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「これは!?」
「フィールドカード、《文明失われし森林》」
土の香り、緑の匂いさえしてくるような錯覚を覚える。もちろん、実際の森にいるわけではないが、少なくとも目に写っているのは人類の生活の色が見えない森だ。
「全ての森住まいクリーチャーは、+1/+1のステータス修正を受ける」
「そんなカードが?」
「クリエイションカードは所有者の個性でもある。これが私のそれだ」
両手を広げてそう語る。
「ま、普通の相手には使えないから、そこだけが難点だが。さて、始めようか」
頭上から木の葉がヒラヒラと舞い落ちる。
そのうちの1枚を凝視すると裏面に先行と白い文字で記されていた。俺の先行だ。
「先行は貰う! ドロー! エンド」
「ま、速攻デッキでなければそんなものか」
ストンは左手を顎に当て、ふむふむとうなづく。見たところこちらのデッキを把握しているような様子だ。
「私のターン。ドロー! 《エルフ》を召喚する」
「! 1ターン目から動くのか!?」
現れたのは、特徴的な長い耳を持つ少女。背中に生えた蝶のような翼で飛んでいる。エルフというよりフェアリーといった方が適切かもしれない。
ステータスは1/1だが……。
「フィールドカードの恩恵を受け、《エルフ》のステータスはそれぞれ+1修正を受ける。よって2/2」
エルフの体に緑色の光がまとわりつき、体表からオーラのように沸き立つ。
「終了。君のターンだ」
「くっ……ドロー」
1ターン目にして2/2というサイズで来られるのはかなり厳しい。アレは除去しておかないと2点クロック、つまり毎ターン2点ずつLPを削られていくことになる。
「《邪なる者の聖典》発動! 体力2以下のクリーチャー1体を消滅させる!」
発動の直後、なんの前触れもなくエルフは消滅した。そこにエルフがいた痕跡さえ存在しない。
「早速除去してきたか」
それでもストンの表情には、余裕がありありと見える。それもそうだろう。1コストのカードで相手に2コストのカードを切らせたのだ。交換としては申し分ない。
「私のターン。ドロー」
ストンの手札にカードが1枚加わる。
彼女は少しも悩むそぶりを見せず、次の一手を打った。
「では、これはどうくぐり抜ける?」
ストンが切ったカードは《森の洗礼》。
その効果は……。
「《エルフ》2体を場に出す……」
「その通り。フィールド効果でそれぞれ2/2。君のターンだ」
「ぐぅ……ドロー」
ダメだ。このままでは拉致があかない。
1/1のクリーチャーですら脅威になるのなら、除去では捌き切れない。この森をどうにかする必要がある。
「けど、どうやって……」
フィールドカードなんてカードタイプはそもそも存在しない。ゆえに、既存のカードでは触れようがない。破壊できないのだ。
しかし、このままこのフィールドの存在を許してしまえば、いずれ消耗戦に持ち込まれる。
そうなれば終わりだ。
「クソッ! 今は耐えるしかないのか!」
相手の場には2/2が2体。このままだと4点のダメージを食らってしまう。こんな序盤でそのような展開は避けなければならない。
「《鐘の天使》召喚! ターンエンド!」
文字通り、小さな鐘を右手に持った天使が現れた。この天使は反撃能力こそないが、能力には価値がある。
「《鐘の天使》……【デコイ】を持ち、死亡時にプレイヤー1人にカードを1枚ドローさせる能力を持つ。が、ステータスは0/2。この状況では一方的に討ち取られるな」
「……そんなことはわかってる。これも作戦だ」
そう。作戦を練るための作戦だ。今それでいい、それしかない。
「作戦ね……なら深くは追求しないでおこう。ターンをもらう。ドロー」
先程はほぼノータイムでカードを出したストンだが、今度は手札に加わったカードと今までにあったカードを見比べ、思案している。
「……まぁ、ならこのターンはこちらでいいな。《エルフ・ロード》を召喚」
鎧に身を包み、剣を頭上に向けて持つ、騎士型のエルフが召喚された。雰囲気からして、他のエルフとは違うとわかる。
「《エルフ・ロード》の効果。このカードが場に存在する限り、自分の他のエルフは+1/+1修正を受ける」
「な!? さらにステータスが伸びるのか!」
《エルフ・ロード》が持っていた剣を高く掲げる。すると、周りのエルフたちの士気が上がるのがわかった。これでロード以外のエルフは3/3ということになる。
「《エルフ》で攻撃する。対象は《鐘の天使》」
「《緊急手当》発動! このターン、《鐘の天使》は一度だけ戦闘では破壊されない!」
一体目の《エルフ》による攻撃をもろに受けた《鐘の天使》だったが、緊急手当によってなんとか生き残った。
「ふむ。では、もう一体で攻撃」
今度こそ《鐘の天使》は破壊されてしまった。
だが、ただで破壊される《鐘の天使》ではない。
「《鐘の天使》が破壊された時、カードを1枚ドローする! ……ドロー」




