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-エピローグ 02-


【日本の朝の顔、電撃入籍】

『昨日、ブジテレビ「目ざましいテレビ」でお馴染みの城田宗雄アナウンサー(三十六歳)と、カコパンこと加古川翔子アナウンサー(二十七歳)が、今朝の同番組の本番中に「わたしたち結婚しました」と入籍を電撃発表した。

 二人はかねてから内密な交際関係にあり――


 提供:連想新聞 20XX年08月24日14時30分』


 くーっ、俺の、俺のカコパンがーっ。俺はこれから何を糧に生きていけばよいのだ。おのれ名探偵しろむーことイケメンエリートの城田アナめ。もし実際に会う機会があったら、ガチ絶対マジぶっ殺す!


 そんな調子で、俺は先日から強烈に機嫌が悪いのだ。


「大体、おかしいと思ったんや。あの聡明なエックスの正体がハナやなんて」


「うふふ、そのワリには顔面蒼白で全身ガクブルやったけど?」


 悩ましげな微笑を浮かべる黒澤華子。彼女はブラックコーヒーのカップを手にして、紫の口紅の付いた唇を静かに付けた。


「やっ、やかましいわ。ともあれ解答紳士Xエックスの正体は、ウチの大学の近くにある日本の頭脳『K大学』の学生やってな。理工リコウ学部のおリコウさんなら、なるほど納得や」


 ワイの悲劇の影響からか、おもわずベタなダジャレが出てしまう。


「そう、聡明な頭脳を誇るエックスの計画は完璧だった。第一発見者ならびに交際相手の椎名さん。彼女に殺害の罪を擦り付ける。自分と河本くんを天秤に掛けた復讐の意味も込めて――」


「まあ、エックス森田と椎名さんの関係の真相は藪の中やけどな。彼女が否認するように、ホンマに逆恨みやったんかもしれへんし。ともあれ、第一発見者で恋人。あの状況で普通に考えたら、彼女が最有力容疑者やからな。で、万が一、警察の目が自分に向いた場合は――」


「エックスのユーザーログを警察に提出し、鉄壁のアリバイを主張する。目ざましいテレビの城田アナのようにね」


「せやな。あの城田アナの告発は、ヤツにとっても実にありがたいハプニングやったやろうな」


「そやね。でも、完璧な筈のエックスの計算を、ひとつだけ狂わせるハプニングが起こりはった。それが――」


「せや、椎名さんにもカラオケ大会つうアリバイが発生してまったことや。まさか真面目な自宅生の彼女に、自分らとの密会の他に、真夜中のアリバイが確保されるとは。エックスも夢にも思わなかったやろうな」


「ええ、普通は自宅で寝ている時間。家族のアリバイ証言やなんて証拠能力弱いしね」


「せやな。このハプニングがなければ、流石のワイも真相に辿り着けなかったかもしれへんな。推理ゲームの怨恨が話題に上ることもなかったやろうし」


「そやね。普通に椎名さんが容疑者として取調べを受けて、メディアの話題もそこで終わりだったやろうしね」


「せやけど、なんでエックスは、態々自分の犯した殺害を、ああやって推理ゲームとして世間にアピールしたんやろう」


「よっぽど、自分のトリックに自信があって、その頭脳を世間に誇示したかったのか。あるいは――」


「あるいは?」


 俺は太い眉を歪めながら聞き返した。


「私の考えた推理――椎名さんによる犯行説の最後の詰めの一手。その死体移動トリックを、聡明なる名探偵たちに考案して欲しくて、広く推理を募ったのかもね。で、その中のそれっぽい解答を、自分の潔白を証明する材料としてパクる。そういう魂胆やったんやないやろか? 私があの時、トオルの代わりに入力しながら、推理の解答を急かしたようにね」


「なるほどな。まあ、残念ながらそんなヤツに都合のいい推理はでーへんかったけどな。結局、ワイに真相の方をぜーんぶ暴かれてまって。ケケッ、残念やったなエックス。策士、策に溺れるっちゅうヤツや」


 結局、今回の事件の発端は、ネット書き込みのエスカレートによる炎上ではなかった。


 しかしサイトが言っていたように、ネットの推理ゲームというのは集客力が抜群の上に、おマツリ感覚で楽しいけど、人間の知的虚栄心を揺さぶる諸刃の剣。ムキになってエスカレートすると、今回のように殺し合いに発展しかねない。


 本当に程ほどにしておかないと。これを気にワイ――いや俺も、しっかりとふんどしを締め直そうと切に思う次第である。


「ふふっ、トオルって、こないだからずっとワイ、ワイばっかりやね。それってあなたの田舎の方言なんよね? でも、よかったやない。演劇コース期待のホープくんの迫真の演技と、世界のクロハナ監督のコラボによる共同作品で事件解決に繋がったんやから」


「せやなあ」


「あと、名探偵ワイさんの推理でね」


(次回 最終話)


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