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トロイメライ  作者: 紅茶うさぎ
第1章
6/7

利用価値はどのくらいでしょうか?(2)


もくもくと歩き続けながらこれからのことについて考えてみる。

オブを杖にすることが最優先であることだけはわかっている。それからノクターンさがし。

しかし宛がない。


「レイン、レイン、」


「何。今考え事してるんだけど」


オブをにらむ。


「いや、だから・・・」


怒鳴ろうかと思ったら、ごんっ、という音と同時に頭に衝撃がはしった。あまりの痛さに頭を抱えてしゃがみこむ。


私がぶつかったのは家の壁だった。


「どうして言ってくれなかったの」


「言ったよ、言おうとしたよぉ!」


理不尽だ、と叫んだ。


それにしても、こんな森の中にたった1軒だけ家がたっているというのもおかしな話だ。こんなところにいったい誰が住んでいるというのだろうか。


「よし、入ってみよう」


「え・・・いいの?」


だめだとは思うけれど好奇心には勝てない。

とりあえず入り口にまわりこむ。さすがにこんな森の中にあるからだろうか。鍵はかかっていなかった。


「おっじゃましまーす」


ゆっくりと扉を開けて覗き込んでみる。


「不法侵入だぞ」


その声に肩がはねる。聞いたことのない少年の声。不法侵入というくらいだから少年が家主なのだろう。声のした方、後ろを見る。

そこには私と同じとしくらいの少年が立っていた。


「お前・・・『素質ある者』だな」


その言葉に目を見開く。この少年はいったい・・・。


「あなたは?」


不法侵入しておいてこんなことを聞くのも大概失礼だ。

それでも今知りたい。見たところ話の通じそうな相手だし。


「俺も同じだ。お前、名前は?俺はテムル=コンツェルテ」


「・・・私はレイン=スティル」


少年、テムルは少し考えるような仕草をしていった。


「じゃあ俺達は敵同士だな」

「ーっ!」


そのセリフがルーペの言葉とかぶった。イタイ。信じると決めたのに。

それじゃあ・・・この痛みは何?


「あんた・・・」

「テムルー。木の実取ってきたわよ」


間に入ってきたのはハムスター。羽がある・・・ということはテムルのパートナーらしい。


「あら、お客さん?珍しいわね。私はテルノ。よろしくね」


終始笑顔でひとなつこい。


テムルはため息をついた。こころなしか一気に雰囲気が穏やかになった。


「テルノ。ちょっと静かにしてろ」


そして再び私を見た。


「あんたノクターン持ってるか?」


「え・・・いや、ないけど。」


そんなに直球に聞くものではない気がするが。というかもし本当に持っていたとしても素直に言わないと思う。


「じゃあさっさと出てけよ。無駄な争いはしたくない」


そう言ったテムルの顔は少し嬉しそうだった。そのセリフを言ってみたかったんだろうな。思ったよりおもしろい人なのかもしれない。そう思った私の口元がゆるんでしまうのも仕方ない。

私の口元が緩んでいるのに気づいてか、テムルの顔は真っ赤になり自分の口元を手の甲で押さえた。


「テム・・・」「うるさい」


遮られてしまった。


「・・・外暗いからな。1日だけなら泊めてやってもいいけど」


驚いてテムルを見る。たしかに外は真っ暗だ。

どうやらテムルはいい人のようだ。根が真面目なのだろう。


「じゃ・・・お言葉に甘えて」


さすがの私でも家主より先に入るのは申し訳ないので1度外に出て、テムルが家の中に入ってから改めて中に入った。


お風呂も借りれてすごく助かった。テムルもなんだかんだで客扱いをしてくれた。


「テムルは旅に出てノクターンを探しにいったりしないの?」


ずっと気になっていた。家に住んでいるということは旅に出ていないことになる。家のある場所に関しては気になるところもあるが。


「あぁ。俺は別にかなえたい願いもないし。めんどい」


たしかに・・・。願いもないのならノクターンを探す理由がない。


「夢がないね。もっとこう・・・なんでもできるのに」


「なんでもって・・・あんた。まぁ、確かにそうなんだけど」


テムルは小さく笑った。

私たちはそのまま・・・いつのまのか寝てしまったようだ。

私が目を覚ますとテムルはまだ眠っていた。


「・・・ありがと」


寝ているテムルに小さくつぶやいた。それからオブをたたき起こしてテムルの家を出た。森の中を再び歩き始める。


「起きてからでもよかったんじゃない?」


世話になった身だし、とつけくわえるオブ。それでも私はこれでよかったと思っている。寝ているうちにいなくなるのが一番いいんだ。


「私はこ・・・っ!!」


後悔していない、とオブに伝えようとした時だった。

光の筋が目の前を横切った。





ここにきて初めて男子(オスを除く)が登場しました。

やっと展開が動き出します(たぶん)

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