暁の芯
唯人のこと、好きだったのになぁ。
ベッドに寝っ転がって、虚空を見つめる。茶けた天井のシミが、やけに大きく見えた。
友達として、信頼できる人だったのに。宵のことさえ絡まなければ、きっとうまくやれていただろうに。
たとえ、わたしが女だとばれていたとしても。
どうしてこうなっちゃったんだろうな。
唯人と仲良くできなくなった。わたしが男として暮らさなければならなくなった。お父さんがわたしを男だと思うようになった。お母さんが死んだ。
すべてのことが徐々に徐々にわたしを追いつめていく。
これからどうするべきなんだろうか。
「やっぱり…」
宵に会わない方がいいのかな。
唯人から送られてきた、宵の写真を見る。
昔と変わっていない、凛と澄んだ瞳。秘めた力が溢れ出るような、強い瞳。
きっと宵に会ったら、甘えてしまう。その瞳はきっと、大丈夫だよって言う。安心して、あたしに任せてって、言う。
宵はわたしよりずっと強くて、明るくて、前を向いている。だから、わたしのことだって甘やかしてくれる。でも、その強さに甘えてわたしは日陰でうずくまるだけでいいんだろうか。
…いいわけがない。
お父さんが嫌がった、”弱虫で泣き虫”な暁に戻ってしまう。
強くなりたい。
そうしたら、お父さんに認めてもらえる。そうしたら、宵と会える。宵と過ごせるようになったら、今度はわたしが宵を守ってあげられる。
だから、強くならなきゃ。
それまで。わたしが一人前に強くなるまで。この檻から、お父さんの支配からは逃げられない。いや、逃げちゃいけないんだ。
会うのは、それから。