表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
集才学園の頂点へ  作者: blanker
一章
9/14

七話・能力の使い方

 ステージから溢れていた光が少しずつ収まっていく。

 収まった光の先に見えた景色は、さっきまで居た映画館ではなく、とても古ぼけた廃墟のビルだった。

 俺は廊下の端に立っており、向こうの廊下の端までは約50メートルだ。右側の壁には窓がついており、そこから青い月明かりがこぼれている。上と下への階段は廊下の左側にあり、そして目の前にある階段の先には何枚かの扉が壁に取り付けられていた。

 どうやら、確かにテレポートできたらしい。集才学園の科学力はまじで世界一だな。

「本当に何でもありなんだな……この学園」

 半ば呆れながら呟いたとき、どこからかあの機械音声が流れてきた。


『これからルール説明を始めます。今回の超学戦闘のルールは〈銃撃戦〉です。足元のアタッシュケースを開けてください』

 そう言われて足元を覗くと、俺のすぐ右側にアタッシュケースがあるのがわかった。

 しゃがみこんでアタッシュケースのロックを外しふたを開けると、マグナムっぽい銃とその弾丸。そしてスマホのようなものが入っていた。マグナムの装填数は6発。

『そのマグナム銃から放たれた弾丸は人や物体を傷つけません。しかし、撃たれた衝撃は伝わりますのでご了承を。そして、傍らのタブレットにはこの廃墟の地図がダウンロードしております。それで現在位置はわかるでしょう』

 その地図用のタブレットの電源を入れると、学園専用スマホと同じ形式の地図が表示された。地図以外のアプリは入っていないようだ。

『勝利条件ですが、〈相手選手の体や腕に3発。もしくは、頭か心臓の部分に1発当てた者の勝利〉となっております。時間制限はありません。そして、今回も戦闘中は指輪の力が増しているため、反射力や瞬間的思考力が上がっていますので、その点を考慮して戦闘をしてください。それではルール説明を終わります』

 そう言って、機械音声は途切れた。

「終わりますって……もう始まっているのか」

 そこまで重くないマグナムを片手で持って、スマホと弾丸ケースをそれぞれズボンのポケットにしまう。そしてゆっくりと立ち上がった。

 ——それじゃあ、やりますか。

 

 〈銃撃戦〉開始だ。


 

 

 最初に俺が取った行動は、近くの小部屋に入ることだった。

 まずはこの廃墟ビルの構造を把握しなければならない。

 そのためには、地図を確認できる空間が必要だ。

 小部屋はホテルの一室のように見える。しかし、あちこちに古びた痕跡が残っていて埃も多い。ドアの鍵を掛けることはできなかった。多分立て籠もり防止のためだろう。

 これで一応、すぐに負けることはない。安全は確保できていないが。

「さて、どんな構造だ……?」

 そう呟きつつ、左手でスマホを起動し地図を表示させる。


 このビルの構造は4階建てで、今俺がいる階は2階。それぞれの階の構造はまったく一緒らしい。

 上と下に行く階段は廊下の端にしかなく、それまでは宿泊用の小部屋が続いている。廊下はたった一つだ。

 かなり単純な構造だがその中で一つ、ちょっと面白い構造になっていた。

「部屋と部屋がつながっている……コネティングルームか」

 部屋と部屋が、壁に設置されているドアでつながっている構造のことをコネティングルームという。たまにホテルなどで見かけられる部屋で、一見関係なさそうな構造だが、トラップなどに利用できそうだ。

 

 構造を確認し終わり、スマホの電源を落とす。

 こっから攻撃に回りたいが、マグナムだけじゃ危険すぎる。一発敗北もあり得るこの戦闘、『どれだけ攻撃を当てるか』ではなく『どれだけ攻撃をかわせるか』に結構な比重がかかっている。

——ここは使っておくか。

 トイレから出て、廊下に出る前に俺はさっそく超学能力を発動した。

「『私用車両クリエイトビークル』」

 そう宣言すると、空中に『スケートボード』が出現する。俺はそれを地面に落とさないように左手で掴んだ。


 コピーした『私用車両クリエイトビークル』の能力。

 それは〈乗りなれている乗り物を出現させる。しかし、『車輪が地面に付いたら車輪がそこに固定される』ため移動手段としては使えず、さらに『動かなくなってから30秒で消滅する』〉……そんな能力だった。

 正直言おう。この能力、日常生活ではまるで使えない。完全にハズレ能力である。

 ただ『移動手段として使わない』のだったら、まだいろいろと使い道があるのだ。


 スケートボードを左手に抱えたまま、静かに部屋のドアを開ける。

 廊下に人影は見当たらず、窓からの月明かりのみが廊下を照らしていた。

「……三階だな」

 そう呟き、俺はすぐそばの階段へ足を運ぶ。

 一階の場合、上にしか逃げられず相手を撒くことは難しい。まだ上と下の選択肢がある二階と三階が有利という判断だ。

 途中に広場がある階段を、マグナムを階段の先に向け上がっていく。足元からはカツン、カツンと足音が鳴り響き、極度の緊張感からか額から汗が垂れてくる。

 そんなふうに注意を上に向けていたからだろうか。二階に上がりきった途端、緊張が少しだけ緩んだ。



 その瞬間。俺は左足に『まるで撃たれたかのような』衝撃が来たのを感じた。



 左足に衝撃が来ると同時、俺は廊下の先に目を向ける。

 そこにはこっちをしっかり見据えて銃口を向けている沙無の姿があった。

(じゅ、銃声が聞こえなかった……!?)


「くっそ……っ!」


 そこにマグナムを向けようとするが、足がもつれて階段に向かって体が倒れていく。

 ——ここで体勢を崩したら負けだ。

 そこまで思考が走った瞬間、俺は即座に超学能力を発動した。


「『更新規則リロード・ザ・ルール』! 『倒れるのを禁ずる』!」


 発動とほぼ同時、階段の折り返し広場に背中がぶつかる。

 が、体がかってに動いて瞬時に体勢を立て直した。俺では到底できそうにもないアクロバティックな動きで。

 さすが超学能力。本来の反射神経や運動能力を超えて、今の俺は『倒れられない』ようになっている。

 

 しかし、まだ油断はできない。

 すぐに顔を上げると、今まさに沙無が銃口をこちらに向けようと動いていた。

 それと同時に、無音で紫色に輝く弾丸がこちらに迫ってきた。

 

 ただ、さっきよりほんの少しだけ時間がある。

 左手にはもうスケボーは無い。だが、その方が逆に都合が良かった。

 すぐさま左手を沙無の方に向けて叫ぶ。


「く、『私用車両クリエイトビークル』!」


 ——次の瞬間。虚空から出現したスケボーが、紫色の光と共に一瞬で弾け飛んだ。

 ……予想通りだ。この弾丸に『貫通性能』は一切無い!


「——はぁ!?」


 上からそんな声が聞こえるが、構わずに目の前の階段を駆け下りていく。

もちろん後ろから足音が響いてくるが、焦らずに階段を下りた先の廊下で『足を止める』。


 階段の折り返しにある手摺から出てきた人影に、俺は振り向きざまマグナムの引き金を引いた。

 すぐそばで轟音が鳴り響き、手に反動が伝わってくるが無視だ。

 銃口から紫の尾を引いた弾丸が、音速に近いスピードで発射された。


「っ!」


 とっさに手摺に隠れる沙無。しかし、今回は足止めに撃っているだけだ。狙って撃っているではないので沙無に弾は当たらず、後ろの壁に衝撃音を鳴らしながら消滅する。

 それを見るや否や俺はすぐに逃走し、一階の部屋に駆け込んだ。

 閉めたドアにもたれかかり、そのまま座り込む。

 荒い息が次第にゆっくりになり、心拍数も落ち着いていくのを感じた。

「……ふぅ」

 これで撒けた……か。



《超学戦闘経過時間——約4分》


できたらバトル描写についてご指摘お願いします。

あとは、紗無の能力を予想してみてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ