすぐに語り出した。


「エルフクリーチャー群は、そのほとんどが1/1のクリーチャーによって構成されている。その貧弱さをカバーするために、このようなフィールドを選んだわけだが……まさか裏目にでるとは!」


関心というか余裕というか、ストンには追い詰められているという意識が見えない。ひょっとすると、まだ奥の手を隠し持っているのかもしれない。


「……俺はこれでターンエンドだ。お前の……」

「いや、ここまでにしておこう」


なんだって?


「私のデッキに、そのカードを除去できるカードはない。もう十分だ。降参(コンシード)



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