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【乗り鉄や撮り鉄ではない新しい鉄道オタクが登場。どんなオタク?】

ここは桃源郷か? 龍宮城か?


俺はオグーラァにお屋敷につれてこられ、特別なお客様待遇で饗されていた。


大きなお風呂に入ると美人のメイドが二人で身体を洗ってくれ。

その後、いい匂いのする部屋でやはり美人のメイドからオイルマッサージを受け。

そしてプールサイドのデッキチェアでトロピカルなドリンクを飲みながら夕涼み。


これは所謂人生の勝ち組じゃないか。

ハリウッドのセレブの生活じゃないか。


「旦那様、夕食の前にちょっとこちらに来て頂けますか」

「あいよー」


もはやオグーラァに旦那様と呼ばれていても普通になってしまっていた。


「ちょっとこちらの書類にサインを頂きたいのです」

「あいよー」


うーん、こちらの言葉で書かれているのでさーっぱりわからない。

アラビア語とかサンスクリット語を見ているの同じで何一つ理解不能。

しかし俺はもう完全に骨抜きにされている。

ここで俺を人生の勝ち組にしてくれた美幼女の要求に応えないなどできるわけが……


「オグーラァー! 何勝手なことしてるんだーーー!」


ドアがスパーンと開いて、烈火の如く怒っているユーキィが入ってきた。

すぐ後ろにスヮクラもいる。

一気に現実に引き戻される俺。


「チイッ」


え、今すっごく大きな声で舌打ちした? オグーラァが?


「オグーラァ、私を巻いて勝手に屋敷に戻るとは……おいたが過ぎるのでは無いかなぁ」

「オグーラァ、さすがの私でも怒ることはありますよぉ」


ユーキィとスヮクラが本気でキレている!

俺とオグーラァは抱き合って身を震わせた。


「旦那様! 来世でも結婚しましょうね!」


ひしっ。

俺達は強く抱きしめ合い、観念した。


「だからそれをやめろと言うに!」


俺達は引き剥がされた。


「賢者様、この契約書は"結婚前提略奪宣言書"です。婚約と同時に家族から子供を略奪することを宣言するというもので、誘拐の罪に問われないかわりに、離婚になった暁には家族から殺されても文句が言えないのですよ」


おっかねえ!

なんつーものに俺はサインをしようとしていたのか。


「オグーラァは私が言うのもなんだが頭が良すぎてな。悪知恵を働かせてしまうと誰も手がつけられないんだ」

「そうなんです、オグーラァは超絶かわいいだけじゃなくて、超絶賢いんですよ。」


そういえば手口が鮮やかすぎる。

都合のいいことにご両親はいないし。

あのアールァイですらオグーラァの勧めで飲んだお酒に酔っ払って寝てしまったし、カーネモットは何かもふもふしたペットと遊ぶの夢中だし。

俺はおもてなしですっかり骨抜きになっているし。

考えてみればこの世界で一番賢いレベルのホーリエですら手こずる日本語をこんな幼女が完璧にできている時点でおかしい。


「もう私、このお屋敷にいるの退屈です。やりたいこともないし、なりたいものもないし。いっそ旦那様と日本に行ってみたいです」


――そんなことを考えていたのか。


「オグーラァは昔から頭が良くてな。基礎学問を早々に終わらせてしまって学校から戻ってきたのだ。ところがパゲ巫女にも出世にも研究にも興味はなくてな。日本語は好きで覚えたのと、ドラゴンが好きだからずっとドラゴンの世話をして過ごしている」

「私は頭脳よりも可愛さを活かしてアイドルになったほうがいいと思うんですけどねぇー」

「アイドルにも興味ないです」


ふうむ。

優秀すぎる悩みか。

俺には全くわからんが、さぞつまらないのだろうな。


「なぁ、オグーラァ。 ドラゴンテイマー? になってみるっていうのはないのか?」

「わ、私がですか?」


外国語がペラペラでドラゴンが好きなら天職なんじゃないか。

俺はそう思って奨めてみた。

なんせレジェンドクラスの職業らしいしな。


「ドラゴンの話している言葉は難しいものじゃないんだ。日本語がここまで完璧にできるくらいならすぐに話せるようになるぞ」

「そ、それは本当なのか」

「それが本当なら大ニュースですよ、賢者様」


驚くユーキィとスヮクラ。

俺が特別に話せたと思ったのか?

そんなわけないだろうに。


「本当だよ。アルファベットの発音は俺が教えるから、後はホーリエに英和辞典を取り寄せてもらえばドラゴンと会話できると思うぞ」

「ドラゴンと会話……それはやってみたいです」


両手を握って目を輝かせるオグーラァ。

夢見る乙女は素敵だ。


「じゃ、決まりだ。俺は今晩オグーラァに簡単な英会話とアルファベットを教える。ただしもう旦那様は無しだ」


オグーラァは笑って頷いた。


―――翌朝。


オグーラァはベビードラゴンと朝の挨拶を交わしていた。

ほらね。

やっぱ簡単でしょ。


「だん、いえ、お師匠様」


旦那様と言おうとして約束を思い出してくれたようだが、お師匠様ときたか。

こんな優秀な弟子をとった覚えはない。


「オグーラァ、早速話せているみたいだな」

「はい、夢のようです。 英和辞典が届くのが待ち遠しいです」


よかったよかった。

目をキラキラさせた幼女を見るのはとても嬉しいことだ。

俺はフワッフワのブロンドヘアをくしゃくしゃっと撫でた。

笑顔で目を細める幼女はまぁ可愛いなんてものではない。


「レバ殿~、ドラゴンとの会話方法を確立したというのは本当ですかの~」


アールァイが後頭部をかきつつ、階段から降りてきた。

二日酔いか?

あくびしつつ眠そうな目をしながらフラフラしている。

不思議の国のアリスのような水色のエプロンドレスでだらしのない格好をするなよぉ。


「ほんとだよ。もうオグーラァも話せちゃってるからね」

「さすがレバ殿ですのぉ~、誰もできなかったことを平然と成し遂げる。そこにシビれる憧れる」


抑揚のないボサっとした声で褒め称えるアールァイ。

セリフの割にテンションの低さが尋常じゃないな。


「後でホーリエ様に報告しておきまする。次の目的地も確認しますので、ゆっくりどーぞ」


俺は言葉に甘えて、オグーラァとゆっくり朝食をとった。

そしてその後、調子に乗って朝風呂に入って美人メイド2人に身体を洗ってもらった。

もう一回だけ、やっておきたかったんだ。

いいだろ、そのくらい。


昼になり、俺達はみんなでランチを食べながら、予定を確認することに。


「レバ殿、んぐ、次はですなぁ、むぐむぐ、やぱり、ごくん」

「アールァイ、咀嚼しながら話さなくていいから」


アールァイは普段しっかり者だけど、見た目はエプロンドレスの美少女のためこういう子供っぽいことをすると似合いすぎて困る。

唇の端にトマトソースがついているし。らぶりー。

さっきまで二日酔いでフラフラだったというに。


「すまんすまん、やはり隣のキョウセイシュウ領に向かうことになりました。スヮクラの故郷ですな」

「賢者様、先に言っておきますけど、私には妹はいませんから」


スヮクラさん、俺をなんだと思ってるの。

まぁ、ちょっと残念だけど。


「で、ですな。ザイムカン領からキョウセイシュウ領への移動手段といえば列車なのです」


アールァイがフォークを右から左へ動かしながら言った。

へー、列車もあるんだ。

当然魔法力で動くんだろうな。


「その列車の魔法力供給のための神殿に先に行く、のか?」


だいたい俺もわかってきていた。


「さっすが、賢者様。その通りです。魔法力が足りずに今は1日に1本しか列車が出ていないので、輸送力不足で困っていると父からも聞いています」


自分の故郷を憂うスヮクラか。

父が領主だったらお姫様みたいなものだろう。

それって素敵やん。


よっしゃ!

神殿いこか!

俺はモチベーションが高まった。


――15分後。


「こーわーいーよぉーー」


俺はモチベーションが0になった。


いやね、夢みたいなことなのよ。

ドラゴンの背に乗るなんて。

でもね、実際やってみたら超怖い。

だって乗ってるだけだぜ?

高いところで風がびゅーびゅー当たるんだぜ?

ジェットコースターみたいに肩をガッチリホールドしてくれないんだぜ?


「レバ丼、ちゃんと捕まらないと危ないぞ」


このドラゴンは2人乗りで、手綱?をユーキィが握っていた。

そうか。

ホールドしてくれないなら俺がホールドすればいいのか。

俺はユーキィに後ろから抱きついた。

ユーキィにシートベルトをするように手を回す。


「んあああ!? 誰が抱きつけと言ったぁー!」


首を大きく降って嫌がるユーキィ。

ポニーテールで往復ビンタされる俺。

しかし、俺の手が緩むことはなかった。

だって怖いもん。


30分ほどで到着したが、俺はげっそりだ。

ユーキィもやはり疲れたのか、顔を赤くしてフラフラしていた。


さ、神殿のお題を確認するぞ……。


【お題】乗り鉄や撮り鉄ではない新しい鉄道オタクが登場。どんなオタク?


意外とパゲもお題を施設に関連付けてくるよな……。

いや、パゲのことを考えるのはよそう。

謎が謎を呼ぶだけだ。


「レバ殿、解説を頼む」


そっか、まぁいないだろうなぁ、こっちの世界に鉄ちゃん。


「日本では鉄道オタクっていうのがいて、とにかく鉄道が好きなんだ。乗り鉄っていうのは列車に乗るのが好きで、とにかく乗ってると幸せっていう人。撮り鉄っていうのがカメラで鉄道の写真を撮るのが好きな人たちを指す」

「ほほぉ~。さすが日本ですなぁ~」


あんまり褒められてる気はしないが、嬉しそうにメモを取っているアールァイ。

さて、新しい鉄道オタクを考えるんだったな。

っと、解説している間にもう出来たのか、カーネモットが手を上げている。


【お題】乗り鉄や撮り鉄ではない新しい鉄道オタクが登場。どんなオタク?

【答え】銀河鉄道の夢を見るオタク


「はい、かわいい」

「えええ、もっとアドバイスくださいよぉ」

「可愛いは正義」


ぶー、ぶーと唇を尖らせるカーネモット。

もはや可愛いだけで面白くないボケかもしれん。

だが、俺は彼女に永遠にこのままでいて欲しかった。

次はユーキィか。


【お題】乗り鉄や撮り鉄ではない新しい鉄道オタクが登場。どんなオタク?

【答え】車両が連結するところを見てニヤニヤするオタク


あぁ、連結っていうのは比喩だな。

多分、男同士の。

だいぶユーキィも型が出来てきたというか、どんだけホモが好きなんだというか。


「ユーキィはそれでいいや」

「なっ、なにかないのか」

「ないです」


ショックを受けているユーキィ。

直されなくなったのだから喜べばいいのに。

今度はスヮクラか?


「スヮクラ、いきます」


出撃するかのような宣言、いいぞ。


【お題】乗り鉄や撮り鉄ではない新しい鉄道オタクが登場。どんなオタク?

【答え】列車に轢かれオタク


にわか以外は死んでしまうオタクだな。


「やっぱりスヮクラはダークなのが上手いな」

「それって褒められているんでしょうか……」

「もちろん。カーネモットは可愛い。スヮクラはダーク」

「クッ……どこで選択肢を間違えてしまったの……」


なぜかショックを受けているスヮクラ。

優しくて可愛い娘がダークなボケをするってギャップ萌えでいいと思うけどな。

なにが不満なのやら。


さて、それでは俺がボケるか。

まぁ、鉄道関係の言葉から連想だろうな。

こんな感じか。


【お題】乗り鉄や撮り鉄ではない新しい鉄道オタクが登場。どんなオタク?

【答え】女装して痴漢されるオタク


「さすが、お兄ちゃん、女装好きだもんね」

「うむ。普段から実際にやっているからこそのボケだな、レバ丼」

「賢者様のようなド変態じゃなければ決して思いつかないですわ」

「レバ殿、言ってくださればお尻くらい触ってあげますぞ」


――をい。

褒め方が下手か。

俺はみんなのボケに優しかったというのに。

カーネモットさぁ、俺、女装したことないっすよね?

アールァイにお尻触られるのは……悪くない提案だがここは黙っておこう。


この変態なボケでパゲは光ったようだ。

それでは異世界の鉄道に乗りに行きますか!
























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