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【このデスノート、ちょっと違うなあ。どこが違う?】


キョウセイシュウ領で3つの神殿を復活させた俺達の、次の目的地はヤコウト領。

最も日本文化の影響を受けている領地で、アールァイの職場である日本研究所がある場所らしい。


ヤコウト領に入ってすぐに俺は、影響受けすぎじゃね? と思った。

なんつーか江戸村。

建物が完全に時代劇です。

そして領民は何故かほとんど浴衣。

温泉地でもなければ花火大会でもないというのに。

東京でいえば5月くらいの気温で、浴衣には丁度いい気候ではあるが。

どこをどうこじらせたらそうなるのだろうか。


やってきた俺達はいかにも冒険者でございという格好3人+学生服+ふしぎの国のエプロンドレスという服装。

この場所ではあまりにも目立ちすぎるということで、浴衣を調達して着替えた。

俺は幼稚園のときの盆踊りで甚平を着たくらいで、浴衣なんて初めてだった。

ちなみに、どシンプルな黒のストライプの入った白い柄だ。

俺のことはどうでもいい、4人の浴衣を改めて見てみよう。


ユーキィが白地に藤という王道スタイル。

プロレス技など繰り出すとはとても思えない、上品なお嬢さんに見える。


スヮクラは黒地に紫陽花の大人っぽい路線。

赤髪のショートカットに白い花のかんざしが映える。


カーネモットは桃色に苺の柄という可憐すぎるルックス。

俺はこれを見た途端、ヤコウト領万歳! と心のなかで叫んだ。


そしてアールァイはなんか胸元がぱっくり開いてるわ、丈は短いわで、花魁みたいな浴衣だ。

頭が空っぽの女が着そうな代物だが、今までのロリ路線と異なる色気を感じる。


そんな4人と街を見物する。

町並みは江戸村だが、建物の中身は昭和であった。

レトロなゲームが置いてあるゲームセンター。

レーザーディスクのカラオケボックス。

平成生まれの俺にとってはノスタルジーなのかファンタジーなのかわからん空間だ。


「レバ殿、この地にはなんと、回転寿司があるのじゃ!」


はしたない格好のアールァイが胸の谷間を見せつけながら言う。


「そりゃ楽しみだな」

「レバ殿、私の胸元を凝視しながら言うのはちょっとどうかと」


バレていた。

だってあんなに見せてきたら、見ないほうが失礼な感じなのですもの。

顔を背けると、ユーキィとスヮクラが感情のない目でこちらを見ている。


「わ、わざと見せようとなんてしてませんぞ?」


俺の心の声を見透かしたかのように顔を真赤にしながら抗議するアールァイ。

なぜかユーキィとスヮクラの方に向って手を降っている。

待てよ?

アールァイがわざと見せていた、ということにすれば自分を正当化できるのでは?


「見せてるね! 見ざるを得ない状況を作り出してるね! むしろ俺に対するセクハラだね」

「なっ!? 胸をジロジロと見られた私の方が加害者じゃと!?」

「そうだね! 俺の目の前が ω(こんなふう)になっちゃうくらい見せてたね!」

「そこまで近く寄ってませんぞ!? 完全にズームインして見ておるではないか!」


ぐぬぬと睨み合う俺とアールァイに、ユーキィとスヮクラの声が浴びせられる。


「「イチャイチャするの、やめてくれませんかねえ」」


怖えっ?!

怒っても怖くない甘い声質の二人だったが、闇夜に抜いた日本刀を思わせるほど冷たい声だった。

俺とアールァイの目は一瞬にして睨みが怯えに変わり、縮み上がった。


二人とも、そんなに巨乳に対するコンプレックスがあったのか。

巨乳はジロジロみない。肝に銘じよう。


「回転寿司って食べたことないんですよっ! 楽しみだなぁ~」


カーネモットが凍てつく空気を一気に温めて、この場に春の訪れを与えてくれる。

フェアリーかよ。


「うむ、その回転寿司を回すための魔法力を回復させるためにも神殿に行きませんとな」

「今回の神殿の回復って回転寿司のレーンを回すためかよ……」

「それだけではありませんぞ、カラオケと、ボーリングと、ゲーセンのプリクラなどなど」


社会インフラを回復させていた今までの任務に比べると随分とアレだな。

なんて思っているとカーネモットが両手の五本指の指先をくっつけて、少し俯きながらお願いをした。


「お兄ちゃん、一緒にプリクラ撮って欲しいなっ、えへへ」


うをおおおおお!

YES! YES!

右拳を握りしめて、肘を後方に力強く引く俺。

今までで一番やる気出てきたよ!!

それに日本文化を待ち望んでいる人々がいるというのは嬉しいものがある。

地理に明るいアールァイの導くままに、歩いて神殿に向かった。


この地の神殿は見た目がお寺っぽくなっていた。

この領地ではこちらのほうが違和感がない。

お釈迦様の代わりにパゲのいる空間があり、やはり大喜利のお題が表示されていた。


【お題】このデスノート、ちょっと違うなあ。どこが違う?


デスノートですか。

随分とぶっそうなお題ですね。


「デスノートって知ってる?」


俺はみんなに確認する。

毎回のことだが彼女たちは知識に偏りがあるので、何を知ってるのかがわからない。


「僕は新世界の神になる」

「計画通り」

「える、しっているか、しにがみはりんごしかたべない」

「人間っておもしろ!」

「おまえら、メチャクチャ詳しいな!?」


いくらなんでも詳しすぎ無いか?!


養成学校ぼこうの教科書の一つだったので……」


スヮクラが補足してくれた。

学校よ、なぜそれを選んだ。

まぁ紛れもない名作なのは間違いないが。


「2年前の授業でした~」


カーネモットの2年前って10歳かよ。

あれを読ませるにはちょっと早くないかねぇ。


「まぁ知ってるならいいや、デスノートの設定をいじって面白くしろってことだね」


言ってる間にもう、みんな考え始めているようだった。

みんなデスノートが好きだからか、楽しそうに考えている。

大喜利って一般的なものよりちょっとマニアックなお題の方が考えるのは楽しいんだよな。


トップバッター、カーネモットが挙手。


【お題】このデスノート、ちょっと違うなあ。どこが違う?

【答え】触ると死神ではなく、トイレの神様が見える。


それ、紙がトイレットペーパーなんじゃないの?

関係ないけど、もしトイレにべっぴんさんの女神がいたらやりずらくてしょうがないと思うね。


「トイレの神様ってちょっと新しい歌だよな。パゲはそういうのも要求するの?」

「あ、単純に私がトイレ掃除するときに歌ってるだけです」


えへへ~と頭をかくカーネモット。

トイレ掃除する姿すら萌えさせてくれる恐るべき女の子である。


お次はユーキィか。


【お題】このデスノート、ちょっと違うなあ。どこが違う?

【答え】記載する氏名は現世における仮の名前ではなく、真名トゥルーネームでなければならない。


はいはい、厨二乙。

俺はこういうボケ、結構好き。


「ユーキィの真名トゥルーネームって何なの?」


俺はユーキィの厨二力イタさを知るべく質問してみる。


「我が真名トゥルーネームを知りたくば、混沌の闇から真実の魂を呼び出し前世のまなこで見るが良いだろう」


手で顔を半分覆いながら、バサッと袖を翻すユーキィ。

上品な浴衣が台無しである。

それっぽい言葉を連ねているだけで何を言っているかサッパリだな。

アールァイがものすごい勢いでメモを取っている……ユーキィの黒歴史にならんと良いが。

しょうがない、ここはユーキィのフリに乗ってやろう。


「う、うおおおお……俺の封印された第三の目が……」


俺は額を抑えて踞る。

スヮクラとカーネモットはぽかーんとしているが、ここは放っておこう。


「な、 第三の目(サードアイ)を保有していたとは……」


それにしてもこのユーキィ、ノリノリである。


「わかったぞ真名トゥルーネームが! 邪気眼百合腐女子よ!」

「誰が邪気眼百合腐女子だ~~~!」


飛びかかってきたユーキィの姿を捉える間もなく、視界の上下がひっくり返る。

肩から床に叩きつけられる俺。

グフッ、浴衣でフランケンシュタイナーを繰り出すとは……。


「えっと、ボケていいですか?」


次にボケるのは、スヮクラのようだ。

俺がプロレス技を食らってぶっ倒れてることは誰も考慮してくれないんすね?


【お題】このデスノート、ちょっと違うなあ。どこが違う?

【答え】書籍用の高級紙を使っているため、万年筆で書いてもにじみにくく書き心地が抜群。


ハイグレードモデルってだけだねえ!?

肝心な部分は全く変わらないっていう、違いを出すポイントをずらしたボケだね。

いいじゃない、大喜利は裏切りだよ。


「スヮクラのボケ方も大分、上級者になってきてるな~」

「え? そうですか?」


嬉しそうな声で返事をするスヮクラ。

ちなみに俺はまだぶっ倒れたままである。


「単に良い紙とか言わず、表現のディティールにこだわってるところがいい」

「め、珍しく真面目な解説をありがとうございます」


珍しいか?

一応みんなの大喜利力向上も任務だからちゃんとやらんとホーリエになんて言われるかわからん。

ちょいちょい真面目なコメントも言うようにするか。


さて、俺の答えだな。

よっこらしょっと立ち上がる俺。

誰も手を貸してくれないけど、泣かないよ。


【お題】このデスノート、ちょっと違うなあ。どこが違う?

【答え】名前を書かれた人間は、社会的に死ぬ。


人によっては本当に死ぬよりキツイかもしれない。

死因欄には『パソコンの中身を全世界に知られる』とか『中学の時こっそり書いてたポエムが出版される』などと書かれたりすんのかもな。

ツボったのかアールァイが腹を抱えて笑っていたが、目尻に涙を溜めながら俺の方を向いて言った。


「ぷぷぷ、レバ殿はもう社会的に死んでるのではないですかの?」


ハァ―――!?

なんちゅー失礼なことを言うんだ、この巨乳ロリババア!

浴衣の袖から手ぇツッコんで、おっぱいプルプルいわしたろか!

なんて思っていたらスヮクラとユーキィが、ちょっと待ったとばかりにアールァイに意義を申し立ててくれた。


「賢者様に向って失礼ですよ、アールァイ様! いくら19歳にもなって働きもせず勉強もしてないからと言って!」

「そうだぞ、いくらレバ丼だって、痴漢や下着泥棒まではしていないと思うぞ、多分」


全然フォローになってねえよ!

お前ら失礼すぎだから!

この世界の救世主様だぞ!?

あんまりいじめると泣くぞ!?


「お兄ちゃんは立派ですっ」


カーネモットが本気で擁護してくれた。

女神か!?


「カーネモット~!」


感極まって抱きつこうとした寸前、首根っこを掴まれた。


「レバ丼、社会的に死ぬのと、物理的に死ぬのとどっちがいい?」


俺は即座に土下座をした。







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