表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/30

宵の光

 結局、想太さんは何もしないで帰って行った。軽口を叩き合って、楽しくおしゃべりをして、あたしが食べ残した夕飯を食べてくれたりもして。それで終わり。

 その他に何もない、ただただ長閑な時間だった。


 胸元を過ぎた長い髪を梳きながら思う。

 長閑だと思ったのはいつぶりだろうか、と。あたしの時間は、今でも暁と一緒にいた時から動き出してはいない。ずっとずっと、暁のことしか考えられない。

 けれど、今日は久しぶりに、暁ぶりに長閑だと思った。ずっとずっとこんな時が流れていればいいと、そう思えた。想太さんと一緒にいるのは、暁と一緒にいるような不思議な安心感があった。

 

 そういえば。

 想太さんは、一体何がしたかったのか。ただおしゃべりをするためだけに、やたらと警備の堅いこの学校に忍び込んできたとは思えない。何か、目的があったはずだ。けれど、その目的がよくわからない。

 熱いシャワーを浴びながら、このまま溶けてしまえと思う。

 自分のように無価値な人間は、このまま溶けて消えてなくなってしまうのが相応しい。思い悩んでいるときは、特にそう。何もわからず、生み出さないのならば、消えてしまえばいいのだ。

 誰かもわからないくらい、誰にも気づかれないくらいにひっそりと、静かに。


 どうも、今日は思考がネイティブなようだ。さっきから、悪い方向にしか考えられない。

 こんな日は、

「寝よう」

 そう、寝てしまうのが一番だ。

 何も考えず、なにも知らずに眠りに落ちてしまえ。


 愚か者め。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ