表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

05

-5-


挿絵(By みてみん) しろむー ‏ @shiro_mow   1分

『【拡散希望】ブジテレビ「目ざましいテレビ」来週月曜日午前六時。 @TOHRU @The_Tragedy_of_X #ブジテレビ』


 それが解答紳士Xエックスこと名探偵しろむーからの挑戦状メッセージだった。それ以降、彼からの書き込み(ツイート)は途絶えた。


「……なんやこれは。とりあえず早起きして来週一発目の『目ざましいテレビ』を見ろっつーことか?」


 取り急ぎ俺は、黒澤華子に携帯電話で連絡をした。


「――ちょっとぉ、トオル。こんな時間に何よ。非常識にも程があるわよ」


 ボヤいてはいるが、眠そうな声ではない。どうやら、まだ起きていたみたいだ。密かに俺は、彼女が夜型人間なのをよく知っている。


 俺は手短にしろむーの挑戦状の件を伝えた。華子は「了解。そやったらその日は、がんばって早起きしてみるわ」と声色を沈めながら返答した。


 翌週の月曜日の午前五時五十五分。「ツブレ荘」の自室にて。


 結局、昨夜は気になって一睡もできなかった。俺はねっとり湿った万年床で寝返りを打ちながら、おもむろに十九インチ液晶テレビのリモコンのスイッチを入れた。


 六時の時報が鳴り響く。いつもの軽快なオープニングテーマと共に「目ざましいテレビ」が始まった。全国ネットの人気情報バラエティ番組。日本人なら知らない者は先ずいないだろう。


「おっ、始まったぞ。せやけど……しろむー、いやエックスは一体何を企んでやがるんや。電波ジャックでもおっ始めるつもりか?」


 実は態々指定されなくても、この番組を見るのは毎朝の習慣なのだ。なぜなら俺は、この番組の女性メインキャスターである加古川かこがわ 翔子しょうこことカコパンが、密かに大のオキニなのである。


 ちなみに男性司会者はイケメン中堅アナウンサーの――名前なんだっけ? 歳は三十代半ばだろうか。司会を美男美女で取り揃えるところがエンタメ路線のブジらしい。


『みなさんおはようございます。目ざましいテレビの時間です』


 いつものイケメン男性司会者が歯切れよく挨拶する。淡いグレーのスーツをさわやかに着こなしている。


『おはようございます。みなさん、今週も、そして今日も一日がんばりましょう!』


 カコパンが笑顔で俺に挨拶をする。年齢はたしか二十七歳だったと思うが、三~四歳は若く見える。顔は面長のキレイ系。ぱっちりとした瞳が印象的だ。今朝は桜色のスーツを清楚に着こなし、長い髪を後ろで束ねている。


「くーっ、可愛すぎるにも程がある。ヨメにするなら絶対こういうタイプやな。よっしゃ、今日も一日がんばるぞ。しかし、羨まし過ぎるぞ男性司会者。この俺サマを差し置いて、女子アナ界人気ナンバーワンのカコパンと毎朝なかよく肩を並べて仕事しやがって。 あっさり顔のさわやかイケメンなところが更にムカツク」


 健全な男子なら、殺意すら覚えてしまうのが人情ってヤツだ。続いて、そのイケメン中堅アナウンサーが喋り始めた。


『早速ですが、今日はいつもの予定を変更して――今、巷を賑わしている、ネットゲームの怨恨による京都美大生刺殺事件、通称『ツイッター推理ゲーム殺人事件』について、当局は最新の独占情報を入手致しました。よって、その関連ニュースから始めたいと思います』


 神妙な面持ちの男性司会者とカコパン。画面全体から緊張感が漲っている。


「なんやて? そら一体どういうこっちゃ!?」


 しろむーの予告通りだ。これから全国ネットの人気情報番組で何が起ころうとしているのだろうか。俺は眉をしかめて目を凝らしながら、テレビの画面に喰らい付いた。


『例の「ツイッター推理ゲーム殺人事件」の真相は、当局の見解によると、ゲームの出題者である解答紳士Xエックス氏と常連の名探偵しろむー氏の二人による共犯説、あるいはエックス氏=しろむー氏の同一人物説が有力視されていました』


 カコパンがゆっくりと噛み締めるような口調で原稿を読み上げる。


「そうなんけ? なーんや、そのトリックに気付いたのは俺たちだけやなかったんか。あーあ、ガッカリやなあ名探偵のお嬢サマ。少々残念やけど、充分に考えられる展開やな。案外、大半の人間がこの事件の真相について、そう考えていたのかもしれへんな」


 変わって男性司会者であるイケメン中堅アナウンサーが、原稿を見ずカメラをまっすぐな視線で捕らえながら喋り始めた。


『しかし、それらの仮説はすべて、まったくの事実無根であることが、この度の新情報により発覚しました。そして事件の最有力容疑者であるエックス氏ならびにしろむー氏が清廉潔白である決定的な証拠を、これから当局の最新独占情報をもって、日本全国のお茶の間のみなさんに証明させて頂きます』


「なんと」


 ブジテレビはどんな独占情報を握っているというのだろうか。そして一体、どうやってエックスの潔白を証明するのだろうか。


『実は――この殺人事件の容疑者である、渦中の共犯者しろむー氏は――』


「――しろむー氏は?」


 ゴクリと生唾を飲み込む俺。


 そして男性司会者は日本中の人々に向かって――つぶやいた。


『「Xからのつぶやき挑戦状」の常連「しろむー」の正体は、実はこの「目ざましいテレビ」の司会者である、ブジテレビアナウンサーの私「城田しろた 宗雄むねお」なんです』


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ