小説風会話劇「餓鬼と爺」
この会話はフィクションです。
っ……………!
だぁぁぁぁーーんっ!!
「うぉぁっ!?」
「な、なんだっ!?」
「わ、わかりませんっ!急に、地面が爆発を」
どがぁぁぁぁぁーーんっ!!
「ぎゃああっ!!」
「くっ!お、落ちつけぇっ!うかつに動くなっ!」
「……………へっ。」
「……………フン。」
「帰ってきてやったぜ、クソジジイ。」
「ふん。家が恋しくなったか?クソガキ。」
…どこかの次元、どこかの世界。
国家の圧政に抗する魂達の姿あり。
例え命尽きるとも、魂は屈せず。
決意の魂の傍らに、舞い戻りし魂あり。
その命、消させまいと。
「しっかし随分深いとこまで攻め込まれたな。万人の英雄様も、歳には勝てないってか?」
「フン。これでも持ちこたえた方だ。どこかの馬鹿息子がふらふらほっつき歩いてなけりゃ、とっくに追い返せてた。」
「おやおや、有り難いねぇ。そんなに我が子の力が必要だったの?」
「おとりにするのにちょうどいいクソガキだからな、おめぇは。」
「へっ…言いやがるねぇクソジジイが。」
「隊長!周辺に地雷は無いようです!」
「よし。全隊員、進行だ。だが、油断はするな!」
「…ば〜か。お前らの地雷探知器ごときに引っ掛かる爆弾じゃねぇよ。」
きゅどーーーーんっ!!
「うぁぁっ!?」
「くそっ!止まれっ!…一体どうなっている…!」
「おい。」
「あ?」
「音がイマイチだな。」
「はぁ?」
「俺はあんな腑抜けた音のする爆破を教えた覚えはねぇぞ。」
「あのなぁ。花火師じゃねぇんだから。音よりも威力。大切なのは効率だろうが。」
「フン、あんな音じゃ威力も知れている。」
「言うねぇ、死に損ないの英雄様が。ってゆーか、短時間であれだけ仕掛けられたことを、先ず褒めてくんない?」
「百年早いわ。俺の弟子なら、あれくらい片手間でやってのけろ。」
「へいへい。厳しい師匠様で。」
「隊長、空挺部隊への連絡完了です!」
「よし。全員、退避!」
「おやおや。皆さん逃げるみたいだねぇ。代わりに来るのは爆撃機、かな?」
「フン、数に任せた脳の無い攻め方だ。」
「でも、実際危ないよね。上から狙われたらさ。」
「…。」
「よし、ここは尻尾巻いて逃げるとしよう。」
「…。」
「死に損ないでも、生きてりゃⅠミリくらいは、まだ活躍出来るかもよ?」
「…。」
「…。」
「…。」
「やめろよな〜。死に場所決めるなんて。どうせなら生きて生きて生き抜けよ。」
「…。」
「…もし、どうしても、この砦と運命共にする覚悟ってんなら…」
「…。」
「俺が爆撃機を撃ち落として、その覚悟を恥ずかしいくらい無駄にしてやる。」
「…。」
「…。」
「…フン。」
「…へっ。」
「いつまでも手間かけさせんじゃねぇ、クソガキ。」
「子供ってのはな、心配かけ続けて親を長生きさせるのが役割なんだぜ?」
「やれやれ…クソガキ中のクソガキを子に選んじまったもんだ。」
「へっ。後悔してもおせーよ。あん時、銃弾から俺を守り抜きやがったのがジジイの運の尽きっつやつだ。」
「まったくだ。おかげでおめおめ長生きしちまった。いい加減楽にさせろ。」
「だめ〜。俺が生きてる限り、ぜってー死なせねぇ。どこまでも長生きさせてやる。」
「フン、言いやがる。なら、どこまでも長生きさせてみろ。」
「おおせのままに。そんじゃあ、」
「ん、おい、こら。」
「クソジジイの足じゃあダッシュもできねぇだろ?。老いては子に従えだ、とっとと背負われやがれ。」
「馬鹿言え。そんなみっともない真似出来るか。」
「右足。動かないの、俺のせいだろ。隠してたってわかる。」
「…。」
「俺が動かなくしちまったんだ。俺があんたの足になる。手が使えなくなりゃ手になってやる。耳にだって口にだってなってやる。そいつが、血も縁も、なんも繋がってねぇ俺を、護り続けてきてくれたことへの、礼だ。せめてのな。」
「……………フン。」
「納得、ってことで。じゃ、乗った乗った。意外とおぶさり心地いいぜ?俺の背中。」
「…。」
「……ったく、知らねぇ間に、こんなに軽くなりやがって…。安全な場所まで逃げたら、これでもかってくらい食わせて太らせてやる。」
「やめろクソガキ。俺に食わせる飯があるなら、てめぇの腹にでもつめこんどけ。」
「へいへい。じゃ、行くぜ、親父。」
「フン………」
「見てろよ高慢チキな国の奴らめ〜。俺と親父が生きてる限り、枕を高くしては眠れないと知りやがれ!」
「こら。さっさと走れクソガキ。」
「ちょ、なんだよクソジジイ!人がせっかく決めてんのによぉ!」
「空挺の音が近くまで来ている。死にたくなけりゃ、とっとと走れ。」
「ったく、空気の読めない飛行機だこと…。」
血の繋がりなくとも、
その時、その場に居合わせたことが、
魂を繋げることもある。
互いを救いたいと思う願いは、
時として、血の深さを越える。
男二人の泥臭い会話を描いてみたくて、書いてみました。