少女冒険記
「暑い・・・。」
夏期講座終わりの8月初め。南中高度の一番高い日差しは、容赦なく私に降り注ぐ。猛暑日であった。
このまま溶けてしまうのではないかと、そう思うのも不思議ではない。なんせ私の住んでいるこの町は盆地であり、風もなければ雨もあまり降らない。唯一の涼しい場所といえば、この町を通る一本の大きな川ぐらいだろう。詳しいことは知らないけど、この川は聖水であり、
入水は厳禁らしい。どうやら”あの山”が関係しているらしいけど、結局のところ何が何だか。そう思い、ふと山に目をやる。今日も変わらず厳かに佇んでいる。あまり大きな山でもなく、傾斜もそこまでない。周りとはなにか違う雰囲気を持つ山は、何か私に訴えかけているようでもあった。そして目線を元に戻そうとした時、
「えっ・・・何か落ちた・・・?」
白い大きな丸い光の玉のようなものが山の頂上に急速に落下した。落ちたものの何の音もせず、周りの木々も何も示さない。そして数秒たったのち、山の頂上からけたたまし音が聞こえた。いったい何事だ、そう思い数分間山見つるめるが、何の変化も見られなかった。そして何があってか、私の足は無意識的に”あの山”に向かって行ったのだ。まるで誰かに誘われているかのように。




