【北海道と九州が大喧嘩。なぜ?】
「見知らぬ天井だ……」
異世界に来ているのだから、基本的には知らない天井なんだけど。
俺は薄暗い部屋のベッドに寝ていた。
寝る前の記憶がない。
「起きたか、レバ丼」
右手の方から心配そうな声が聞こえた。
「昨日、お化け屋敷で倒れてからずっとうなされていたんだぞ」
あぁ、そうだ。
恐怖のスプラッター体験で俺はぶっ倒れたんだ。
お化け屋敷なんて平気だぜ~とか言っておきながら。
不甲斐ないな。
「ずっと俺を看病してくれてたのか?」
「は? そ、そんなわけないでしょ、全然心配なんてしてないし」
誤魔化すの下手だな~、ユーキィ。
こんなわかりやすいツンデレいるかよ。
「賢者様、大丈夫ですか」
スヮクラも居たのか。
俺が起きたことを知って、灯りを点けてくれた。
いつ起きてもいいように用意してくれていたのだろう、お茶とおむすびの乗ったお盆を持っている。
「すみません、怖いものに弱いなんて知らなくて」
……。
本当に不甲斐ないな。
「いや、全然大丈夫だって言い張ってた俺が悪いんだ」
身体を起こして、かぶりを振った。
病人でもあるまいし、いつまでも心配されていられない。
「ここは?」
ユーキィとスヮクラは目を配らせながら、二人同時に言った。
「あなたが召喚された場所です」
******
「直接会うのはお久しぶりですね、レバ刺しどんぶり様」
――そうだな。
簡単な食事や身支度を済ませた俺は、ホーリエから応接間に呼ばれていた。
「俺ならもう大丈夫だぜ、心配かけてすまなかった」
俺は謝罪をしようとするが、それを手で止められる。
「いえ、長い間異世界で無理をさせてしまったのはこちらです」
深々と頭を下げるホーリエ。
「やめてくれ、お化け屋敷で気を失うような俺が情けないだけなんだ」
「それはそうだと思いますけれど」
頭を上げて、半ば呆れ顔で笑うホーリエ。
をい。
そこは優しくしてくれよ。
「今回の気絶は兎も角、いつまでも甘えっぱなしでいたことを謝罪しているのです」
「なんでまたこのタイミングで」
「それがその、大変言いにくいのですが」
ホーリエが言いよどむ。
日本語下手だしな。
「最初に復旧していただいた神殿がまた機能しなくってお呼びしました」
なんだ、そんなことか。
「また、大喜利すればいいんだろ?」
もはや朝飯前である。
「ええと、つまりですね、一度復旧した神殿が機能しなくなる期間もいるということです。もう日本でも4日くらい経っていますけど、大丈夫ですか?」
そういえば、こちらに来てからそんなに経つか。
こちらではおよそ24倍の時間が過ぎるので、100日近くも滞在していることになる。
この世界を救う大義があったからすっかり忘れていた。
「異世界ハーレム旅行が楽しすぎて忘れてしまったのだと思いますが……」
「……俺の心の声にすら反映していない本音がなぜわかるんだ……」
「バレバレですよ」
腰に手を当てて、ふうと息を吹いたホーリエは少し笑った。
「召喚した私としては楽しんで貰えたのは大変嬉しいのですが、あなたの人生を台無しにしてしまうのは本意ではありません」
大分日本語がうまくなってきたけど、真面目な話ほどちょっと外国人っぽい言い方になるな。
ホーリエは両指を合わせて、目を泳がせながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
「あの~、もうすぐ受験なのですよね?」
……そういやそうだった。
すっかり忘れていたぜ。
「暇そうだったので召喚してしまいましたが、本当は遊んでいる場合ではないと聞きまして」
……ぐうの音も出ない。
「正直な話、ユーキィ達の大喜利の腕はどうです?」
俺は腕を組んで考える。
正直な話、もう十分やっていけるんじゃないのだろうか。
パゲは一発目でウケなくても、何回か答えていいのだ。
3人とも大丈夫だろう。
「ぶっちゃけ、大丈夫だ」
「そうですか、レバ刺しどんぶり様が言うなら間違いないですね」
ほっ、と胸を撫で下ろしたホーリエは、改めて姿勢を直してこう言った。
「いままでありがとうございました。今夜、日本にお戻り下さい」
******
何もかも、みな懐かしい。
俺は初めてやってきた神殿に帰ってきたのだ。
ただし、一緒にいるのはホーリエだけじゃない。
今は4人の仲間と共に、だ。
【お題】北海道と九州が大喧嘩。なぜ?
日本ならではのお題だが、島が喧嘩というのは異世界らしいお題でもあるな。
北海道と九州の基礎知識についてアールァイが説明する。
ボケる予定の無いホーリエも興味深そうに聞いていた。
さぁ、最後のお題だ。
今回はアールァイがボケるらしく、トップバッターを希望した。
【お題】北海道と九州が大喧嘩。なぜ?
【答え】ラーメンの起源をめぐって口論になった。
「どっちも違うからな!」
このツッコミが起きる前提のボケだな。
どっちもラーメンが有名っていう知識がないと出来ないし、ラーメンは中国から伝わったものという知識も必要だ。
今後のアールァイの情報提供も心配ないだろう。
次はカーネモットらしい。
元気に手をあげている。
最後までラブリーマイエンジェルだ。
【お題】北海道と九州が大喧嘩。なぜ?
【答え】北海道「謀ったな、博多!」
「ダジャレで来たか」
俺のセリフに、ふふ、と笑うカーネモット。
また、言い方がガルマっぽいところが良い。
ダジャレを思いついてから、それをパロディに持って行くヒネりを考えている。
もう立派な大喜利ストだよ。
日本語が得意じゃないからこそダジャレが面白いのか、ツボに入ったらしくホーリエがうずくまって笑っている。
次は、スヮクラのようだ。
【お題】北海道と九州が大喧嘩。なぜ?
【答え】どっちが大きいかという一目瞭然なことなのに、多数決で九州になった。
「無茶苦茶だな!」
佐賀県とかが、「いや~、九州のほうがデカイんじゃないですかね~」とか言ってるの想像したら腹立つわ~。
お題に擬人化の要素が入ってるので、こういう想像をさせるボケは大変良い。
スヮクラも、もう俺が教えることなんかないな。
「次は私だ」
ユーキィか。
お手並み拝見だな。
【お題】北海道と九州が大喧嘩。なぜ?
【答え】九州の恋人だった四国に、北海道が手を出した。
なんてことだ、四国をめぐって三角関係が始まってしまった。
本州が邪魔すぎるのに、どうやって手を出したんだ北海道。
ボケによってキャラクター化されているという、ユーキィの擬人化の仕方、いいぞ。
「にしても男女の恋愛とは珍しいじゃないか」
「性別については何も言っていませんが」
腕を組んで笑いながらぴしゃりと言うユーキィ。
そ、そうですか。
なんか嬉しそうだな。
確かに、全部男性も全部女性もありえる答えなのかもしれない。
さて、俺の番か。
やっぱり、最後はこうだろ。
【お題】北海道と九州が大喧嘩。なぜ?
【答え】日本を人に見立てると、北海道が顔で長崎が肛門だと言い始めた北海道の学者
「な、何を言ってるんですか」
顔を赤くしたホーリエがツッコむ。
どシモネタすぎて怒らせたか?
「大体、人に見立てるとか意味がわかりません」
ぷりぷりと怒ったような表情で眉を吊り上げた。
そっかー。
わかんないかー。
俺は4人の方を見る。
「クックックッ……」
「フフッ、フフフッ」
少しずつ、笑い声が漏れ出す。
そして、ホーリエを除く4人共が大笑いを始めた。
若干、うろたえるホーリエ。
「考えれば考えるほど、おかしいですな」
「これ、ひっどい答えですね~」
「形もちょっとそれっぽいかもですよ」
「佐賀が慰めたところでお前もお尻だけどなっていう」
「宮崎県はやっぱり……」
「言うな言うな」
「あっはっはっは」
「ううっふっふっふ」
「ひっひっひ」
「ほ、ホーリエ様、この面白さがわかんないんですか?」
ぽかんとするホーリエ。
4人を指さしながら、こちらを向く。
口をパクパクさせて、表情で説明を求めた。
「ホーリエ、大喜利には時事ネタとかダジャレとか色んな手法があるが、一番ウケるのは結局下ネタなんだ」
俺は断言した。
ガクーンと顎を下げて、残念な顔をするホーリエ。
すまんな。
もともと俺は深夜ラジオのハガキ職人なんだよ。
異世界では自重しがちだったが、本来得意なのはこっちだ。
「全部下ネタだと面白くないから、ここぞというときに出すんだぞ。これが俺の最後のアドバイスだ」
どんなアドバイスだよ。
自分でも思いながら、真面目に言う。
4人とも笑顔で、真剣に聞いてくれたよ。
ホーリエは、まばゆい光を放つパゲを後ろに俺に頭を下げた。
「大喜利でこの世界を救っていただき、ありがとうございました」
******
俺は異世界で沢山の事を学んだ。
日本に戻ってきた俺は、そのことを実感する。
まず予備校を辞めた。
そもそも俺はなぜ浪人生だったかというと、勉強なんて好きじゃなかったのだ。
大学生になりたかったわけでもなかったのだ。
なんとなく普通は大学に行くもんだ、と思っていただけ。
オグーラァには偉そうにドラゴンテイマーなったらどうだ、なんて言っていたくせにな。
パゲ巫女養成学校の事を思い出す。
パゲ巫女になろうとする彼女たちは、歌や踊りと全く違う大喜利なんていうものに真剣に取り組んでいた。
それはパゲ巫女になりたいという強い意志がそうさせたのだろう。
とても活き活きとして、眩しく見えたものだ。
俺もなりたい者になろう。
そう思ったのである。
ラジオに投稿するのは本当に楽しいことだ。
それは俺が人を笑わせたいと思っているからだ。
ならば、人を笑わせる人間になろう。
4人の仲間との旅から色々と感じたことがある。
魔法力を供給するという崇高な任務より、目の前の4人を笑わせたいと思ったこと。
カラオケ大会では注目を浴びる快感、観客を喜ばせる快感を知ったこと。
そして俺にはツッコミ属性があることもわかった。
だから俺はお笑い芸人を目指すよ、本気で。
この世界であっても、笑いが世界を救うって思っているから。
そんな決意を胸に、ネタを考えていると眼の前に突如金髪ポニーテールの美少女が現れた。
「うおう! ゆ、ユーキィ?」
「ひ、久しぶりだな」
俺が日本に戻ってきてから、2週間しか経っていない。
しかし、そうか。
向こうでは1年位経っている計算だ。
「勘違いするなよ、お前に会いたくてやってきたのではないからな、パゲの要求するダンスが新しくなってきているから調査に来たのだ。エグ……なんとかっていうやつ」
「なんだ、そういうことか」
「むっ」
あっさり納得してやったのに、眉をつりあげるユーキィ。
ムッとするってことは、俺に会いたかったのもちょっとはあるんだろうよ。
まったく、ツンデレなやつだ。
なんて思っていると、またしても音もなくユーキィの隣に美少女が現れた。
「お久しぶりです、賢者様! ちょっと宇多田ヒカルって人のCD買いに来ました」
そのまたすぐに、もう1人現れる。
「レバ殿~、SNSってやつを教えてくれんかの~」
やれやれ。
なんでみんなして俺の部屋に来るかね。
次はカーネモットもやってくるのか?
そう思っていたら、ホーリエがやってきた。
「あの~、レバ刺しどんぶり様、モノボケって出来ます?」
――ったく。
しょうがねえなあ。
また、異世界を救ってやるか。
私が初めて書いた拙い小説を最後までお読みいただき有難うございました。
ブックマーク、評価、感想をくださった方、本当に有難うございました。
よろしければ他の小説も読んでみてくださいませ。
また、この小説に出てくる大喜利のボケは全部私の答えとなっております。
大喜利が面白かったよという方は私のツイッターをフォローしていただけますと幸いでございます。
過去のボケを拾ってくることが出来たおかげで20話も続けることが出来ました。
私の大喜利の舞台となっていた、よってけオンライン様、そーしゃる大喜利様、ねりボケ様、喜利の箱様などの存在なくして創れませんでした。
各舞台で爆笑や賞をいただいたおかげで自信を持ってレバ丼のボケとして使用できました。
厚く御礼申し上げます。
この小説で大喜利が好きになったという方がいれば、この上ない喜びです。
それではまた、お会いできますように。




