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【萌えキャラが、一気に萌えなくなる設定を一つ教えてください。】

意外にも、スヮクラの家は邸宅という感じではなかった。


ユーキィの家に比べると大分小さいというか、なんというか、はっきりいって普通のログハウスだった。

庭園みたいなものはない。

もっとも目の前は綺麗な海だし、周りも南国っぽい花や木に囲まれていてそんなものは不要とも思うけれど。

いわゆる領主のお屋敷というイメージにはそぐわない建物だ。


「御覧頂いたとおり、キョウセイシュウ領はとっても田舎なんです」


スヮクラが淡々と話した。


「私はこの土地が大好きですけど、特に何かがあるわけでもないので、みんな大人になると大きな街に出ていってしまうんです」


少し寂しそうだ。

しかし、俺はどうしても納得できなかった。

東京生まれの俺からすると超高級リゾートのようにしか見えないのである。


とりあえずこの地域一帯の魔法力を回復するべく神殿に向かう。

大体どこの領でも領主の家から近いところに神殿はあるようだ。

重要な施設だもんな。

では、お題は何でしょう。


【お題】萌えキャラが、一気に萌えなくなる設定を一つ教えてください。


ふむ、エピソードじゃなく設定っていうところがミソだな。

意外と萌えキャラの設定って、もともとブッ飛んだものが許されるからな……。


「え~っと、萌えっていうのはね」


俺はマニアックな日本語を解説しようとした。


「知ってるぞ」

「知ってます」

「知ってまーす」

「よく知っておる」


そうだったわー、そういう言葉のほうが詳しい人達だったわー。

パゲ巫女養成学校(あのがっこう)の授業は一体どうなってんだろうね?


「では、萌えキャラのカーネモットから行くか?」

「えっ!? 私萌えキャラだったんですかっ!? 初めて言われました!」


ボクシングの構えのように握りこぶしを胸の前につくりながら、目を輝かせるカーネモット。

尻尾が生えていたらブンブンと振っていたに違いない。

まごうこと無く萌えキャラだよ。


「できましたよっ」


ふんふんと鼻息を荒くしながら手を挙げた。

萌えキャラ扱いされてテンションがあがっているようだ。


【お題】萌えキャラが、一気に萌えなくなる設定を一つ教えてください。

【答え】10万12歳


閣下!?

閣下っすか!?


「カーネモットはデーモン閣下知ってるの?」

「当然です、聖飢魔IIくらい歌えないとパゲ巫女にはなれませんよ?」


まじかよ……

俺はまだまだパゲを甘く見てたよ。

カラオケで聖飢魔II歌ってるやつ見たことある?

俺はないね。


「まぁそれはいいが、仮にカーネモットが10万12歳だとしたら全然萌えるから駄目だな」

「ええっ!? 私が10万歳過ぎてても萌えますっ!?」

「むしろ萌えるよ」

「そうなんですかっ!?」


わかってると言っていたが、全然萌えをわかってないな。

高齢なのにロリに見えるなんて王道の萌えステータスだっつーの。

合法になるしな。


「それって単に、レバ殿がカーネモットに萌え萌えなだけでは……?」

「違ぇ―――よ! いや違わないけど、違うよ! アールァイが2億20歳でも萌えるよ!」

「そ、そうかの……」


うつむいて恥じらっている。

むしろアールァイの方がこの設定はしっくりくるわ。

生身の人間に萌えるって言ったことないけど、言う方より言われる方が恥ずかしい言葉なのかね。


「できたぞ」


次はユーキィか。

それにしても随分とテンションが低いな。


【お題】萌えキャラが、一気に萌えなくなる設定を一つ教えてください。

【答え】男同士のいちゃいちゃを妄想することが趣味


……それ、自分のことじゃね?

まさか私って萌えないステータス持ってるわ―と自覚して凹んでたの?

なんか、らしくないなあ。

仕方がない、フォローしてあげよう。


「ユーキィ、今はBLくらい女の子にとっては普通のことだ。悪いことでもないし、好感度が著しく下がるようなものでもないよ」


俺はユーキィの肩に手をポンと置いて、なるべく優しい顔をして言った。


「そんなあからさまな慰めはいらんぞ」


おやおや。

思ったよりも、気持ちが沈んでいるご様子。

意外と繊細だったんだな。

元気のないユーキィなど見ていられない。

コブラツイストかけてくれたほうがよっぽどいいっつの。


「よく聞くんだ、えーっとな、実は俺は百合が好きなんだ。女同士のいちゃいちゃを妄想するのが好きだ。つまり同じような趣味を持っているといっていいだろ?」


嘘ということもないが、別にそこまで百合好きではなかった。

が、ここはそういうことにしておこうじゃないか。


「……レバ丼が百合好きだったら好感度が下がらないとでも?」

「俺、今好感度を著しく下げちゃったの!?」

「だって、それはその、つまり私とスヮクラとかで妄想してるんじゃないのか」


なん、だと……。

今、自分と親友の百合はどうですか? って聞いちゃってるの?


俺にもよくつるんでる親友はいる。

んで、腐女子に俺とコイツのカップリングってどう思うって聞くようなもんだろ?

それってありえなくね?

想像するだにおぞましいぞ。


でもユーキィとスヮクラがいちゃいちゃしてるのは、すごくすんなり受け入れられるな。

なんというか自然というか、しっくりくる。

いや、全然アリ。


『スヮクラ、オグーラァより私を可愛がってくれないか?』

『おっと、嫉妬する口は塞いでしまいしょう』


なんつってな。

あえてスヮクラが攻めるのがいいだろ?

俺は想像してニヤっとした。


「本人の目の前で妄想するな――ッ!」


スパーンとラリアットをくらう俺。

ひどくね?

今のは完全にユーキィが妄想させただろ!?


「だって、あれだろ? 本当にそうなんだろ?」


そうでもないとあんなこと言わなくね?

地面に打ち付けた後頭部を抑えながら立ち上がる俺。


「ちがあ――うッ!」

「誰が百合ですか――ッ!」


ユーキィとスヮクラに前後に同時にラリアットを食らう俺。

ベストタッグじゃねーか!

コブラツイスト食らったほうがマシとは思ったが、これはキツイ。


膝から崩れ落ちる俺。

げほげほと涙目でむせる。

二人とも細い腕ではあるが、さすがにラリアットでサンドイッチされたら厳しいぜ。


「もう、賢者様が悪いんですからね」


スヮクラが手を出して起こしてくれた。

本当に俺が悪いのか?

ユーキィの罠だと思うが。


「それじゃ次は私ですね」

「うん、げほげほ、頑張ってくれ」


【お題】萌えキャラが、一気に萌えなくなる設定を一つ教えてください。

【答え】血の繋がった実の妹


「それは滅茶苦茶萌えるやつだよ!」


俺はすかさずツッコんでいた。


「えぇ……実の妹に萌えるんですか?」


スヮクラが引いている。

ぬを―――!

やっぱり萌えをわかっているようで全然わかっていない!

実際には本当の妹には萌えないかも知れないが、プロフィールとしては萌えるんだっつの!

むしろ一番人気の萌え属性といってもいいくらいだっつの!


「百合好きのシスコンとは、さすがですのお~」

「アールァイ、俺を変態扱いするなっ! 俺には妹いねえよ!」

「どうせカーネモットが妹だったらと妄想しているんでしょうなぁ……」


くっ!

それは、否定できん!


「さぁて、そろそろ俺がボケないとなあ」

「明らかに話題を変えましたな」

「図星だったのでしょう」


無視だ、無視。


【お題】萌えキャラが、一気に萌えなくなる設定を一つ教えてください。

【答え】母親と同姓同名


これは、あるある的なやつかな。

母親ってのは何にせよ萎える要素だよな。


「えぇ~!? ママ要素だって萌えですよねえ!?」

「バブみとか知らないのか、レバ丼」

「単にロリコンでシスコンだからマザコン属性がないだけでは?」


こいつら、うるせーな!?

なんでお前らに萌えについて、とやかく言われなきゃいかんのだ!?

イマイチ萌えがわかってないくせに、バブみとか言葉だけは知ってるのかよ!

自分の母親にはバブみ感じませんから!

正しい説明する気はないけどな。

詳しく説明すればするほど変態扱いが増すだけだ。


まあ、あんまりパゲも光らないし、もう一回ボケるよ、ちくしょう。


【お題】萌えキャラが、一気に萌えなくなる設定を一つ教えてください。

【答え】キャラクターデザイン:蛭子能収


「あぁ~、それは確かに」

「すごく汗かいてますっ」

「CCさくらでも萌えなくなりますなぁ~」

「萌えで一番大事なのは見た目ってことですねぇ」


さすが蛭子さんや、異世界にも知られてるわ。

パゲにも勿論知られている。


どうにかパゲを光らせた俺達は神殿を後にした。


「ん? あれはなんだ?」


俺は、神殿の前に広がる海上に見慣れないものを見た。


「あぁ、サーペントドラゴンですよ。この領地は無数の島で出来ているので、島と島を移動する手段としてよく使います。魔法力の供給が切れたときでも移動できますからね」


水面を滑るように移動していくサーペントドラゴン。

これまた大きさは人が乗るのに丁度いいくらいのサイズで、ジェットスキーみたいにオジさんが一人乗っていた。

ん? ジェットスキー?


「あのさ、この世界にマリンスポーツって、ある?」


俺がみんなに問いかけると、全員が首をひねって「?」という顔をした。


俺はもう一度ホーリエに電話して、丁寧に説明をした。

日本というか地球では至る所で暖かく風光明媚な場所ではマリンスポーツを楽しんでおり、泳げなくても楽しめること。

そういった場所には休暇を楽しむために人が集まること。

そして、そういった旅行者をもてなすための観光業という産業があること。


ちゃんと理解してくれたホーリエの行動力は素晴らしく、翌日には水着とマリンスポーツ道具の一式が届けられた。


「よっしゃー! みんな準備はいいかー!」


日本の文化として知識はあるし、こちらの世界にも水着は存在するものの使用者は限られているらしい。

プールもないし水泳の授業もないし、泳げる人は非常に少ない。

誰も今まで水着を着たことがないということで、やたら恥ずかしがっている。

着替えのための部屋から出てこない。

ここはノリでなんとかするか。


「カーネモット二等兵、スク水を着用して前線へ出られたし」

「サー、イエッサー」


カーネモットは昨日萌えキャラ扱いされてからテンションが上がっているらしく、顔を赤らめながらもこのコントにつきあってくれた。

バカ丁寧にダサいキャップへ髪を全部入れこんで着用している。

胸のタグにもひらがなで”かーねもっと”と書いていた。


うむ!

これぞスク水よ!

あまりに完璧なため、神々しささえ感じる。


「カーネモット、そなたには勲一等スク水萌え萌え章を与える、以後も精進されたし」

「はっ、身に余る光栄であります」


このやり取りはカーネモットのためではなかった。

前回の大喜利のようにスヮクラはノリがいい。

こういう小芝居をすると、スヮクラが乗ってくれるのではないかと思ったのだ。


「スヮクラ軍曹!」

「ひゃ、ひゃい!」


ううむ、よほど恥ずかしいのか、乗ってこれていない。

より厳しい軍に入隊させよう。


「返事の前後にサーをつけろ!」

「シャー、いえっ、シャー」


命令に従いつつ、セリフが言えていない。

どんだけ恥ずかしいんだよ。


「前へ!」

「うう……」


恐る恐る前に来るスヮクラ。

顔は真っ赤である。

ほんとに水着ってものに慣れてないんだな。


スヮクラは白に若草色の横縞がついたビキニであった。

恥ずかしさのためか胸を隠している。

うーん、逆に縞パンだけしか履いてないように見えてエロい。


「えっち大将軍に任命する」

「な、なんでですっ!?」

「えっちだから」

「やっぱり恥ずかしいじゃないですか!?」

「ばかっ! 水着を着てるのに全然えっちじゃないほうが恥ずかしいだろっ!」

「? え? ?」


俺の反論を理解しきれず、とはいえ反論もできない様子のスヮクラ。

なんか考えこんでおり、冷静さを取り戻したようだ。


「次! いでよ! アールァイ!」

「なんで召喚される感じなのかの~」

「いいから、早く来てください」

「うぅ~」


アールァイはどうも恥ずかしがり屋なんだよな。

コスプレは惜しげもなくしてくれるのに不思議なものだ。

散々どんな水着が似合うか考えたが、結局本人達で選ぶことになったので、俺はアールァイの着てくる水着が楽しみなのであった。


「ど、どうかの」


そうきたか!

アールァイの水着はセーラー服のようなデザインのビキニであった。

巫女、メイド、エプロンドレスと全部似合っていたアールァイである。

セーラー服など言うまでもない。

そしてロリ顔巨乳なのである。

セーラー服ビキニが似合わない訳がない。


これは、もはや尊い。


「はは~」


俺は床に手をついて崇拝した。


「な、なんじゃ!?」

「神として崇めることにしました」

「な、何を言っているんじゃぁ~!」


神様は逃げ出した。

全く、恥ずかしがり屋さんだなあ。

いや、神様扱いされたら普通逃げるかもしんない。すまん。


「はい、じゃ次の方」

「おい! 私の扱い軽くないか!?」


ここまで来てユーキィの水着姿はなぁ。

容易に想像ができてしまうというか。


「くっ、私だって初めての水着だというのに……」


軽い扱いだったせいか、逆に緊張がなくなってスッと出てきた。


こ、これは……。

俺の言ったとおり、白いビキニではあるのだが。

その、オレンジの花柄のパレオを付けていた。

いつものポニーテールではなく、金髪をアップにしている。


な、なんつー完成度の高さだ。

グラビアアイドルのベストショットがそのまま動いてる感じ。


「ふん、私だけ何のリアクションもないのだなっ、わかっていたとも」

「ごめん、見惚れてた」


ボン! という音が出そうなほど一瞬で赤くなるユーキィ。

意外だな、学園でもモテモテ(後輩の女子にだが)だったから褒められ慣れてるだろうに。


「う、嘘をつけっ」

「いや、嘘じゃないって。そりゃもともとスタイルがいいのは理解してたつもりだけどさ。ここまでとは思わなかったよ。」

「そ、そうか」


左手を腰に当て、ビシっと立つユーキィ。

かっけー。

かっけーっすよ、ユーキィさん!


よし、みんな水着に着替えたし、海に繰り出すとしますかっ!



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