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-エピローグ 01-


【ツイッター推理ゲーム殺人事件の犯人逮捕。動機は男女関係のもつれ】

『昨日未明、『ツイッター推理ゲーム殺人事件』の犯人が京都府警により逮捕された。容疑者はK大学理工学部物理工学科の男子学生、森田もりた 隆志たかし。二十歳。世間を賑わしていた解答紳士Xエックスの正体も同氏である。森田容疑者は被害者である河本さんとアルバイト先の飲食店で知り合い、かねてから友人関係にあった。


 動機は男女関係のもつれ。当局の調査によると、森田容疑者は殺害された河本さんの交際相手の女性Aさんに好意を抱いていた。森田容疑者は河本氏には内緒でAさんと男女関係にあったと警察に自白。一方、Aさんは容疑者との関係を否認している。推理ゲームの出題者であるエックスこと森田容疑者は、ツイッターでの炎上を装い、殺害の動機隠蔽とアリバイ工作に充てた模様。


 この事件の真相は、動画共有サイト「YouTube」に投稿された「実録、ツイッター推理ゲーム殺人事件の真相を暴く!」という告発ドキュメントムービーにより解明された。作成者は被害者が在籍していたK美術大学の映像コースの女子学生。アリバイトリックと事件の全貌を暴いたその衝撃の内容は、インターネット上で話題騒然となり、数日間で十万アクセスを記録した。その推理を基に警察が被害者の交友関係を再調査した結果、今回の逮捕劇に繋がった。


 提供:連想新聞 20XX年08月24日14時28分』


「――なあ、ハナよ」


 犯人逮捕の報道から数日後の昼下がり。


 北白川通りにある学生街の喫茶店「エルム」の窓際テーブル席。エロダンディな髭の店長特製のチョコパフェを物憂げな表情で突付いていた演劇コースの俺、トオルは、向かい席に座る映像コースの黒澤華子へ、おもむろに右手のスプーンを向けながら言い放った。


 ガラス越しに差し込む眩しい夏の光が、銀色の丸い先端に乱反射する。


「こないだはよくも、あんなサル芝居で俺をハメやがったな。まったくどいつもこいつも、人をオモチャにしやがって……この怨み、一生忘れへんからな。高く付くでー、覚悟しとけよハナ」


「ほんまに堪忍ね、トオル」


 飲みさしのブラックコーヒーをカップソーサーに置き、両の掌をすり合わせるハナ。その向こうにはニガ笑いをする彼女の悩ましくも大きな瞳が。くそっ、困った顔も麗しいやんけ。


「単に推理するだけやったら映像的に寂しいやない? それでちょっとサスペンス調に演出したんよ。まあまあ、そないに怒りはらんと。感情的な男はんは女子にモテへんよ。ここのチョコパフェ代は当分私が払うさかい、それで堪忍して」


 そんな彼女の言葉を尻目に、左の掌を広げて、その中央に右の人差し指をとんとんと叩く俺。


「半年分や」


「えー、一ヶ月」


 結局三ヶ月分、おまけに彼女の同伴時限定ということで手を打った。よっしゃ、これからは連日オマエとエルムでこってりダベってやるからな。覚悟しとけよ。


 エックスの正体が黒澤華子というのは真っ赤なフェイク。すべては彼女のペテンだったのだ。華子はあの時、「松麟館」屋上での俺とのやりとりを、こっそり隠し撮りしていた。


 それをドキュメントムービーの推理劇として編集し、YouTubeに投稿したのだ。しかも大胆不敵にもK美大映像コース「黒澤華子」の実名で。


 その後の展開は新聞の通りである。ようするに俺は彼女にハメられたのだ。そう「世界のクロハナ」の映像作品を全世界に出展する為に。まったく、これで何度目だよおい。ショックすぎるにも程がある。


 そして、もうひとつショッキングな出来事が――


(つづく)

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